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世界記者クラブ…?

裁判の判決が下りてから一週間、エルヴィス王国の国王シラコが世界記者クラブで会見を開くというニュースが飛び込んできた。


裁判所の判決に対する正式な反応が注目される中、俺たち報道局はその様子を取材し、真実を報じる準備を進めた。


「まさかエルヴィス王国がこんなに早く反応を示すなんてな」と俺は報道局の会議室で資料をめくりながら呟いた。


「でも、この会見って本当に謝罪する気があるんですかね?」とサラが首をかしげる。

「どうだろうな。これまでの態度を考えると、あんまり期待はできないけど…」


ミカサデスクが静かに言った。

「だからこそ、しっかりと報道する必要があるわ。今回の会見で、隣国がどういう姿勢を示すのかを世界中が見てるから」


セキさんがカメラを肩に担ぎながら笑った。

「まあ、なんにせよ映像に収めるのが俺たちの役目だな。シラコ国王がどう話すか、しっかり記録しよう」


世界記者クラブは、各国の記者が集まる中立的な場として知られている。その会場に、シラコ国王が登場したとき、会場内は一瞬のざわめきに包まれた。


シラコ国王は堂々とした態度で壇上に立ち、マイクの前に進むとゆっくりと口を開いた。

「まずは、この度の件について、私から説明をさせていただきます」


静まり返った会場で、国王の言葉が響いた。しかし、彼の口から出てきたのは謝罪ではなく、次々と言い訳じみた弁解だった。


「今回の戦争と関連する一連の出来事について、私は全く知りませんでした」

シラコ国王はまず、自身の無関与を強調した。


「これらの行動は、私の知らないところで防衛大臣が独断で進めたものでした。彼は軍の力を誇示しようとし、不適切な手段に頼ったのです。私は彼を即刻罷免し、現在は監獄に収監しています」


その場にいた記者たちの表情には困惑と疑念が浮かんでいた。


「しかし、エルヴィス王国はこれ以上の非難を受けるべきではありません。なぜなら、これらの行動は一部の不誠実な者たちによるものであり、国としての意思ではなかったからです」


国王の言葉は続くが、一度も「申し訳ない」という謝罪の言葉は口にされなかった。それどころか、全てを防衛大臣のせいにして、自身の責任を回避する姿勢が露骨だった。


記者たちから次々と厳しい質問が飛んだ。


「国王が知らないところでこれほどの規模の戦争が進められるなどあり得るのでしょうか?」

「裁判で認定された異形兵士の開発について、国王としての見解は?」

「国際社会からの非難について、エルヴィス王国としてどう対応するつもりですか?」


シラコ国王は一つ一つの質問に答えたが、要領を得ない内容ばかりだった。

「私は真実を知るために全力を尽くしています。しかし、これは国全体の問題ではなく、一部の者たちの行いだったのです」と繰り返すばかりで、核心には触れようとしなかった。


会見の映像を持ち帰り、報道局でその内容を分析した。


「どう思う?」とミカサデスクが俺たちに尋ねる。

「正直、何もかも防衛大臣のせいにして逃げてるようにしか見えません」とサラが憤ったように答える。

「謝罪の一言もないしな。これが隣国のリーダーとしての態度なのかって感じだよな」と俺も苦笑いを浮かべた。


セキさんは映像を確認しながら言った。

「でも、この会見をしっかり報じれば、隣国の態度がどんなものか、視聴者に伝わるんじゃないか?」


ミカサデスクが頷いた。

「そうね。この会見を客観的に伝えることが私たちの役目よ。編集に取り掛かりましょう」


夜の放送では、この会見の様子を特集した。


モリヒナさんが冷静な表情でカメラに向かって語る。

「本日、エルヴィス王国のシラコ国王が世界記者クラブで会見を開きました。その内容は、防衛大臣が独断で戦争行為を進めたとするもので、自身の責任については言及しませんでした。一方で、国際社会に対する謝罪の言葉はなく、厳しい反応が予想されます」


映像では国王の発言を要約し、記者たちからの厳しい質問に答えるシーンも取り上げた。視聴者からは様々な反応が寄せられた。

「国王の説明は言い訳にしか聞こえない」

「一度も謝罪しないなんて信じられない」

「エルヴィス王国にはもっと責任ある対応をしてほしい」


放送後、局内では反省会が行われた。


「やっぱり、隣国はまだまだ誠実な態度を見せるつもりはないってことだな」と俺が言うと、サラが頷いた。

「これで国際社会がどう反応するかも気になりますね。私たちも引き続き報道していきましょう」


ミカサデスクが最後に締めくくった。

「これからも真実を伝え続ける。それが報道局の使命よ。次の動きがあれば、また全力で取材に取り組むわよ」


こうして隣国の会見の特集は終わったが、この問題はまだ解決していない。次に何が起こるのか、俺たちはその行方を見守ることになる――。

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