新生エルヴィス王国の討伐…?
ネギシ将軍の挑発的な演説が国際社会の怒りを買い、ついに各国はエルヴィス王国の現状を議題に会議を開いた。
その会議では、隣国の混乱の原因がすべてネギシ将軍にあると結論づけられ、さらには元国王シラコが無実だったという事実が明らかになった。
会議の結果、連合軍はエルヴィス王国に進軍し、ネシ政権を倒し、シラコ国王を再び王座に戻す方針を決定した。
その動きを受け、報道局も再び現地取材を行うことになった。だが、再び戦場に足を踏み入れることになった俺は、どうしても乗り気にはなれなかった――。
「国際社会が動くぞ」
ミカサデスクが会議室に入ってくるなり、真剣な表情で報告を始めた。
デスクの後ろには、バキさんやサラ、モリヒナさんら報道部のメンバーが続いている。
「連合軍が正式にエルヴィス王国への進軍を決定したわ。ネギシ将軍の政権を倒し、元国王シラコを王座に戻すことが目的だそうよ」
「元国王を戻すって…そこまで話が進んでるんですか?」と俺は驚きながら言った。
「ええ、連合軍は、今回の混乱の責任はネギシ将軍にあると結論づけたの。シラコ国王は完全にネギシによって利用されていただけで、責任はないと判断されたわ」
「シラコ国王が無実…そんなの今さら言われても、国民たちは納得するんですかね?」とサラが首を傾げる。
「そこはまだ不明瞭ね。でも、連合軍が動く以上、この事態は世界的に大きな影響を与えるわ」とデスクが答えた。
「で、話って何ですか?」
俺はデスクに呼び出され、報道局の会議室にいた。テーブルにはデスクとバキさん、そしてサラが座っている。嫌な予感しかしない。
「岩木、あなたにもう一度エルヴィス王国に行ってもらうわ」とデスクが切り出した。
「…は?」
俺は一瞬、言葉を失った。戦争が起きるのが確定している場所に、また行けと言うのか。
「いやいや、待ってくださいよ!今度は本物の戦場ですよ?俺、戦争なんかど真ん中にいなきゃいけない理由なんてないですよね?」
「そんなこと言っても、あなたが現地で取材した内容が、今回の国際社会の動きを後押ししたのよ」とサラが言う。
「でも、俺、命が惜しいんです!」
ナベさんが苦笑いしながら口を挟む。
「命が惜しいのはみんな一緒だよ。でも、誰かが行かなきゃならないだろ?」
「それならサラが行けばいいじゃないですか!」と俺は言い返したが、デスクは首を振った。
「サラはギルド班の担当よ。軍事問題の現地取材はあなたが適任。あなたは一度現地での取材経験があるし、連合軍の動きと、戦場の実態を記録するためには、あなたの視点が必要なのよ」
俺は肩を落としながら、「…俺、ただの遊軍記者だったはずなんだけどな」とぼそりと呟いた。
会議室を出た後、サラが肩を叩いてきた。
「まあまあ、岩木さん。大丈夫よ。前も危険な目に遭ったけど、ちゃんと戻ってきたじゃない」
「それが大丈夫じゃないんだって。今回は前回よりもやばいって分かってるんだよ」
「でも、岩木さんが撮った映像や取材が、隣国や国際社会にどれだけ影響を与えたか分かってるでしょ?それに…」とサラが続ける。
「私たちだって、できる限りサポートするからさ。一人じゃないんだから、安心してよ」
その言葉に、少しだけ気が楽になった気がした。
さらに、バキさんが俺に言った。
「お前さん、何だかんだでやるときはやる男だろ?あの灰翼の事件も、ネギシの陰謀も全部お前が掴んで報じたじゃないか。今回だってやるべきことをやるだけだ」
俺は二人の言葉に押される形で、再び隣国に行くことを決意した。
翌日、俺は連合軍の動きと共に、再びエルヴィス王国へ向かう準備を整えていた。荷物の中には、隠しカメラや通信装置などが詰め込まれている。
ミカサデスクが俺を見送る際に、最後にこう言った。
「真実を伝えるのが報道局の使命よ。あなたが現地で伝えることが、戦争を終わらせる鍵になるかもしれない。頑張ってきて」
俺は少し自信なさげに頷きながら、国境へ向かう馬車に乗り込んだ。
戦争の中心地へ向かうプレッシャーと不安を抱えつつ、俺は自分の役割を果たすために動き出した――。