異世界から現世へ通じる道
まずは階段があった。
といっても、普通の階段ではない。
険しく、ところどころ崩れていた。
「みんな、よく足元をみてね!」
茜が先頭から大きな声をかける。
わずか数分だったが緊張した。
私も紀代も西野くんも、恐る恐る降りる。
なんとか無事に過ぎると、うっそうした木々と雑草で道が見えないような場所に出きた。右手にも山があったが、左へと降りた。
「茜さん、道がないです!」西野君が泣きそうな声で言った。
「あるわよ。よく見て。案内の目印もあるの。ほら!」
なんだこれ? なにかの紋章?
でできたその板状のものに小さな狐が二つ置いてあった。
「なんですか?これ?」西野君が尋ねる。
「これはお稲荷さんを守る狐様。佐助稲荷がこっちにあるのよ。
この紋章は篠竜胆。源氏の家紋だわね」
「へぇ、この石碑一つとってもいろんな情報がわかるんだ!」
西野君、ホントにジモトノヒトなのかしら?
「今後、大きな山に登ると思うけど、昔の人が置いた石碑や神様を見逃してはいけないわよ。逆に粗末にされているような場所は道も荒れているから危険だと思った方がいいわね」
「登山の鉄則その2か!」
紀代が唸る。
私たちは人一人か通れないような細道を慎重におりていった。
時々、崖っぷちだったりして、本当に命の危険を感じた。
やがて大通りが見えてきた。
「やっと下界ね!よかった~!大仏はどこかしら?全然見えない」
きょろきょろする紀代。
「まだよ。この大通り、左に行くと鎌倉市役所で、そのまま鎌倉駅に通じてるの。私たちは、ちょっとずれて、また昔の古道をゆくわよ。次の大通りまで出れば、そこは大仏様のいる道にでてくるの。タヌキとかに会うかもしれないけど、魑魅魍魎にも出会うかもね。うふふ」
「まだあるの~!魑魅魍魎って何?!」
西野君、まじでうざい。
魑魅魍魎って、妖怪か何か?こわいな。登山ってこんなに怖いものなの?
もっと自然と触れ合って体にも精神的にもいいものって思ってた。
こう見えて、ぼく湘南ボーイなんで、海しか知らなかったんですよ~!」
そうだったのか!道理で無知なはずだわ・・。
そこで茜さんがつぶやく。
「恐怖を克服した時、真実が見える。幽霊の正体みたり枯れ尾花」
「何言ってるの~茜さん!枯れ尾花ってなに?」
「ススキのことよ。今は季節じゃないけど。うふふ」
どうにもこの茜さんの薄笑いは、私たちをからかってるというか、
でも嫌いじゃない。
なにか安心感がある。
たとえ目の前の林道が大木の根が縦横無尽と走る地面は歩きづらくても、
茜さんの足運びを見ながら歩いてゆくと、自然と歩ける。
不思議とまったく転ぶ感じがしない。
やがて大通りに出てきた。
「やった!あとはここを下るだけ?車が走ってるのをみると、帰ってきた~って感じ」
紀代と西野君が声を合わせて叫んでる。やっぱり似た者通し?
でも紀代達の言うとおりだ。異世界から現世に戻ってきた感じ。
「二人ともお疲れさま!マムシにも出会わなかったし、よかったわね!」
「え!まむし?」
幽霊よりこっちの方が怖いじゃん!




