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戦地記者…!

連合軍が正式にエルヴィス王国への進軍を開始した。隣国を救う名目で結成されたこの多国籍軍は、ネギシ政権を倒し、旧国王シラコを王座に戻すことを目的としている。


その動きを記録するため、俺は連合軍と共にエルヴィス王国へ向かった。


戦場に身を置くプレッシャーと不安を抱えながらも、俺には真実を伝えるという使命があった。報道局から託されたカメラを手に、俺は戦場の中心へと進んでいった――。


「岩木さん、準備はできましたか?」


馬車を降りると、連合軍の案内役としてついてくれる兵士が声をかけてきた。彼はアルシェン共和国の軍人で、名前はガイアと言った。


「準備なんて…正直、怖いだけですけどね」と俺は苦笑いする。


「怖いのは当然ですよ。戦場に向かうのですから。ただ、あなたのような記者がいることで、我々が何のために戦うのかを伝えることができる。それがとても重要なんです」とガイアは励ますように言った。


連合軍のキャンプ地に到着すると、そこには各国から集まった兵士たちが休息を取ったり、作戦会議を開いたりしていた。緊張感が漂う中でも、彼らの顔には使命感が伺えた。


翌朝、連合軍は進軍を開始した。俺は馬に乗りながら、その様子をカメラに収めていく。


「すごい数だな…」


目の前には、何百もの兵士たちが整然と行軍する姿が広がっていた。彼らは剣や槍、弓といった古典的な武器だけでなく、魔法や機械の兵器も備えている。


ガイアが俺の隣で説明してくれた。

「連合軍は各国の特色を活かして編成されています。魔法に特化した部隊もいれば、機械兵器を駆使する部隊もあるんですよ」


俺はその様子をカメラに収めながら、兵士たちの表情も撮影した。彼らの目には、覚悟と不安が交錯しているように見えた。


進軍から数日後、エルヴィス王国軍との最初の衝突が起きた。


連合軍が国境付近の村に差し掛かった時、ネギシ将軍の配下であるエルヴィス軍が待ち伏せをしていたのだ。


「敵襲だ!」


突然の警告に、連合軍の兵士たちは一斉に武器を構えた。俺は混乱の中、木陰に身を潜めながらカメラを回し始めた。


戦場では、剣と剣がぶつかる音、魔法が炸裂する光景、そして兵士たちの叫び声が入り乱れていた。


「前進しろ!敵の防御線を突破するんだ!」

連合軍の指揮官が声を張り上げる中、前線の兵士たちが突撃を開始した。


俺の手は震えていたが、それでもカメラを止めることはできなかった。これが現実の戦争なのだ――その凄惨さを記録するのが、俺の使命だった。


激しい戦闘の末、連合軍はエルヴィス軍を撃退し、村を制圧することに成功した。しかし、そこに広がっていたのは、戦争の悲惨な現実だった。


村の家々は焼け落ち、住民たちは避難する間もなく命を奪われた者も多かった。生き残った住民たちは、怯えた表情で身を寄せ合っていた。


俺はカメラを回しながら、村の惨状を記録した。


「これが…戦争の現実か」


戦場にいる兵士たちだけでなく、無関係な住民たちまで巻き込まれる――その現実に、俺は言葉を失った。


戦闘の後、連合軍は疲弊しながらも再び進軍を開始した。道中では、兵士たちの中にも疲労や不安が見え隠れしていた。


ガイアが俺に言った。

「これが戦争です。何かを守るためには、多くの犠牲が伴う。…でも、それでも進まなければならないんです」


「それでも進まなければならない…か」


その言葉を反芻しながら、俺は再びカメラを手に取った。真実を記録し、それを伝えることで、戦争の本質を人々に知らせる。それが今の俺の使命だった。


その夜、連合軍のキャンプ地で、俺はこれまでに記録した映像を整理し、報道局へ送る準備を始めた。魔法通信装置を使い、映像を本国へ送信する。


映像には、連合軍の進軍や戦場の様子、村の惨状が克明に記録されていた。


「これで伝わるだろうか…」


俺は映像を見つめながら呟いた。この映像がどのように受け止められるのか、それによって戦争の行方が変わるかもしれない。


その夜の「アルダNEWS」では、俺が送った映像を元にした特集が放送された。


モリヒナさんが真剣な表情で語る。

「現在、連合軍はエルヴィス王国のネギシ政権を倒すべく進軍を続けています。しかし、戦場では多くの犠牲が生まれ、村の住民たちも巻き込まれています。この戦争がもたらすものとは一体何なのか――引き続き、現地からの情報をお届けします」


画面には、戦場の兵士たちの姿や村の惨状が映し出された。視聴者からは多くの反響が寄せられ、その内容に胸を痛める声も多かった。


翌朝、連合軍はさらなる進軍を開始した。俺もまた、その後を追い続ける。


「…これで本当に戦争が終わるのか」


戦場の現実を記録しながら、俺はそう呟いた。この戦争の行方、そしてその果てに待つものは何なのか――俺たちの報道は、それを追い続けていく。

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