戦争の終わり…!
エルヴィス王国での戦いは激化し続け、連合軍は着実に前線を押し上げていた。
戦場では連日激しい戦闘が繰り広げられ、俺はその現場を取材しながら、命を削るような日々を過ごしていた。しかし、連合軍の進軍がエルヴィス軍の中枢に迫るにつれ、戦争の勝敗が徐々に見え始めてきた――。
翌朝、連合軍はエルヴィス軍の最後の防衛線である「鉄壁の砦」へと進軍を開始した。ここを突破すれば、エルヴィス王国の首都エルヴィサは陥落する。
俺はガイアと共に連合軍の本隊の後方に位置し、進軍の様子をカメラに収めていた。
「ここを抜けば、勝利は目前だ」
ガイアが目の前の砦を見据えながら言った。
エルヴィス軍は砦を死守するために、弓兵や魔法兵を前線に配置し、連合軍の進軍を必死で食い止めようとしていた。しかし、ネギシ将軍が戦線に現れることはなかった。指揮官不在のエルヴィス軍は士気を失い、次第に崩壊の兆しを見せ始めた。
激しい攻防が続く中、俺はカメラを手に砦近くの村を取材することにした。そこには、戦争に巻き込まれた無関係な住民たちが避難所に身を寄せていた。
瓦礫と化した家々、泣き叫ぶ子どもたち、呆然と立ち尽くす老人たち――その光景に俺は言葉を失った。
避難所にいた中年の女性が俺に話しかけてきた。
「どうしてこんなことになってしまったんでしょうか…私たちはただ静かに暮らしていただけなのに」
「連合軍が勝てば、この戦争は終わります。そう信じて待ちましょう」とガイアが励ますように言ったが、その言葉がどこまで彼女に届いたかは分からなかった。
俺は避難所の様子をカメラに収めながら、戦争の悲惨さを改めて実感していた。
その日の午後、連合軍はついに「鉄壁の砦」への総攻撃を開始した。
砦の周囲では激しい戦闘が繰り広げられ、空には魔法の閃光が飛び交い、大地には砲撃の轟音が響いていた。
俺は後方からその様子を撮影していたが、次第に戦場の混乱が広がり、思わぬ危険が迫ってきた。
「くそっ、まただ…!」
突然、砦から飛んできた砲弾が連合軍の陣地近くで爆発し、その衝撃で俺は地面に投げ出された。
カメラが地面に叩きつけられ、レンズにヒビが入る。
「岩木!大丈夫か!」
ガイアが駆け寄ってきて俺を引き起こした。
「…カメラが…」
俺は傷ついたカメラを見て呟いたが、ガイアはそんなこと気にするなと言わんばかりに肩を叩いた。
「命があるだけで十分だろ!ほら、避難しろ!」
俺はガイアに促されながらも、傷ついたカメラを抱え、何とか安全地帯へと下がった。
翌朝、連合軍はついに「鉄壁の砦」を突破した。
そして、そのまま首都エルヴィサへの進軍を開始した。
エルヴィサの城門前では、ネギシ将軍が待ち構えていた。黒い鎧に身を包んだ彼は、最後の抵抗を試みようとしていた。
「ここで終わりにするつもりはない…」
しかし、連合軍の圧倒的な数と勢いの前に、ネギシ将軍の抵抗はわずか数時間で終わりを迎えた。彼は捕らえられ、連合軍の指揮官たちの前に引き出された。
「ネギシ将軍、これであなたの野望は終わりだ」とガイアが冷たく言い放った。
その様子を俺は、壊れたカメラの代わりにガイアの協力で用意された新しいカメラで記録していた。
ネギシ将軍が捕らえられたことで、エルヴィス王国の戦争は終結した。シラコ国王が再び王座に戻り、国民たちは一時の平穏を取り戻した。
俺は首都エルヴィサの様子を取材しながら、連合軍の撤退準備や、住民たちの反応を記録していた。
避難所にいた女性が言った。
「これで平和が戻るんですね…でも、私たちが失ったものは、もう戻らない」
その言葉に俺は何も答えられなかった。ただ、カメラを回し続けることしかできなかった。
その夜、「アルダNEWS」では、この戦争の終結を報じる特集が放送された。
モリヒナさんが冷静な表情で語る。
「連合軍の進軍により、エルヴィス王国のネギシ政権は崩壊しました。そして、シラコ国王が再び王座に戻りました。しかし、この戦争が残した傷跡は深く、国民たちの生活が元に戻るには時間がかかるでしょう」
画面には、戦場の映像や避難所の様子が映し出され、視聴者からも多くの反響が寄せられた。
報道局の会議室では、今回の報道を振り返る会議が行われていた。
「岩木、命がけの取材だったわね。お疲れ様」とミカサデスクが言った。
「いや、本当に…もう戦場には行きたくないです」と俺は苦笑いした。
「でも、君が伝えた映像が、この戦争の真実を世界に届けたんだ。それは間違いないよ」とナベさんが続けた。
「…次はもっと平和なニュースを取材したいですね」と俺は呟いた。
戦争が終わり、平穏が訪れる日々を願いながら、俺たち報道局は次なる取材へ向けて動き始めた――。