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報道の影響は消えない…!

隣国との報道戦争が引き金となり、ついに本格的な戦争の幕が開けた。国境地帯では連日のように戦闘が続き、両国間の緊張は限界に達していた。EVTの取材チームは、報道が事態を煽ったのではないかという後ろめたさを抱えながらも、真実を伝える使命を果たすべく最前線に向かっていた。


荒涼とした国境地帯に降り立つと、冷たい風が頬を刺した。地面には焦げ跡が広がり、辺り一帯は戦闘の痕跡で荒れ果てている。


「これが報道の結果だっていうのか…」とセキさんが呟きながらカメラを回す。

「俺たちだけが原因じゃないさ。だけど…責任がないとは言えないな」と俺もため息をついた。


兵士たちが疲れた顔でバリケードを補強している。銃を持つ手は泥に汚れ、何日もまともに休んでいないことが一目で分かった。


「シラユ隊長!」と俺が声をかけると、彼が振り向いた。その目には眠気と緊張が滲んでいる。


「岩木か。また来てくれたのか」

「隊長、今の状況を教えてください」


隊長は地図を指しながら説明する。

「隣国軍はここに重火器を持ち込んでいる。異形兵士も再び目撃されているが、今のところ大規模な侵攻は起きていない」


「でも、それはいつ変わるか分からないってことですよね?」とバキさんが険しい顔で尋ねる。

「その通りだ。隣国の動き次第で、ここはすぐに戦場と化すだろう」


その日の午後、隣国の村への潜入取材が決行された。王国軍の護衛のもと、俺たちは隣国軍が去った後の村を訪れた。


村は完全に無人だった。住民たちは戦火を避けて避難し、残されているのは壊れた建物と散乱した荷物だけだ。


「本当にここが隣国が言う『エルダリア軍の攻撃』の現場なのか?」と俺は疑問を口にした。


セキさんが周囲を慎重にカメラで捉えながら言う。

「確かに破壊されてはいるけど、これがエルダリア軍によるものだって証拠は何もないですよね」


さらに村の奥へ進むと、隠された地下施設が見つかった。その中に入ると、異形兵士の開発に使われていたと思われる装置や資料が散乱していた。


「これ…完全に隣国の仕業だろう!」とバキさんが叫ぶ。


壁には隣国の紋章が刻まれており、施設内には異形兵士の試作品と思われる物体が保管されていた。さらに、隣国が捏造映像を撮影したセットと見られる場所も発見された。


「これで証拠は揃ったな」と俺は呟いた。


取材を終えた俺たちは、村を後にして王国側に戻る途中だった。だが、その道中で隣国軍の偵察隊に追われる事態に陥った。


「急げ! 奴らに見つかったら終わりだ!」とシラユ隊長が叫ぶ。


俺たちは必死に走りながら、資料や映像を守り抜くことに全力を注いだ。追手を振り切り、ようやく安全地帯に到達したときには全員が息を切らしていた。


「危なかったな…」とセキさんが肩で息をしながら言った。

「でも、これで真実を伝えられる。逃げる価値はあったさ」と俺は疲れた笑みを浮かべた。


翌日、王宮で緊急会見が開かれた。王国側が得た新たな証拠を公開し、隣国の嘘を暴く場となった。


カイバ三世が厳かな表情で壇上に立つ。

「本日、エルダリア軍が行った調査の結果、隣国の主張が完全に虚偽であることが判明しました」


映像には、隣国の地下施設や捏造映像の撮影セットの様子が映し出される。そして異形兵士の開発資料も公開され、隣国が戦争を引き起こすために嘘をついていた事実が明らかにされた。


「隣国政府が真実を隠し、自国民を欺いていることが明らかになりました。我々はこれを強く非難すると同時に、平和的な解決を模索していきます」


カイバ三世の言葉に、多くの国民が拍手を送った。


その後、EVTの特番で会見内容が詳しく伝えられた。


モリヒナさんが冷静な声で語る。

「今回の調査により、隣国がどのようにして戦争を煽ろうとしていたのか、その実態が明らかになりました。エルダリア軍と報道局の努力により、この危機は一旦収束に向かっています」


画面には戦場の悲惨な様子や、隣国の嘘が暴かれる瞬間が流れる。視聴者からは安堵の声が寄せられ、報道局には称賛のメッセージが次々と届いた。


放送後、報道局ではスタッフたちが疲れ切った表情で椅子に座り込んでいた。


「これで終わり…か?」とバキさんが呟く。

「戦争は収束しても、報道が与えた影響はこれからも残るだろうな」と俺は答えた。


ミカサデスクが静かに言った。

「報道が火種を煽ることもあれば、平和のきっかけを作ることもある。私たちはその両方を見た。これからも慎重に、真実を伝えていくわよ」


俺たちはそれぞれに考えを巡らせながら、次の課題に備えるのだった。

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