炎上する戦火…!
国境地帯での隣国軍の攻撃と、それに対する王国軍の応戦の映像が放送された翌日。報道は王国中で大きな反響を呼び、視聴者からは多くの感想や意見が寄せられた。だが、状況はさらに混乱の度合いを深めていく。
朝、報道局内に隣国の緊急報道が流れる映像が届けられた。エルヴィス国家放送局(EKH)のキャスターは、EVTの報道に対して激しい反論を行っていた。
「エルダリアが我が国を挑発したという虚偽の報道を行い、さらなる国際的な緊張を煽っている。この行為は非常に危険であり、我々はこれを断じて容認しない」
画面には、隣国の指揮官と思われる人物が登場し、冷たい声で語る。
「エルダリア側の報道には明確な矛盾点がいくつもある。例えば、王国軍が応戦する場面の映像には、明らかにエルダリア側が先に攻撃を開始した痕跡が見られる」
その言葉に報道局内がざわめいた。
「これ、完全に事実をねじ曲げてるじゃないか!」とバキさんが怒鳴る。
「でも、隣国の国民はこの報道を信じてる可能性が高いわ」とサラが不安そうに呟いた。
EVTは隣国の報道を受け、再び王宮に呼び出された。国王カイバ三世やシラユ隊長、広報官が待つ部屋には、深刻な空気が漂っている。
「隣国の報道は我々にさらなる攻撃の口実を与えようとしている」と広報官が説明する。
「現状、このような挑発に対してどう対応すべきか、迅速な決定が必要です」
カイバ三世が少し間を置いて語る。
「我々としては、隣国の攻撃を防ぎつつ、戦争を避けるための道を模索したい。しかし、隣国が真実を歪め続ける以上、我々は毅然とした態度を示さなければならない」
その言葉に、シラユ隊長が頷く。
「国境地帯では緊張がピークに達しています。もう一度、現地での取材を行い、隣国の嘘を暴く証拠を掴む必要があります」
「また国境ですか…」と俺が思わず呟くと、ミカサデスクが鋭い目で言った。
「文句を言わない。これは記者としての使命よ、岩木」
「分かりました…」と俺は溜息をつきながら答えた。
午後、俺たちは再び国境地帯に向かった。バキさんとセキさんが同行し、今回は王国軍の護衛部隊と共に進む形となった。
「前回よりも危険な雰囲気だな」とバキさんが言う。
「そりゃそうでしょう。隣国が本気で越境してくる可能性だってあるんだから」と俺は緊張しながら答えた。
現地に着くと、王国軍の兵士たちがさらに強化された防衛体制を整えていた。バリケードが増設され、兵士たちの数も前回より明らかに多い。
「これだけ準備してても、向こうが攻撃してきたら持ちこたえられるかどうか分からないな」とシラユ隊長が険しい顔で言った。
俺たちはカメラを回しながら兵士たちにインタビューを行った。
「あなたたちはこの状況をどう感じていますか?」
「国を守るためにここにいる。でも、正直、戦争なんてしたくない。それだけだ」と一人の兵士が答えた。
その言葉に俺たちは一瞬黙ったが、カメラを回し続けた。
取材中、再び国境側から爆発音が響いた。
「来たぞ! 配置につけ!」という兵士の叫び声が響く中、俺たちは安全な位置に身を隠しながらカメラを回した。
隣国軍の兵士たちが国境を越えようとしている姿が見える。その中には、以前報道されていた異形の兵士に似た姿もあった。
「またあの異形兵士か…!」とバキさんが叫ぶ。
王国軍は即座に応戦を開始。銃撃音や爆発音が響き渡り、現場は修羅場と化した。
「これ、絶対に撮っておけよ!」と俺がセキさんに叫ぶと、彼は緊張した面持ちながらも頷いた。
「これが戦争なんだな…」と俺はカメラ越しに見える光景に胸が締め付けられる思いだった。
戦闘が一段落すると、俺たちは急いで最寄りの村に向かった。現場での戦闘映像をすぐに報道局へ送る必要があったからだ。
村に到着すると、魔法使いが待機していた。彼女は手際よく呪文を唱え、映像を局に転送する準備を始めた。
「これで放送に間に合うはずだ」とセキさんがホッとした表情を浮かべる。
夜7時、「アルダNEWS」で緊急放送が組まれた。
モリヒナさんがカメラを見据えながら語る。
「本日、隣国軍による越境攻撃が確認されました。この映像をご覧ください」
画面には、戦闘の様子や異形兵士の姿が映し出される。そして、王国軍の奮闘や現場の兵士たちの声も伝えられた。
「このような状況下で、冷静さを保つことが最も重要です。我々は引き続き、事実を基にした報道を行っていきます」とモリヒナさんが締めくくる。
放送後、局内では再び緊張が高まっていた。
「これ、もう引き返せないんじゃないか…?」とバキさんが呟く。
「報道が戦争を止められるのか、それとも火に油を注いでいるのか…答えを出すのは簡単じゃないな」と俺は苦笑しながら答えた。