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決断…!

隣国エルヴィス王国への支援を巡り、エルダリア王国内では賛否の声が大きくなり続けていた。


議会での議論も過熱し、街中では連日デモが行われる中、ついに王宮が隣国支援についての最終決定を下すという発表があった。


エルダリア国王カイバ三世による緊急声明が予定され、報道局はこの発表の全容を伝えるため、王宮に向かうことになった。


「ミカサさん、私たちに王宮からの直接取材許可が降りました!」


サラが少し興奮気味に報告すると、ミカサデスクは頷きながら言った。


「そう。なら、しっかり準備して臨むわよ。国王がどのような決断を下すかは、これからの王国の方向性を大きく左右するわ。細心の注意を払って取材してちょうだい」


モリヒナがリポートを担当し、サラとバキもカメラを携えて王宮へと向かった。エルダリア王国全体が注目する重要な発表。


その緊張感を肌で感じながら、一行は王宮の記者会見場に足を踏み入れた。


会見場に集まったのは、国内外の多くのメディア関係者たちだった。王宮の大広間には国王カイバ三世が立ち、彼の隣には宰相や側近たちが控えていた。会場が静まり返る中、国王が話し始めた。


「国民の皆様、そして世界中の方々へ。隣国エルヴィス王国への支援について、多くのご意見が寄せられていることを承知しております。戦争の傷跡を抱えた我々自身の課題も深刻であり、この問題が非常に繊細なものであることを理解しております」


国王の声はいつもより少し低く、慎重さが感じられた。


「しかし、隣国エルヴィス王国が復興を果たせなければ、再び不安定な状況が訪れる可能性があります。それはエルダリア王国、さらには周辺諸国全体に悪影響を及ぼすでしょう。ゆえに、我々は隣国を支援することを決定いたしました」


その言葉に会場がざわめいた。国王は手を上げ、静かに続けた。


「支援の内容は、物資と人道的支援が中心です。また、エルヴィス王国内での復興計画を技術的に支援するための専門家派遣も含まれます。一方で、エルダリア王国の国民生活を圧迫しない範囲で行うことを約束します。税負担が増えることはありません」


カイバ三世は最後に、支援を行う理由についてこう語った。


「我々は、平和と安定の未来を築くために、この決断を下しました。国民の皆様にも、この決断の意義をご理解いただきたいと願っています」


会見終了後、サラとモリヒナは王宮前に詰めかけた人々の声を聞くため、カメラを持って街に出た。


「支援するっていうのは分かるけど、本当に国民の負担が増えないのか心配だな」と話すのは、商人の男性だった。


一方で、若い女性は少しほっとしたようにこう語った。


「平和を維持するために支援が必要なのは分かってたけど、具体的な説明があって安心しました。これで少しは落ち着ける気がします」


別の高齢女性は、国王の決断に不満そうだった。


「まだ自分たちが苦しい思いをしてるのに、隣国を助けるなんて話が早すぎるよ。もっと自国を大事にしてほしいよね」


モリヒナはリポートを続けながら、小さく息を吐いた。


「やっぱり意見は割れるわね。でも、国王がはっきりした方針を出したことで、国民も少しずつ前を向き始めてる気がするわ」


その日の夜、「アルダNEWS」では、隣国支援を決定した国王の緊急声明を中心に放送しました。


モリヒナが冷静な口調で語る。

「エルダリア王国のカイバ三世は、隣国エルヴィス王国への支援を正式に決定しました。支援は人道的なものを中心とし、エルダリア国民の負担を増やさない範囲で行われると説明されています。この決断は、国内外で大きな注目を集めています」


画面には、王宮での会見の映像や、街中で聞いた市民たちの声が映し出されていた。国民の賛否が分かれる中で、カイバ三世の決断がどのような影響をもたらすのかが注目される。


放送が終わった後、報道局では反省会が開かれた。


「今日は国王の決断が伝わった重要な日だったわね」とミカサデスクが切り出すと、サラが手を挙げた。

「市民の声をもっと掘り下げてもよかったかもしれません。でも、全体的には国王のメッセージを伝えられたと思います」


「そうね。今回の放送はバランスが取れていたわ。ただ、これからの支援の実態や影響についても追い続ける必要があるわよ」とデスクが答える。


モリヒナが笑いながら言った。

「これ、岩木さんにやらせたら、『俺はもう王宮取材はゴメンだ』って言いそうね」


その言葉にみんなが笑いながらも、次の取材に向けた準備を始めた。


隣国支援が正式に決定したことで、エルダリア王国は新たな課題に直面していた。支援がどのように行われるのか、そしてそれが国内外にどのような影響を与えるのか――報道局はこれからもその全容を追い続けることになる。


「さて、次は現地の支援活動を取材しないとな」とミカサデスクが言い、報道局は次なる取材に向けて動き出した――。

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