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新年一発目だぞ…!

新年を迎え、報道局も仕事始めとなった。


休む間もなく、俺たちは街に繰り出して取材を行うことになった。今年最初のテーマは、「新年を迎えた街の様子」と「人々の抱負や願い」。王国全体が祝賀ムードに包まれる中で、人々の思いや期待を伝える取材だ。


「新年早々から仕事か…」と俺はカメラバッグを肩に掛けながらぼやく。


「何言ってるのよ、岩木さん。今年最初のニュースよ。気合い入れていきましょう!」とサラが明るい声で言う。彼女はすでにマイクを準備しており、やる気満々だ。


「ほら、セキさんも準備できてるんだから、岩木もちゃんとしろよ」とバキさんが肩を叩く。

「どうせ街をぶらぶらして、適当に話聞くだけだろ」と俺は苦笑いしながら返すが、内心では新しい一年がどんな取材になるのか、少しだけ期待していた。


「はいはい、二人とも早く出発して。スケジュールが押してるんだから」とミカサデスクが冷静に指示を出す。


街に出ると、そこは新年の賑やかさに満ちていた。露店が立ち並び、人々が初売りに群がっている。子供たちは手作りの小さな灯火を持ちながら走り回り、大人たちは笑顔で新年を語り合っていた。


「これは絵になるな」とセキさんがカメラを構える。


サラはすぐに露店の一つに駆け寄り、店主に話を聞き始める。

「新年おめでとうございます。今年の初売り、どんな感じですか?」


「おめでとうございます! 今日は朝から大勢のお客さんが来てくれてますよ。今年も商売繁盛って感じですね」と店主が笑顔で答える。


「こちらのお店で売っているのは何ですか?」

「新年限定の『福袋パン』ですよ! 中には特別な具材が入っていて、運が良ければ金貨の形をしたお菓子が出てくるんです」


その場でパンを買ったサラが、カメラに向かって笑顔を見せる。

「それでは、いただきます! …ん、美味しい! これが新年の味ですね!」


俺たちは広場に向かい、次は人々の抱負を取材することにした。広場には初詣を終えた家族連れや友人同士が集まっており、皆が新年の雰囲気を楽しんでいる。


サラが若い女性二人組に声をかける。

「新年の抱負を聞かせてください!」

「そうですね…私は今年こそ冒険者ギルドに入って、一人前の冒険者になることが目標です!」

「私はもっとたくさんの友達を作りたいな。新しいことにも挑戦してみたいです!」


「いい目標ですね。頑張ってください!」とサラが励ます。


一方、俺は少し離れた場所で老人に話を聞いていた。

「新年、どんなことを祈られましたか?」

「健康だな。若い頃はあちこち旅をしてたけど、今はこうして家族と平和に暮らせるのが何よりだよ」


その言葉に俺は深く頷いた。

「確かに、それが一番大切ですよね。今年も良い年になるといいですね」


午後、俺たちは商業地区に足を運んだ。そこでは新年のセールが行われ、多くの人々が店先に並んでいた。


「ここも賑やかだな」と俺が呟くと、セキさんがカメラを向けた。

「見てください、あの行列! あれ、何か特別な商品でも売ってるんですかね?」


サラが列の先頭に立つ店員に話しかける。

「こちらは何のお店ですか?」

「新年限定の『星灯アクセサリー』を売ってるんですよ。星灯の夜をモチーフにしたデザインで、特に若い女性に人気なんです」


実際にアクセサリーを手に取ると、小さな星型の宝石が輝いていた。

「可愛いですね。これ、私も欲しいかも!」とサラが目を輝かせる。


「おいおい、仕事中だぞ」と俺が笑いながらツッコむ。


夜の「アルダNEWS」では、俺たちが取材した映像とともに、新年を迎えた街の様子や人々の声を放送した。


モリヒナさんが冷静な表情で語りかける。

「新年を迎えたエルダリア王国では、街全体が活気に満ちています。この一年が多くの人々にとって素晴らしい年になることを願ってやみません」


放送が終わり、サラと俺は局内の片隅で休んでいた。


「今日は大変だったけど、楽しかったですね」とサラが言う。

「ああ、やっぱり取材って面白いよな」と俺は頷いた。


その時、俺はポケットから小さな袋を取り出した。中には商業地区で見た星灯モチーフのアクセサリーが入っている。


「これ、お前にやるよ」と俺は無造作に袋を渡した。

「えっ、これ…アクセサリーじゃないですか!?」サラが驚いた顔をする。


「いや、あの露店で買ったんだよ。仕事中に欲しそうにしてたからな」

「そんなこと…岩木さん、ありがとう!」


サラは笑顔を浮かべながらアクセサリーを握りしめた。その瞬間、俺は何だか照れくさくなり、急いで話題を変えた。


「さあ、もう遅いし帰るぞ。明日も仕事だろ?」

「はい!」


俺たちは夜の冷たい風に吹かれながら、それぞれの家路についた。新しい一年が始まり、これからどんな日々が待っているのか――期待と不安が胸の中で交錯していた。

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