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戦後の復興までが戦い…?

戦争が終結してから数週間が経った。エルヴィス王国ではネギシ政権が崩壊し、シラコ国王が再び王座に戻った。しかし、国が元の状態に戻るには、まだまだ多くの課題が山積している。


戦争の傷跡が残る街並み、避難所で暮らす人々、経済の停滞――エルヴィス王国の現状を伝えるため、俺は再び現地へ向かうことになった。


今回は頼れる仲間が同行する。以前、国境の取材で共に危険な状況を乗り越えたセキさんだ。


一緒に取材をするのは安心感があるし、セキさんの卓越したカメラの技術があれば、きっと今回も良い映像が撮れるだろう。


「岩木、エルヴィス王国の現状を、しっかり記録してきてちょうだい。戦争が終わった後だからこそ、伝えるべきことが山ほどあるのよ」とミカサデスクは真剣な表情で言った。


「分かりました。ただ、今回は一人じゃなくて本当に助かります。セキさんと一緒なら安心ですね」と俺は素直に答えた。


「そうよ、セキさんは頼りになるわ。それに、あなたも現場の経験を積んできたんだから、きっといい取材ができるわよ」とデスクは少し微笑んだ。


俺は国境の取材を思い出しながら、セキさんとの再びの同行にどこか心強さを感じていた。


馬車に揺られながら、俺は窓の外を眺めていた。戦争が終わったとはいえ、道中の景色には焼け落ちた村や放置された武器がまだ多く残されている。


「相変わらず、ひどいもんですね」と俺が呟くと、隣でカメラのチェックをしていたセキさんが淡々と答えた。


「戦争の終わりは、平和の始まりじゃない。復興が始まるまでが本当の戦いだ。それを俺たちが伝えるのが仕事だろ?」


「そうですね…そういえば、国境の取材の時もセキさんに助けられましたよね。あの時、俺一人だったら絶対に無理でした」


「助けただけじゃないだろ。お前が必死にカメラを回したからこそ、あの報道ができたんだ」とセキさんは少しだけ笑みを浮かべた。


その言葉に、俺は少しだけ肩の力が抜けた気がした。


首都エルヴィサに到着すると、街には戦争の爪痕が生々しく残っていた。焼け落ちた建物、瓦礫の山、疲れ切った表情の人々――復興の兆しはまだ遠いように見える。


セキさんはカメラを構え、街の様子を丁寧に記録していた。その姿はいつもと変わらず冷静で、無駄がない。


「岩木、こっちの瓦礫を撮るぞ」


「あの…ただの瓦礫じゃないですか?」


「いいか、ここはただの瓦礫じゃない。かつて人々が暮らしていた証だ。それを映像で伝えるんだ」とセキさんが言う。


「…分かりました」


俺はセキさんの言葉に納得しながら、自分のカメラでもその瓦礫を撮影した。


次に俺たちは、市内に設けられた避難所を訪れた。戦争で家を失った人々が集まり、仮設のテントや施設で生活している。


避難所のリーダーと思しき中年の女性が俺たちに話しかけてきた。


「あなたたち、記者さんですか? こんな場所まで来るなんて珍しいですね」


「ええ、今のエルヴィス王国の現状を取材しに来ました。ここでの生活状況について教えてもらえますか?」


女性は疲れた表情を浮かべながら言った。

「毎日が大変です。食料や医薬品も足りないし、子どもたちの健康状態も悪い。戦争が終わったと言われても、何も変わりません」


その言葉を聞きながら、セキさんがカメラを回していた。彼の姿勢は一切ブレることなく、まるで戦場にいる時と変わらない真剣さだった。


その後、俺たちはシラコ国王の公式会見に出席した。再び王座に戻った彼が、どのように国を立て直そうとしているのか――それを伝えることも重要な仕事だった。


シラコ国王は力強い声で語った。

「エルヴィス王国の復興には、国民一人ひとりの力が必要です。そして、国際社会からの支援も欠かせません。我々は決して諦めない。この国を再び立て直すことを誓います」


その言葉を聞きながら、俺はメモを取り、セキさんはカメラを回していた。


「言葉だけじゃどうにもならないが、それでも一歩目だな」とセキさんが静かに呟いた。


その夜、「アルダNEWS」では、エルヴィス王国の現状を伝える特集が放送された。


モリヒナさんが真剣な表情で語る。

「戦争が終結してから数週間が経ちましたが、エルヴィス王国の再建はまだ道半ばです。荒廃した街や避難所での厳しい生活――そこには、復興に向けて多くの課題が残されています」


画面にはセキさんが撮影した映像が流れた。


宿に戻り、一息つくと、セキさんがぽつりと呟いた。

「お前、少しは成長したな。昔は何かと逃げてばかりだったのに、今じゃ戦場でも現場でもしっかり映像を残せるようになった」


「それはセキさんのおかげですよ。一緒にやるたびに学ぶことばかりですから」


「ふん、褒められるのは慣れてないな。まあ、これからも精進しろ」


その言葉を胸に、俺は明日の取材の準備を始めた――。

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