敵襲…?!
取材のために国境地帯へと向かった俺とセキさんは、防壁や村の状況をしっかりとカメラに収めた。
そのまま報道局に戻る予定だったが、現地の兵士たちから「もう少し残した方がいいかも」と言われ、俺たちはそのまま国境近くの村に留まることになった。
「残れって、何か大きな動きがあるってことですか?」と俺が聞くと、兵士の一人が神妙な顔で答えた。
「具体的なことはまだ分かりませんが、最近、不審な動きが増えていて…。あなた方がここにいる間に何かが起きるかもしれません」
嫌な予感がする一方で、記者としての本能がくすぐられた。何かが起きる――それを取材できれば、これ以上ないスクープになる。
その日の夜、村には静寂が広がっていた。兵士たちが警戒を強め、村の周囲を見回っているのが遠目に見える。
「岩木さん、これ、本当にただの偵察だけで終わるんですかね?」とセキさんが小声で聞いてきた。
「さあな…。でも、何もない方が平和でいいんだけどな」と答えながら、俺はカメラを手にして周囲を見渡していた。
そんな時だった――遠くから響く異様な音が、村全体を包み込んだ。
「……何だ?」
音の正体を確かめるため、防壁へと向かう。そこでは既に兵士たちが集まり、森の方を警戒している。
「どうしたんですか?」と聞くと、シラユ隊長が険しい表情で答えた。
「森の中に、さっきまでいなかったはずの光が見えるんだ」
俺たちも防壁の上に登り、森を見下ろすと、確かに複数の光が揺れているのが分かった。それは明らかに松明の光で、人間の手によるものだ。
「侵入者か?」と兵士たちがざわめき始めた時、突然、森の中から響く声が聞こえた。
「……我らの土地を侵す者に死を!」
その瞬間、森の中から矢が一斉に放たれ、防壁に突き刺さった。
「伏せろ!」シラユ隊長が叫ぶ。
俺とセキさんも慌てて身を伏せた。矢の嵐が防壁に降り注ぎ、周囲は一気に戦場と化した。
「まさか、こんなことになるなんて…!」とセキさんが焦りの声を上げる。
「俺たち記者なんだから、これを記録するのが仕事だろ!」と返しながら、カメラを構える。
森の中から現れたのは、鎧を着た異様な集団だった。その姿は人間と何かの魔物が混ざったような異形で、明らかに普通の隣国の兵士ではなかった。
「これは…何なんだ?」
「岩木さん、そんなことより映像を! これ、大スクープですよ!」とセキさんが叫ぶ。
俺はその異形の集団をカメラに収めながら、兵士たちが防壁の上から矢を射返す様子も撮影していく。
兵士たちはすぐさま反撃を開始した。防壁の上から矢を放ち、敵に向けて魔法の炎が放たれる。
「岩木さん、これ、ただの偵察どころじゃないですね!」とセキさんが声を震わせながら言う。
「こんなことになるなんて聞いてないぞ!」と俺も叫びながらカメラを回し続けた。
そんな中、シラユ隊長が冷静な声で指示を飛ばしている。
「全員、防壁を死守しろ! 絶対に突破させるな!」
異形の集団は次々と押し寄せてくるが、王国軍の兵士たちが防壁を越えさせることはなかった。
戦闘は夜明け近くまで続いた。やがて敵の集団は森の中へと退却し、周囲は静寂を取り戻した。
「岩木さん、何とか生き延びましたね…」とセキさんが疲れ切った声で言う。
「まったくだよ…。でも、これだけの映像が撮れたなら、報道部は大喜びだろうな」と俺も息をつきながら答えた。
防壁の上では、兵士たちが疲れた表情を見せながらも、戦闘に勝利した安堵感が漂っていた。
シラユ隊長が近づいてきて言った。
「記者としてここに残ってくれて助かったよ。だが、あの集団が何者なのか、まだ分からない。調査が必要だ」
「了解しました。俺たちもこれをしっかり伝えます」と答えたものの、内心では「また面倒なことになりそうだな」と思っていた。
防壁に残された異形の集団の痕跡と、撮影した映像。それらは、この国境地帯で何が起きているのかを解き明かす手がかりとなるだろう。
だが、この戦闘の裏には、もっと大きな謎と危険が潜んでいる予感がした――。