白い新年…!
新年の喧騒が少し落ち着いた頃、王国は厳しい寒波に見舞われていた。
街中には白い雪が積もり、人々は寒さに震えながらも、冬の風景を楽しんでいた。報道局では、この寒波が王国に与える影響や、冬の暮らしを特集することが決まり、俺とサラ、セキさんが取材班として街に出ることになった。
「寒波の取材とか、また厄介な仕事が回ってきたな…」と俺は厚手のマントを羽織りながらぼやいた。
「そんなこと言わないでくださいよ、岩木さん。寒波の中でも人々がどう過ごしてるか、伝えるのも記者の仕事ですから!」とサラは元気よく応じる。
「セキさん、準備できたか?」
「もちろんです。雪景色は映像映えしますからね、いい素材が撮れそうです」とセキさんはカメラを抱えて微笑んだ。
「みんな、気をつけて取材してきてね。寒さで動けなくなるなんてことにならないように」とミカサデスクが心配そうに見送ってくれた。
街に出ると、雪に覆われた石畳が広がり、建物の屋根には白い雪が積もっていた。通りには雪かきをする人々や、暖かそうなマントを着込んだ子供たちが遊ぶ姿が見られる。
「やっぱり雪っていいよな。寒いけど、どこか心が和む感じがする」と俺が呟くと、サラが笑った。
「岩木さん、珍しくポジティブですね。やっぱり年が明けたからですか?」
「いや、単純に雪が好きなだけだ」と照れ隠しのように返した。
俺たちは街角で住民に話を聞くことにした。セキさんがカメラを回し、サラがマイクを持ってインタビューを始める。
「寒波で暮らしに影響は出ていますか?」
「ええ、雪が多すぎて移動が大変ですね。でも、家族みんなで協力して雪かきしてると、なんだか楽しくなってきますよ」と若い母親が笑顔で答える。
「どんな工夫をして寒さを乗り切ってるんですか?」
「うちは、家の魔法炉をずっとつけっぱなしにしてます。暖かいけど、燃料代がかかるのが悩みですね」
一方で、年配の男性からはこんな声も聞かれた。
「この雪のおかげで、今年もいい氷が取れる。これを使って酒の保存ができるからね。雪は厄介だけど、悪いことばかりじゃないさ」
取材中、サラが興味深そうに指差したのは、露店で売られていた冬限定の商品だった。
「これ、何ですか?」とサラが尋ねると、店主が嬉しそうに答える。
「冬限定の『氷花飴』だよ。雪と果汁を混ぜて固めたもので、口に入れると溶けて甘みが広がるんだ」
「美味しそうですね! 私も一つ買ってみます」とサラは飴を購入し、カメラに向かって微笑む。
「冷たいけど甘くて美味しいです! 冬ならではの味ですね」
広場に行くと、子供たちが雪合戦をしている姿が見られた。その中には、手作りのソリで滑って遊ぶ子供もいた。
「この景色、絵になるな」とセキさんがカメラを向ける。
サラは一人の少年に話しかける。
「雪合戦、楽しいですか?」
「うん! 冬は寒いけど、雪があるから楽しいんだ!」
「いいですね。雪合戦で勝ったら何かご褒美があるの?」
「ううん、でも勝つとなんか気持ちいいんだよ!」
子供たちの無邪気な笑顔を見て、俺は思わず微笑んだ。
「子供たちは、どんな状況でも楽しむ天才だな」
取材を終えて帰ろうとした帰り道、俺たちは雪でぬかるんだ道で馬車が立ち往生しているのを見つけた。馬車の御者が困った様子で馬を叱咤している。
「これ、手伝わないと帰れそうにないな」と俺が言うと、サラが率先して馬車に駆け寄った。
「何かお手伝いできることはありますか?」
「いや、雪が深くて馬が進めなくなってしまって…。でも助けてもらえるなら助かる!」
俺たちは馬車を押して道を整え、何とか馬が再び動き出すことができた。御者が深々と頭を下げる。
「本当に助かったよ。ありがとう!」
「いえいえ、こういうのも取材の一環みたいなもんです」と俺は苦笑いを浮かべた。
夜の放送では、街の冬の様子や人々の声、そして特産品を紹介した。
モリヒナさんがカメラに向かって語る。
「厳しい寒波の中でも、人々は知恵を絞ってこの季節を楽しんでいます。その姿勢から、私たちも学ぶことが多いですね」
映像には雪に覆われた街並みや、笑顔でインタビューに答える住民の様子が映し出され、視聴者からも好意的な反響が寄せられた。
放送後、報道局に戻った俺たちは疲れながらも達成感に満ちていた。
「今日の取材、結構良かったんじゃないか?」とセキさんが笑顔で言う。
「新年最初の仕事としては、なかなか充実してましたね」とサラも頷いた。
俺は窓の外に広がる雪景色を見ながら呟いた。
「今年も、こうして真実を伝える日々が続くんだな」