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「ガルド、追放だよ」


「俺は帳簿係だ。いいのか?パーティー回らなくなるぜ」


「それはもうお前の心配する事ではない」


 女冒険者フランカから追放を宣言された。

 俺は元々ジョブ軍師だった。


 リーダーのフランカのやり方に意見をしたら受け入れられずに帳簿係だ。

 それでも腐らずに帳簿係をしながら意見をしたらこの仕打ちだ。


 このパーティー『落ちこぼれの連帯』はその名と裏腹にチートスレイヤーとの異名を持つ。だから入ったのに。しかし、入って失望した。


 だいたいこの女、やり方が非効率的過ぎる。

 クランを臨時に作り賞金を分ける。

 そんな方法じゃ一人当たりの分け前が少ないだろう。


 不良転移者の始末の高額クエストが、並のクエストになっちまう。

 俺のやり方なら、効率的に出来るぜ。



 それで俺は仲間を集めた。

 俺を入れて5人のパーティーだ。


 女を一人入れる。

 ジョブ盗賊のマリーだ。


 フランカは赤茶髪で薄いグリーンの目だ。いつもどこかボオとしている感じがする。

 人によればどこか遠くを見つめていると言うが、どちらにしろ何を考えているか分からないは一致する。


 対してマリーは表情豊かだ。


 小麦色の髪に翡翠の目、中々良い女だ。令嬢に化けられる。

 どこかでメイドをして、令嬢の仕草を学んだ熱心さだ。


「ガルド、宜しく」

「ああ、頼むぜ」


 連射が得意な弓手、ナイフ使い。大男のハンマー使いを揃え高額クエストが来るのを待つ。


 その間、フランカの基幹パーティーは援農クエストや訓練をしている。

 冒険者ギルドでフランカの声が聞こえてくるぜ。


「・・・帳簿間違ったね」

「すみません!!」

「いい。次からは気をつけて、これも冒険者稼業の一つだからね」

「はい!」


 上手くいっていないようだ。あいつは土魔道師のダン、確か土壁魔法しか出来ない奴だった。

 土壁、魔獣の足止めにもならない魔法だ。


 フランカはクエストの度に陣地を作る。

 土壁の陣地だ。


 そこから、フランカは毒霧を放つ。フランカ自身は風魔法使い。

 錬金術師秘伝の毒霧の元を火にくべて転移者に放つ。

 それだけだ。


 それだけだったら多い時で100人近く集める必要性は全くない。

 事実、遊軍になっている奴らも多数いた。



 やがて、高額クエストが張り出された。


「不良転移者!銃を所持!冒険者ギルドで発砲した。賞金金貨500枚!」


 すると、フランカは仲間を集めるが。


 俺は先んじてクエストを達成するぜ。



 まず。転移者という奴らは目立つ。黒髪、黒目で、異様な服装をしている。

 溶け込めない。

 どこか、この世界の仕草と違う。


 情報網を駆使して、奴の居場所を探す。


 そして、今は森の中の道だ。



「いたぞ。一人で歩いている。マリー頼むぜ」

「あいよ」

 マリーは令嬢のドレスだ。



 さあ、マリーは奴の前に出たぞ。

 そのまま奴に話しかけた。



「あの、そこの殿方・・・」

「え、君、どうしたの?」

「実は伴の者とはぐれてしまって・・・一緒に探してくれませんか?」

「いいけど」


 次は身の上話をして心の壁を取る手順だ。


「グスン、グスン、実は置いてかれたかもしれません。義母が来てから・・・」

「え、そうなの」


「実は私、魔道に興味を持っていまして・・・その魔法杖を見せて頂けませんか?」

「いいけどこれは魔法杖じゃない。銃というもので君たちの言い方だったら魔道具・・・えっ!」


 マリーは銃を奪うことに成功した。


 マリーは俺たちの方向に逃げる。


「待て!」


 そこでやっと俺たちが草むらから出てきて。


 奴の正面から近接で弓の斉射だ。


 シュン!シュン!


「うわ~!」



 奴が胴体に布鎧を着ている事は知っている。

 ここはナイフよりもハンマーだ!


 横殴りでどこでも良いからたたきつけて。


「オラ!」

「うわーーーーー!」


 次にナイフで脇の下。足、首を刺す。


 ズボ!ズボ!


「ウギャアアアアーーーーー!」



 奴は息絶えたか。討伐部位、首だな。それを取り。

 任務完了だ。


「ねえ。銃はどうする?」

「マリーご苦労、1番危険な役どころだ。ギルドに渡して金をもらえ」

「やったー!」


 金貨を山分けして、一人100枚、二年分の年収だ。

 何だ。簡単じゃないか?


 フランカは数10人、時によっては100人近く集める。大げさだな。


 俺の名声が広まった。


「フランカより人数が少なくて早いって評判だ」

「なあ、やり方を教えてくれよ」


「秘密だぜ。どうしても知りたかったら金貨一万枚だ」

「そ、そんな」



 異世界人は女に優しい。

 奴らの来た世界は争いごとないみたいだ。

 しかも、来る者は14~18歳くらい。この世界では半人前、見習いの年齢だ。

 付け込む隙は絶対にある。


 銃を持っている奴だけではない。創造魔法やら人を操る危険な魔法を持っている奴もいる。カードゲームでこちらの手札を知っているようなチート能力だ。

 能力差があるとこの世界の住人との間でいざこざが起きやすい。


 まあ、この世界に来てはじけちゃうんだよな。


 二人ほど、フランカに先んじて、討伐をしたら、

 もう、俺たちは金持ち。弟子入り志願者が後を絶たない。

 断るのもおっくうだ。


 あ、フランカがやってきた。



「ガルド、感心しないね。異世界人を舐めすぎだ」

「フン、異世界人なんて、『聖剣を持った子供』という格言があるぜ」

「『されど、我らは棒を持った剣聖たるべし』・・・が格言の続きだよ。油断するなってことよ」

「あ~はいはい。分かりました」


 フランカは奇妙な訓練をしている。何でも異世界の騎士団の末裔から教わった方法らしい。

 訓練場で皆に笑われながらやっているぜ。


「また、フランカのパーティー『落ちこぼれの連帯』が変な事をやっている」

「ダセーな。おい」



「集まれ!」


 とフランカが叫ぶと。


 ザザザザザッ!


 皆は集まるだけだ。


「別れ!」


 と叫ぶと皆は分散して物陰に隠れる。


「伏せ!」


 ただ地面に伏せるだけ・・・いや、走りながらでも伏せている。


「第1ほふく前進!」


 何だ。上半身を半身にして高くして地面を這っている。逃げる訓練か。馬鹿だな。


 何の訓練か?そんなことをしないでも簡単に討伐できるのにな。


「第5ほふく前進!」


 何だ。第5まであるのか?手で地面を掴んで体を引っ張る感じだ。

 こんなこと全く役に立たないと思いながらも見ていた自分に気がついた。

 何故だ。すぐに分かった。奴ら、真剣にやっているからだ。まるで、何か経験に基づいた確信があるみたいだ。


 まあ、いいか。俺には関係ないとその時は思っていた。




最後までお読み頂き有難うございました。

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