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命拾い…!

連合軍の進軍が続く中、エルヴィス王国の中核部に近づくにつれ、戦場の緊張感は増していった。


俺はその最前線でカメラを構え、報道の使命を果たすために戦場を記録していた。しかし、その場で待ち受けていたのは、記者である俺の命すら危うくなるほどの危険な状況だった――。


進軍三日目の昼下がり。連合軍は広大な平原を進んでいた。見晴らしのいい地形だったが、それが逆に敵にとっては絶好の奇襲ポイントとなっていた。


「伏兵だ!伏兵がいるぞ!」


突如として飛び交う矢と魔法の光弾。エルヴィス軍の奇襲により、戦場は瞬く間に混乱に陥った。


「全員、散開して防御を固めろ!」

連合軍の指揮官が叫ぶ中、俺は馬車の影に身を隠しながらカメラを構えた。


「くそっ…こんな状況で撮影なんて無理だろ…!」


それでも、カメラを止めることはできなかった。兵士たちが矢を受けて倒れる姿や、前線で必死に応戦する姿を映しながら、俺は戦場の現実を記録していった。


だが、その瞬間――俺の真横に矢が突き刺さった。


「うわっ!」


驚きで尻餅をついた俺は、慌てて矢の飛んできた方向を確認した。そこにはエルヴィス軍の弓兵が数人、こちらを狙っているのが見えた。


「記者なんて狙うなよ…!」


俺は必死に身を低くしながら、馬車の影からさらに安全な場所を探して逃げ込んだ。しかし、次々と飛んでくる矢が地面に突き刺さり、逃げる暇も与えられない。


「まずい…!」


その時、背後から声が響いた。

「岩木!こっちだ!」


振り返ると、連合軍の兵士ガイアが手を振りながらこちらに駆け寄ってきた。


「立って!早く!」


俺は彼の言葉に従い、全速力で走り出した。矢が俺のすぐ後ろに飛び交う中、なんとかガイアのいる安全地帯に滑り込むことができた。


「命拾いしたな、記者さん」とガイアは苦笑いしながら肩を叩いた。


「本当に…もう少しで死ぬところでしたよ」と俺は息を切らしながら答えた。


奇襲は激しさを増し、連合軍の進軍は完全に足止めされていた。戦場のあちこちで兵士たちが応戦し、エルヴィス軍との攻防が続いていた。


「連合軍、前進を続けろ!」

「敵の魔法部隊を叩け!」


指揮官たちの声が飛び交い、戦場全体が混乱に包まれていた。俺はその中で必死にカメラを回しながら、戦場の記録を続けていた。


そんな中、連合軍の前線に異変が起きた。エルヴィス軍の中から、黒い鎧を身にまとった男が現れたのだ。


「ネギシ将軍…!」


その姿を見た兵士たちは、一斉にざわめき始めた。ネギシ将軍は連合軍に向かって声を上げた。


「これ以上、この地を踏み荒らすことは許さない。我々の国を侵略しようとする者には、容赦なく反撃する!」


その言葉には、自らの行いを正当化しようとする強い意志が込められていた。そして、彼の登場が戦場の士気を大きく変えた。エルヴィス軍の兵士たちは彼の姿を見て、一気に攻撃を激化させたのだ。


俺はネギシ将軍の姿をカメラに収めようとしたが、周囲に飛び交う矢や魔法の爆発で、なかなか安定した映像が撮れなかった。それでも、何とかズームを調整し、将軍の表情を捉えることができた。


「これが…この戦争の中心にいる男か」


その姿は、まるで戦場の支配者のように堂々としていた。しかし、その背後には、国を崩壊させ、民を苦しめた陰謀の数々が隠されている。俺はこの映像を何としてでも報道局に届けなければならないと思った。


戦闘が激化する中、ガイアが俺に声をかけた。

「ここはもう危険すぎる!記者さん、ここから下がって安全な場所に戻りましょう!」


俺はその言葉に従い、戦場の後方へと移動することにした。だが、その道中でも矢が飛び交い、爆発の音が響いていた。


「こんなのもう記者の仕事じゃないだろ…!」


俺は半ば叫びながらも、何とかガイアと共に安全地帯へたどり着いた。


戦闘が落ち着いた夜、俺はこれまでに記録した映像を魔法通信装置で報道局へ送る準備を始めた。映像には、戦場の激しい攻防や、ネギシ将軍の姿がしっかりと収められていた。


「これが、伝わるべき真実なんだよな…」


俺はそう呟きながら、映像を報道局へと送信した。


その日の夜、「アルダNEWS」では、俺が送った映像を元にした特集が放送された。


モリヒナさんが真剣な表情で語る。

「現在、連合軍はエルヴィス王国への進軍を続けています。その中で、ネギシ将軍自身が戦場に現れ、戦況はさらに緊迫化しています。この戦争の行方と、エルヴィス王国の未来を、引き続き現地からお伝えします」


俺は疲れ切った体を休めながら、戦場の過酷さと報道の使命の重さを改めて実感していた。


「次はどんな危険が待ってるんだか…」


俺の頭上には星空が広がっていたが、その光景がどこか遠いものに感じられた。この戦争の終わりが見える日は、まだ遠い――。

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