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捏造と証明…!

夜の放送で隣国の主張が根拠に欠けることを明らかにした俺たち。


しかし、予想通り、隣国はそれで黙るような相手ではなかった。翌日、隣国の国営テレビ「エルヴィス国家放送局(EKH)」が、またしても挑発的な報道を展開してきた。


朝、報道局のモニターには、EKHのニュース番組が流れていた。キャスターはいつもの冷静な口調で、こちらを非難する内容を伝えている。


「昨夜、エルダリアのエルドラ・ヴィジョン・テレビ(EVT)が報じた内容について、我々はさらなる疑問を抱いております。現地の取材と称して公開された映像は、確かに一部事実に基づいているかもしれません。しかし、それが全体の真実を反映しているとは限りません」


キャスターは続けて、新しい証拠だと称する映像を公開した。それは、問題の魔法具が隣国の軍事施設ではなく、エルダリア国内で違法に製造された可能性を示唆する内容だった。


「この映像は、エルダリア国内の一部の地下組織が関与している証拠として、隣国の独自調査チームによって撮影されたものです。我々は、エルダリア政府がこの問題にどのように関与しているのか、さらなる真相究明を求めます」


報道を見たスタッフたちは、再び怒りを爆発させた。


「またこんな無茶苦茶なことを言ってきたのかよ!」とバキさんが怒鳴る。


「地下組織だって? 次から次へとよく思いつくものね」とサラが呆れる。


「ただ、今回の映像、少し問題があります」とセキさんが画面を指差した。

「この映像、確かにエルダリア国内っぽいですが、どこなのか特定するのが難しいですね」


「つまり、また捏造の可能性が高いってことか」と俺はセキの言葉に同意する。


ミカサデスクが全員を見渡し、落ち着いた声で言った。

「相手がこうして嘘を重ねてくるのは、こちらの報道が彼らにとって都合が悪いという証拠よ。私たちは冷静に対処するわ。もう一度、取材チームを編成して、この新しい映像の真偽を調べる必要があるわね」


その日の午後、俺たちは再び王宮に呼ばれ、隣国の新しい主張について話し合うことになった。


「今回の隣国の報道、どう見ても焦りから来ているように感じます」と、広報官がまず意見を述べる。


「だが、それをそのまま否定するだけでは足りない。隣国が示した映像の出所を突き止める必要がある」とシラユ隊長が付け加える。


「EVTがもう一度現場取材を行い、隣国の映像の真偽を暴くべきだ」とカイバ三世が提案した。


「了解しました。取材班を編成して、すぐに動きます」とミカサデスクが答える。


隣国が新たな報道で主張してきた「地下組織の関与」という新たな捏造。


これを覆すため、俺たちは現地に向かい、隠された真実を掴むべく取材を開始した。


「まずは映像に映っている場所を特定することだな」とミカサデスクが指示する。

俺、バキさん、そしてセキさんの3人は、隣国の映像を細部まで確認しながら、現場特定に向かった。


映像には、王国南部の交易の要所として知られる市場が映っている可能性があった。俺たちは、そこに足を運び、情報を集めることにした。


市場は雑多な雰囲気で、露天商や行商人がひしめき合い、どこからともなく売り声が響いてくる。

「この辺、何度来ても慣れない雰囲気だな」と俺が呟くと、バキさんが苦笑いを浮かべた。

「まあ、俺たち獣人でも警戒する場所だしな。お前みたいな人間は特に目立つ」


「セキさん、大丈夫ですか?」と振り向くと、セキさんはカメラを回しながら冷静に答える。

「大丈夫です。ただ、隠し撮りっぽく撮影するんで、あまり目立たないでくださいね」


市場を歩きながら、まずは露天商に話を聞く。

「ちょっといいですか。この映像に映ってる場所、心当たりありませんか?」と、俺は映像の一部を露天商に見せる。


「ん? これ、確かにこの辺っぽいけど…ああ、この路地の奥だな。怪しい連中がよく集まってる場所だよ」と、露天商が指差す。


指示された路地裏に入ると、雰囲気は一変した。狭い道には物陰が多く、不穏な空気が漂っている。


「岩木さん、あまり深入りしない方がいいですよ」とセキさんが小声で言う。


「いや、ここが鍵だろうな。慎重に行こう」と俺はカメラを確認しつつ、先へ進む。


すると、道の奥から中年の男が現れた。目つきが鋭く、こちらをじっと見つめている。

「おい、あんたら何者だ?」


「俺たちは記者だ。この辺りで最近、隣国が撮影した映像の話を聞いていてね」とバキさんが答える。


男は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに薄笑いを浮かべた。

「隣国の話か。あいつら、この辺を撮影して勝手に話を作り上げてるだけだよ。俺も映像の一部を見たが、あれ、明らかに編集されてるぜ」


「編集?」と俺が聞き返す。


「ああ。実際には何でもない場所を、不自然な角度から撮影して、あたかも犯罪の巣窟みたいに見せてるんだ。あの映像に映ってる連中も、俺が知る限り、この辺の住人じゃない」


「それ、もっと詳しく教えてもらえませんか?」


男はしばらく考えた後、小声で話し始めた。

「隣国のやつら、ここにちょくちょく来ては変な撮影をしてたよ。撮影が終わった後、何人かが不自然に消えたって噂もある。多分、隣国が連れて帰ったんだろう」


その後、俺たちはさらに調査を続け、隣国の映像に映っている人物の一部が、過去に隣国のスパイとして活動していた記録を見つけることができた。


「これで隣国の映像が捏造であることを裏付けられるな」とバキさんが言う。


「確実に仕上げるために、この路地裏での撮影映像とスパイの記録を組み合わせて編集しよう」とセキさんが提案する。


俺たちは集めた情報と映像を整理し、報道局に戻る準備を始めた。


報道局に戻り、取材内容を基に放送の準備が進められた。

「今回の放送では、隣国の映像の矛盾点を徹底的に暴く。それと同時に、路地裏での証言を使って隣国の捏造を明確に示しましょう」とミカサデスクが指示する。


「了解しました。あの男の証言も、今回の放送に含めます」と俺は答えた。


「これで隣国がどう動いてくるか、興味深いな」とバキさんが呟く。


夜7時、「アルダNEWS」が始まる。モリヒナさんが冷静に語りかける。

「本日は、隣国が新たに提示した映像について、その真偽を検証します」


画面には、隣国の映像と、それを否定するための取材映像が並べられる。路地裏での証言や、映像に映っている人物がスパイだった記録も明確に示された。


「これらの事実から、隣国の主張がいかに信憑性に欠けるかが分かります。視聴者の皆様には、冷静に事実を見極めていただきたいと思います」とモリヒナさんが締めくくる。


隣国の嘘を暴いた放送が終わり、俺たちは次なる展開に備える。


「これで隣国もさすがに黙る…わけないか」と俺は苦笑いする。


「次に何を仕掛けてくるか分からないが、こっちも準備はできてる」とミカサデスクが自信を見せた。

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