最新兵器…?
昨夜の戦闘を振り返りながら、防壁の上でシラユ隊長と話していた俺は、ふと気になることを尋ねた。
「隊長、確かこのエリアは魔法が使えないはずですよね? どうして兵士たちは魔法を使えたんですか?」
その問いに隊長は短く頷き、説明を始めた。
「確かに、この地域全体には魔法を抑制する『魔法アンチエリア』が張られている。しかし、我々は国境警備のために特殊な魔法具を持ち込んでいるんだ。これを使えば、限られた範囲内で魔法を発動できるようになる」
彼が腰に付けていた青白い輝きを放つ装置を指差した。それは、兵士全員に支給されているらしい。
「なるほど。じゃあ、この装置がないと魔法は無理なんですね」と俺は感心しつつ、今後の取材でこの装置の存在が重要になるかもしれないと考えた。
昼頃、俺たちは再び兵士たちに同行して森の中を調査することになった。昨夜の戦闘で異形の集団が逃げ込んだ方向を辿る形だ。
森の中は静かだったが、地面には異形の集団が残した大きな足跡が続いていた。そして、木々には何かが掴んだような跡や、血痕が薄く残っている。
「昨夜の戦闘で追い詰めたと思ったが、完全に撃退したわけじゃない。まだこの近くに潜んでいる可能性がある」とシラユ隊長が警戒を促した。
「岩木さん、これ本当に大丈夫なんですかね…?」とセキさんが不安げに尋ねる。
「まあ、危険なのは確かだけど、これが俺たちの仕事だからな」と言いながら、カメラを構えて足跡を撮影した。
森の奥へ進むと、朽ち果てた小屋のような建物が見えてきた。近づいて中を調べると、昨夜戦った異形の集団が使っていたと思われる武器や、奇妙な装置が並んでいた。
「これは…魔法具か?」と隊長が拾い上げたのは、黒く不気味な光を放つ装置だった。
「見たことがない形状だな…。隣国の技術かもしれない」
その時、セキさんが小屋の奥で何かを見つけた。
「岩木さん、隊長、これを見てください!」
そこには異形の集団が身に着けていた防具と、いくつかの文書が置かれていた。文書には隣国の軍事拠点名が記されており、それが異形の集団が隣国の兵士であることを示していた。
「やはり、奴らは隣国の仕業だったか…!」シラユ隊長が苦々しい表情で呟く。
「いや、でも普通の兵士じゃないですよね。どうしてこんな異形の姿になっているんですか?」と俺が尋ねると、隊長は文書を読みながら答えた。
「ここにはこう書かれている。『改良型魔導兵器計画』…どうやら、隣国は人体に魔法具を組み込むことで、普通の人間を超える力を持つ兵士を作り出したらしい」
その言葉に背筋が寒くなった。
隊長の言葉に耳を傾けている最中、不意に森の奥から聞き覚えのある不気味な声が響いた。
「我らの土地を侵す者に死を!」
振り向くと、異形の兵士たちが再び姿を現し、こちらに向かって突進してきた。
「戦闘態勢を取れ!」シラユ隊長が指示を飛ばし、兵士たちはすぐさま矢を放つ。
俺たちもカメラを回しながら森の中を移動し、少しでも安全な場所を確保しようとした。
「岩木さん、また始まっちゃいましたよ!」セキさんが焦りながら叫ぶ。
「分かってる! 撮れるだけ撮って逃げるぞ!」
異形の兵士たちは恐るべき力を発揮していた。魔法を放つ兵士の盾を軽々と砕き、攻撃をものともしない体力で次々に前進してくる。
「全員、統一魔法陣を展開しろ! 奴らの進行を止めるんだ!」シラユ隊長の声が響く。
兵士たちの魔法攻撃が再び炸裂し、森の一部が炎に包まれる。だが、それでも異形の兵士たちは止まらない。
「まさに…兵器だな」と俺は呟きながら、彼らの動きをカメラに収め続けた。
その後、兵士たちの奮戦によってようやく異形の兵士たちは退却を始めた。
戦闘が終わり、隊長が改めて文書を確認した。
「隣国がここまでの技術を持っているとは…。我々も警戒をさらに強化する必要がある」
「でも、これを報道すれば王国全体に衝撃が走りますね」と俺が言うと、隊長は頷いた。
「そうだ。だが、この真実を伝えることは重要だ。これ以上、奴らに先手を取られるわけにはいかない」
俺たちは収集した情報と映像を手に、王都に戻る準備を始めた――。