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再交渉…?

エルヴィス王国との交渉が不調に終わり、国際社会による経済制裁が発動されてから約一ヶ月。エルヴィス王国から再びエルダリア王国に会合の申し入れがあった。


前回の交渉では、高圧的で傲慢な態度を見せた隣国だが、今回の使者団はまるで別人のようだった。腰を低くし、どこか疲れ切った表情を浮かべている。果たして、この変化は隣国の本心なのか、それとも何か策略が隠されているのか――。


王宮の会議室に入った隣国の使者たちは、前回と打って変わって丁寧に礼をしながら席に着いた。中心に立つのは、外交官アルセスではなく、新たに派遣された若い外交官レアノだった。


「まずは、この度の戦争行為により、貴国および国際社会に多大な迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます」


レアノは深々と頭を下げた。その瞬間、会場内には一瞬の静寂が訪れた。


エルダリア王国側の閣僚たちが互いに視線を交わす中、カイバ三世が静かに口を開いた。

「謝罪の言葉を聞くのは初めてだな。それが貴国の本意であるならば、話を進めよう」


レアノは再び頭を下げると、本題に入った。


「エルヴィス王国は、今回の事態を非常に重く受け止めております。これ以上、貴国および国際社会との関係を悪化させることは、我々にとっても不利益です。よって、以下の条件を提示させていただきます」


レアノは緊張した面持ちで提案内容を述べた。


1. 公式の謝罪

 エルヴィス王国の国王シラコが、国際的な場で正式に謝罪を行う。


2.賠償金の支払い

 エルダリア王国および周辺国への賠償金を、提示された金額に近い形で分割払いする。


3. 再発防止策

 異形兵士の開発施設の完全な廃棄を第三者機関に監視させるとともに、軍事技術の流用を厳しく制限する。


4. 定期的な報告義務

 今後10年間、エルヴィス王国は軍事活動について国際社会に定期的な報告を行う。


提案を聞いたエルダリア側は慎重な態度を崩さなかった。特に賠償金の分割払いについては議論が紛糾した。


「分割払いなどという形式では、被害者たちへの迅速な補償が行われないのではないか?」と財務大臣が指摘する。


「それに、謝罪の言葉があったとはいえ、本当に誠意を持っているのかどうかは疑わしい」と国防大臣が声を上げる。


カイバ三世は全員の意見を静かに聞きながら、最後に言った。

「我々が求めているのは、形式的な謝罪ではなく、本質的な平和だ。そのために必要なことを議論していく」


その後も議論は続き、最終的にエルダリア王国側は以下の条件を追加で提示した。


1. 賠償金は分割払いではなく、一定額を即時支払うこと。

2. 再発防止策について、国際的な監視機関を設置すること。


交渉が進む中、俺たちは街に出て、市民が隣国の再提案についてどう感じているのかを尋ねた。


「隣国がやっと謝罪したみたいですけど、どう思いますか?」とサラが若い男性に尋ねる。

「正直、遅すぎると思います。でも、これを機に平和になってくれるなら、それは歓迎しますね」


中年の女性は険しい表情で答えた。

「言葉だけの謝罪なんて意味がないわ。実際に賠償が行われるまでは信用できない」


一方、別の若い女性はこう語った。

「隣国が変わろうとしてるなら、こちらも少し歩み寄るべきじゃないですか? 戦争ばかりじゃ、未来が見えませんよ」


夜の放送では、この交渉の進展を伝えた。


モリヒナさんが冷静な表情でカメラに向かい語る。

「本日、エルダリア王国とエルヴィス王国の間で再び会合が行われました。隣国側は前回とは異なり、謝罪と具体的な提案を提示しましたが、その実行性や誠意については依然として慎重な議論が必要です」


映像には、交渉の様子や市民の声が映し出され、視聴者からも多くの意見が寄せられた。

「隣国の態度が変わったのはいいが、まだ信用できない」

「エルダリア王国が冷静に対応しているのは素晴らしい」

「今回の交渉で平和が実現することを願っています」


放送後、報道局でミカサデスクが静かに言った。

「今回の使者団は前回と全然違ったけど、隣国がどこまで本気で謝罪しているのか、まだ分からないわね」


「とりあえず、前進はしたって感じですかね。でも、この交渉がどう決着するかが一番の問題です」とサラが答える。


「まあ、俺たちは結果を見届けるしかないな」と俺は肩をすくめた。


こうして、隣国との再交渉は一歩前進したが、最終的な合意にはまだ多くの課題が残されていた。この問題がどんな結末を迎えるのか、俺たちは引き続きその行方を追い続ける――。

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