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地味な私が本格的な山岳部に入ってわかったこと  作者: 和 弥生
母の知られざる秘密 青春篇
3/21

山岳部廃部の危機

母の秘密

私はびっくりした。


お母さん、大学生の時、山岳部だったんだ!


娘の私は母から山岳部にいたことは聞いたことがなかった。


ただ、田舎が好きで、都会に住みたくないということで、


家族が山の見える郊外で住むことになったが、家族で近くの山に


登ることもなかった。


「そうえいば、母は山は怖いよ。決して一人で登ってはいけないよ」と、


良く言ってたっけ。


洋子は色々過去の事を思い出しながら、またパソコンの文字を追っていた。


加奈子の日記より


そうか、私の山への憧れは、兄との記憶だったんだ。


私が幼稚園の時だから、18歳の大学一年生から見たら、13年か。


子供頃の13年は長いわよね。


30歳過ぎたら、30年だってあっと言う間。


大学1年に話は戻す(笑)


4月に新人歓迎コンパのあと、先輩たちに聞かされた。


「加奈子ちゃん、実は頼みたいことがあって。」


あ、なんですか?


「実はあともう1人、部員欲しんだ。

5月の新人歓迎登山までに部員5人いないと、学部長から廃部にするって言われていてさ!」


え?でも私入れて3人ですよね?というか、私が入るまで2人だったわけだから、よく廃部になりませんでしたよね?


日に焼けた顔の西城八十男が、暗い声で答えた


「加奈子ちゃん、それな。実は去年まで山岳部は20人を超えていたんだよ。」


え?そんなに!?


「去年は新人が豊作でね。ところが、2つの派閥にわかれてしまい、結局全員退部。

一つのグループは今のワンダーフォーゲル部にいる。一方のグループは山ガールクラブとかいうの作って、サークル活動してる。だから、今年の不作は、彼らが熱心に新人を勧誘してるからで、うちらみたいな昭和的で男臭い倶楽部には誰も入ってこないってわけさ。とほほ。」


あ、先輩。とほほって、昭和ギャグ?


ひげの先輩、野口健太郎も答える。


「僕の世代もね、もう少しいたんだけど、1年が辞めたら、みんな引っ張られるように退部してしまって、僕だけになってしまった。僕は今さら感があって、ここにいるけど、やっぱりこの大学の大先輩の名を汚したくない!伝統を守るんだ!という気持ちが強くてね。」


そう言うと、二人は部室の奥に掲げてある、額に入った男性の写真を見つめた。


ひとりは白人男性と思われ、豊かなひげを蓄えていた。

もう一人は日本人のようで、どこかで見たような記憶があるなと思った。


誰なんです? 私は無知がばれて恥ずかしいと思いながら、大事な人だと思い、思い切り聞いてみた。


「左は、ラインホルトメスナー。もう一人は植村直己さんだよ。」


この倶楽部の先輩・・・?


「メスナーは違うけど、植村さんは偉大なるOBだ!」


植村? あ、私、知ってる! 子供頃、まだ東京に住んでた頃、植村直己さんの記念館があった!


「そうなんだ!やっぱり君は家の倶楽部に入る運命だったんだよ!」


なんとなく入った倶楽部で、こんな偶然があると思わなかった。


でも、これも本当に言われたように運命だったんだろう。


私はこの倶楽部で遅れてきた青春を燃やそうと密かに誓っていた。


※実際の植村直己さんと関係のない倶楽部です




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