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新生エルヴィス王国…?

エルヴィス王国のクーデターと、その背後に隠されたネギシ将軍の陰謀が明らかになり、報道局の特集は国際社会に大きな波紋を呼んだ。各国の政府や国民がこのニュースに注目し、隣国の動向を厳しく見守り始めた中で、ネギシ将軍は新たな戦略に打って出た。


彼らは自国の公共テレビを使い、「新生エルヴィス王国」としての国の方針を世界に向けて発信したのだ。だが、その内容はあまりにも挑発的で、国際社会の怒りをさらに買う結果となる――。


「新生エルヴィス王国としての国の姿を示します」


エルヴィス王国の公共テレビ局から放送されたネギシ将軍の演説は、開始早々から注目を集めた。画面に映るネギシ将軍は堂々とした姿で、視聴者に向けて新たな国の方針を語り始めた。


「我々は長らく無能な指導者の下で苦しんできた。しかし今、エルヴィス王国は再び立ち上がり、力強い未来を築いていくことを約束します。我が国は軍事力と経済力を最大限に活用し、他国に頼らず、自らの手で繁栄を取り戻すでしょう」


その言葉には、明らかに他国への敵意が込められていた。さらに、ネギシ将軍は旧国王シラコについても言及した。


「元国王シラコは現在、我々の保護下にあります。彼は新しい国の構築に必要な情報を提供する形で協力を約束しました。彼の安全は保証されていますが、今後の国政には一切関与しないものとします」


この発言により、旧国王シラコが生存していることが初めて公表されたが、その扱いはまるで人質のように聞こえた。


そして、ネギシ将軍は演説の最後にこう締めくくった。

「我が国は今後、他国の干渉を受けることなく、エルヴィス王国独自の道を歩んでいきます。いかなる外部からの圧力にも屈しません」


この放送を受けて、国際社会は激しい非難を巻き起こした。各国政府はネギシ将軍の挑発的な態度と、旧国王シラコの扱いに対して強い懸念を表明した。


アルシェン共和国(隣国の隣国)

「新たなエルヴィス王国の方針は極めて危険であり、地域の安定を著しく脅かすものだ。国際社会としての厳しい対応が必要だ」


ゼントリカ帝国(大国の一つ)

「ネギシ将軍の発言は受け入れがたい。我々は、エルヴィス王国の軍事力が増大することを許すわけにはいかない」


フォルガノス(商業都市国家)

「隣国が軍事力を背景に国際社会への挑発を行うことは、経済的にも政治的にも悪影響を及ぼす。我々は厳しい制裁措置を検討する」


さらに、ヴァルマ連邦(中立国)からも異例の声明が出された。

「エルヴィス王国の新たな方針は平和を損なうものであり、看過できない。我々は国際的な圧力を強化する必要があると考える」


王国でも、この放送がもたらす危険性について緊急会議が開かれた。カイバ三世は苦々しい表情で、報道局や軍の幹部たちを招集した。


「ネギシ将軍の言葉は明らかに挑発的だ。そして、それに乗じて我が国に攻撃を仕掛ける危険性すらある」


「報道の力で、彼らの欺瞞を暴き続けるしかありませんね」とミカサデスクが意見を述べる。


だが、その場にいた国防大臣はさらに深刻な提案をした。

「報道だけでは対応が不十分です。場合によっては、軍事的な準備も進める必要があるでしょう」


俺はその言葉を聞いて背筋が凍る思いがした。報道局として、平和を守るために真実を伝えることが使命だが、戦争が現実味を帯びてきた状況で、それがどこまで通用するのか――不安が胸をよぎった。


「新たなエルヴィス王国についてどう思いますか?」

俺たちは街に出て、市民の声を拾った。


「新しいエルヴィス王国がどう変わるかは分からないけど、挑発的すぎるよな。これじゃまた戦争になるかもしれない」


「国際社会が黙っているわけがない。あんな態度を取ったら、制裁どころか軍事行動もあるんじゃないか?」


「また戦争になるなんて嫌です。もっと平和的な方法で解決してほしいのに…」


その後、国際社会の間で、エルヴィス王国に対する軍事行動が本格的に議論され始めた。いくつかの国が連携し、軍を動かす準備を進めているという情報も流れてきた。


夜のニュースで、モリヒナさんが毅然とした表情で語る。

「新生エルヴィス王国の挑発的な放送により、国際社会の緊張が一層高まっています。戦争への道が現実味を帯びてきた今、平和を守るために我々ができることは何なのか――この問題の行方を引き続き追い続けます」


放送後、報道局の会議室でミカサデスクが言った。

「戦争は誰もが望まない。でも、この状況では避けられないかもしれないわ」


「報道が戦争を止める手段になればいいんですけど…」とサラが苦笑いする。


俺は資料を見つめながら呟いた。

「でも、報道が火をつける場合だってあるんですよね。俺たちが何を伝えるべきか、もっと慎重に考えないと」


隣国の挑発とそれに対する国際社会の反応――世界が新たな局面を迎えようとしている今、俺たち報道局の役割はさらに重要になっていくのだった。

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