恋の行く末
家に戻った私は、子供たちが寝静まった夜10時にまた母の日記を読み始めた。
~母の日記より~
茜さんは階段を下りて、赤い欄干の所まで来た。
「この下に江戸時代の杉山検校のお墓があって、さらに下まで行くと砂浜があるの。降りてみる?」
すぎやまけんぎょう? あまりの無知に我ながら恥ずかしくなる。
「茜さん、その、杉山検校さんって有名な人?」
「有名じゃないわね。ただ世界初の視覚障碍者のための学校を作った」
すごおい! そんな日本人がいたんだ!でもなんでここにお墓?
「杉山検校は幼いころ失明し、江戸で鍼灸を勉強し、この江の島で鍼を管で通す管鍼法を編み出したと言われるの。だから彼は弁財天にずっとお詣りしてた。それでここにお墓があるんだと思う」
茜んさんはどこまでも歴史に詳しい。私たちが事前に勉強したことなど、浅すぎて、話にならない。
茜んさんが墓場のある狭くて急な階段を下りてゆく。
そこに少し大きなお墓があった。それが杉山検校のお墓だった。
私たちは手をあわせた。
そのまま降りてゆくと、砂浜が見えた。
数人の若者と犬の散歩らしき人達がいた。
「あ、富士山!」
紀代が叫ぶ。
あ、ほんとだ!海の向こうに雄大そびえている。まぎれもなく日本一の富士山。
「江の島は富士山の麓にある洞穴とつながっているとの噂もあるわ」
えええ~!そんな嘘でしょう!
「本当かどうかわからないけどね。じゃぁ、その証拠となる洞穴がこの江の島にもあるから行ってみよう!」
私たちはまた来た急な坂道を登り、赤い欄干まで戻った。
そして最初の神社、辺津宮を迂回して、二つ目の女神、市寸島比賣命を祀る「中津宮」へ私たちは歩いた。
ここでは恋の行く末を占うことが出来ると言う水琴窟がある。
何も書いていないおみくじをこの水琴窟の水に浮かべると、文字が浮かび上がり、恋の行く末がわかるというのだ。




