亀ヶ谷坂から試練が始る
駅前は自動販売機ぐらいしかないほど北鎌倉駅はうらさびしい。
鎌倉駅の賑わいぶりとは大違いだ。
明日で5月にるとはいえ、まだ朝は上着がないと肌寒い。
「朝日がまぶしい」
紀代が言った。そういえば、帽子を被ってない。
「それがさ、電車を間違え締まった時、慌ててどこかに落としてしまったの!」
そんな茜の肩を叩くように大きな声をあげた。
「みんな!今回の登山は女子力アップよ。日焼け対策はした?
女子はいつでも美を忘れない!そして自然の美しさに気が付くこと!」
「はい!」
「私たち後輩は部長たちが何と言おうと、女子力アップが山岳部のテーゼとなることに意義はありません!」
私は手を挙げて宣誓した。
「加奈子~、テーゼって何?」
紀代がひそひそ声で耳うちしてくる。
「テーゼ? えっと、命題?みたいな」
「命題って?」
「う~ん、難しすぎ。説明できない!」
「テーゼってドイツ語で「命題」「定立」という意味ね。
まぁ、山岳部が掲げる「御旗」かな。
茜さんが答える。
「さすが印度哲学部!なんでも知ってる!
(関係ないか!)
「御旗?って、加奈子~!」
またもやひそひそ声で聞いてくる。
「わかんないわよ。深く考えないようにしましょう!
とにかく女は美を追求する!山でも都会でも!」
「ふふふ」
茜さんが笑いをこらえている。
茜さん、なんだか、その笑みも美しい。
しばらく歩いただろうか、気が付いたら森の中の路を歩いていた。
「ここから坂道よ。足を鍛えてないと、午後に疲れが出てしまうので、
一度水分補給してから行きましょう!」
茜さんの説明だと、「亀ヶ谷坂切通し(かめがやつかさきりどおし)」という坂で、
昔から通じていた道で、東京、埼玉に通ずる要路として今でも使われているそうだ。谷は「やつ」とこの辺では読むらしい。
「なんか、暗かったらお化けでそうだね」
水筒の水を飲みながら、不安そうに語る紀代。
「もう、やめてよ、お化けの話は!」
「建長寺の池から来た亀が、あまりの坂道でひっくり返ったから、
かめがやつざかって言うんだって」
茜さんが説明してくれた。なんでも知ってるんだ、すごい!
「カメさんがひっくりかえるほどの坂ですか?なんか疲れそう・・・。」
もう弱気の紀代。
「私たちはホントに登れる?こんなんで!」
私はため息をついた。
しかし、木々もうっそうとしてきて、日中なのに、この辺は暗い。
冷気が漂うな感じになり、ちょっと怖くなってきた。
大きな岩の壁が迫ってきて、そこに一部クリ塗りぬいた所に、
お地蔵さんが祀られていた。
「ひっ!、なに!これ?怖い!」
また紀代が叫ぶ。
「怖くないよ、お地蔵さんは。お参りしましょう。この辺は岩をくりぬいてお墓を突くことがおおいんだ。この辺では、「やぐら」って言うんだよ。」
祖い言うと、茜さんが手を合わせる。
私たちも真似して手を合わせた。
ほんとに茜さんは歴史に詳しいなあ。
私も調べたけど、ここまでは全然書いてなかったな。
しばらく歩いてゆくと、民家が見えてきて、空も広くなってきた。
「普通に住んでるんだ」
「そうだよ、生活道路だからね」
あれ?すでに足がやばい
「よし、そろそろ疲れてきたかな?旅は始まったばかりよ!」
しかし私と紀代は、どう見ても二人は疲れていた。
朝が早かったので、今頃きたのだ。
「大丈夫かな?私たち・・・」
そんな私たちを見かねてか、茜さんは励ますように、
「次は白幡神社を目指します。そこから鶴岡八幡宮に言って、
お昼ご飯食べましょう!」
「やった!」
なんか疲れが吹き飛んだ!




