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国王からの呼び出し…!

朝、報道局に出勤すると、ミカサデスクから突然の連絡が入った。


「岩木、バキ。今すぐ王宮に行くわよ」


「えっ、王宮ですか?」と驚く俺に、バキさんが肩をすくめる。


「俺たち、何かやらかしたんですかね?」


「違うわよ。むしろ褒められるんじゃない?」とデスクは軽く笑って答えたが、その目は鋭い。


俺たちは急いで準備を済ませ、王宮へ向かった。


王宮に到着すると、案内役の衛兵に通され、広い謁見の間へと通された。そこには国王カイバ三世が待っていた。


「よく来てくれた。まずは感謝を伝えたい」と、国王は深々と頭を下げた。


「えっ、陛下が直接お礼を…?」と俺は面食らう。


「君たちが命がけで撮影した映像、そしてそれを冷静かつ適切に報道したことに、我々はとても感謝している。国民の混乱を防ぎつつ、王国軍の勇姿も伝えてくれたことは、非常に大きな助けとなった」


その言葉に、ミカサデスクも少し驚いた表情を見せるが、すぐにいつもの冷静な態度で応じた。

「ありがとうございます。ただ、私たちは記者として当然の仕事をしただけです」


「いや、それでも、このような危険な状況であそこまでしっかりと映像を残せるのは容易なことではない。改めて礼を言わせてもらう」


さらに、国王は深刻そうな表情で続けた。

「隣国の報道については、誠に申し訳ない。あのような形で皆さんが非難されることになるとは、私たちも予想していなかった」


「いや、陛下が謝る必要はありませんよ」とバキさんが言う。「あれは向こうの勝手な言いがかりですから」


「とはいえ、皆さんが不利益を被るのは心苦しい。これからも引き続き、王国のためによろしく頼む」


「もちろんです。ですが、報道はあくまで中立で公正なものにするつもりです」とデスクがきっぱりと言った。


国王はその言葉に満足したように頷き、言った。

「それでは、この後すぐ、王宮で緊急会見を開く。君たちにはその取材をお願いしたい」


会見は、王宮の特別なホールで行われた。カイバ三世自ら登壇し、多くの記者たちが注目する中で発言を始めた。


「まず最初に、我々が王国内の報道機関、特にエルドラ・ヴィジョン・テレビ(EVT)に対して何らかの利益供与を行ったという隣国の主張は、全くの事実無根であることを強調したい」


会場の記者たちがざわめく中、国王は続ける。

「EVTは独立した報道機関であり、我々と利益関係は一切存在しない。また、今回の報道では、隣国の名前を一度も明言していない。それにも関わらず、隣国が焦ったかのように『国営テレビ』を用いて反論してきたのは、非常に興味深いことだ」


その言葉に、会場内はさらにざわついた。


記者たちは一斉にメモを取りながら、この発言がどれほどの波紋を呼ぶのかを考えているよう国王は周囲のざわめきを抑えるように手を軽く上げ、落ち着いた声で続けた。


「さらに、今回の件について、王国軍と協力して事実関係を徹底的に調査しています。現場に残された異形の兵士たちの魔法具や武器、そして関連する文書は、いずれ明確な証拠として公表する予定です」


「もちろん、今回の報道で国民の皆様に不安を与えたことについては、お詫び申し上げます。しかし、私たちがこの問題を真摯に受け止め、冷静かつ公正に対応していることをご理解いただきたい」


カイバ三世の発言は明確で揺るぎないものであり、その場にいた記者たちにも強い印象を与えていた。


記者たちの質問タイムになると、各局の記者が次々と手を挙げた。


「国王陛下、隣国の主張について、具体的な反論はどのように行っていく予定ですか?」


「隣国の主張にはいくつもの矛盾があります。我々は、現地で収集した証拠を用いて、その矛盾を一つずつ明らかにしていくつもりです。また、隣国が報じた内容の不確かさを裏付ける資料も現在準備中です」


次に、グレイルテレビの記者が質問する。

「隣国がこれほどまでに攻撃的な報道を行う背景について、何かお考えはありますか?」


「隣国がなぜこれほど早急に反論を行ったのか、その意図は明確ではありません。しかし、彼らが焦りを感じていることは間違いないでしょう。我々はこれを冷静に受け止め、無用な緊張を高めることのないよう慎重に行動するつもりです」


会見が終わり、報道局に戻った俺たちは、夜の放送での特集に向けた準備を開始した。


「岩木、さっきの会見の映像、編集に回しておいて」とミカサデスクが指示する。


「了解です。国王の『隣国の焦り』発言、しっかり取り上げますよ」と答えながら、俺はカメラのデータを整理した。


編集チームでは、国境で撮影した映像と今回の会見の内容を組み合わせて、説得力のある特集を作り上げるための作業が進められていた。


「隣国の挑発的な報道に対して、我々がどれだけ冷静で事実に基づいた対応をしているかを強調するのが重要ね」とミカサデスクが説明する。


「その上で、異形の兵士に関する新情報も盛り込んで、視聴者に現在の状況をしっかり伝えないとな」とバキさんが加える。


夜7時、「アルダNEWS」が始まる。モリヒナさんが落ち着いた声で番組を進行する。


「本日は、王宮で行われた緊急記者会見の内容をお伝えします。まずはこちらの映像をご覧ください」


画面には、国王カイバ三世が堂々と語る姿が映し出される。「EVTとの利益関係がない」「隣国の反応が過剰である」といった国王の発言が、特に強調される形で編集されていた。


続いて、現地で撮影された映像も再び流れる。国境の地形や異形の兵士たちの痕跡、そして王国軍の奮闘ぶりが視聴者に伝わる内容となっている。


「隣国の報道について、我々はこれまでに収集した事実を基に反論を行います。さらに、王国軍と連携し、真実を明らかにするための調査を進めています」とモリヒナさんが説明する。


最後に、スタジオからのコメントで番組が締めくくられる。

「このような状況下でも、私たちは冷静さを保ち、正確な情報をお伝えすることを使命としています。視聴者の皆様には、今後の進展にも注目していただければと思います」


放送後、報道局内ではスタッフたちが今回の放送内容について話し合っていた。


「今回の特集、視聴者にしっかり伝わったと思いますよ」とサラが言う。


「でも、これで隣国が黙るとは思えない。次に何をしてくるかだな」とバキさんが警戒心を示す。


「まあ、次が来たらまた冷静に対処するだけだ」と俺は苦笑いしながら答えた。


一旦は国王自らの発言で王国の立場を明確にできたが、この緊張がいつまで続くのか、誰にも分からない。

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