隣国への支援…?
エルヴィス王国の戦争が終結してから数週間。
復興が本格的に始まった一方で、エルダリア王国では隣国への支援を巡る議論が本格化していた。かつて敵対していたエルヴィス王国を助けるべきか、それとも自国の復興を優先すべきか――賛否の分かれるこの問題は、国内で大きな波紋を呼び起こしていた。
岩木がセキとともに隣国エルヴィス王国で取材を続けている間、報道局では議会の動きや市民たちの声を集め、ニュースとして発信する準備が進められていた。
サラやモリヒナ、バキがそれぞれ現場に出て取材を進める中、国内の空気はどこかピリピリとしていた。
「隣国エルヴィス王国への支援は必要不可欠です! 彼らが再び立ち直るためには、我々の助けが必要です!」
議会の中央で声を張り上げているのは、支援賛成派の議員だった。彼は、隣国を支援することがエルダリア王国の未来に繋がると主張していた。
「ですが、支援には膨大な費用がかかります。それに、我々自身の復興もまだ道半ばです。自国を犠牲にしてまで他国を助ける必要があるのでしょうか?」
これに対抗するのは、支援反対派の議員だ。彼の言葉に、議会内では賛否の声が激しく飛び交う。
「隣国を見捨てれば、再び戦争の火種が生まれる可能性があります!それを未然に防ぐためにも、今こそ支援が必要なのです!」
「それは理想論に過ぎません!まずは我々が立ち直ることが先決です!」
激論の続く議会。エルダリア王国がどのような選択をするのかは、まだ見えてこなかった。
バキは議会の様子をカメラで記録しながら、ふと呟いた。
「これは、どっちに転んでも揉めそうだな…」
その言葉に、近くでメモを取っていたモリヒナが頷く。
「国民の声が割れてるから、議会も簡単には決められないでしょうね。これ、しばらくニュースの中心になりそうです」
議会の議論を取材した後、サラは街中に出て市民の声を聞いて回った。カメラマンと共に市場や商店街を訪れ、隣国支援について人々がどう考えているのかを尋ねていく。
市場の近くで出会った中年の男性は、厳しい表情でこう語った。
「隣国を助ける? 冗談じゃない。戦争の原因を作ったのはあいつらだ。どうしてこちらが犠牲を払わなきゃならないんだよ」
一方、商店街で出会った若い女性はこう言った。
「確かに戦争の記憶はまだ鮮明です。でも、今このまま放っておけば、また同じことが繰り返されるかもしれない。それを防ぐためにも、支援は必要だと思います」
さらに、避難所で暮らす高齢の女性はこう語った。
「戦争の記憶が辛い。でも、それでも未来を見据えて助けるべきだと思うよ。結局、助け合わなきゃまた争いが起きるだけだからね」
サラは丁寧にインタビューを進め、街中の人々の声をカメラに収めた。意見が割れる現状に複雑な気持ちを抱きつつも、その言葉をニュースに届けるべく取材を続けた。
「どっちが正しいのか、私も分からないな…」とサラはつぶやきながら、次のインタビューへと向かう。
その日の午後、王宮でカイバ三世が緊急会見を開いた。支援について国民の不安を和らげるため、国王自らの口で説明する場が設けられたのだ。
「隣国エルヴィス王国への支援について、現在議会で議論を進めております。国民の皆様の中には、ご自身の生活を優先してほしいという声があることも承知しています」
カイバ三世は静かに語り続けた。
「しかし、エルヴィス王国の復興を支援することは、我々エルダリア王国の未来にとっても大きな意味を持ちます。混乱を防ぎ、平和を維持するためには、共に手を取り合う必要があります」
国王の言葉に対し、記者たちからは次々と質問が飛び交った。
「支援の内容はどのようなものになりますか?」
「国民の税負担は増えるのでしょうか?」
「隣国との信頼関係はどのように築いていくお考えですか?」
カイバ三世は一つ一つの質問に丁寧に答えた後、こう締めくくった。
「支援は慎重に進めます。国民の皆様の生活を最優先に考えつつ、隣国との関係を平和的に保つための方法を模索していきます」
その夜、「アルダNEWS」では、隣国支援についての特集が放送された。
モリヒナが真剣な表情で語る。
「隣国エルヴィス王国への支援を巡り、エルダリア王国内で賛否が分かれています。議会では激しい議論が続き、国民の間でもさまざまな意見が飛び交っています。カイバ三世は支援の慎重な実施を表明しましたが、この問題が国内に与える影響はまだ予断を許しません」
画面には、議会での激論やサラが街中で取材した市民の声、そして国王の会見の映像が映し出された。
放送が終わった後、報道局では恒例の反省会が開かれていた。
「今日は割と中立的に伝えられたんじゃない?」とサラが言うと、ミカサデスクが頷いた。
「そうね。でも、この問題は長期化する可能性が高いわ。引き続き、各方面の動きを追いかけていきましょう」
「岩木がいたら、『なんで俺に行かせないんですか?』って言いそうね」とモリヒナが冗談めかして笑う。
その言葉に皆が少し笑みを浮かべつつも、次の取材への準備を進めるのだった――。