記者の気持ち…?
前回の取材で撮影した貧民街の映像が編集され、今夜の放送で特集として放送されることになった。
俺が撮った映像が中心になるということで、普段はサボり気味の俺も、少しだけ気になっていた。
「岩木くん、今日の放送、しっかり見ておいてね。あなたが担当した映像だから」とレイラさんが局内で声をかけてくる。
「ええ、もちろん見ますよ」と答えつつも、ちょっと照れ臭い気持ちを隠せない。
編集スタッフが最後の仕上げを進めている中、俺は局内のモニターで映像のプレビューを確認していた。
「岩木、お前にしては頑張ったじゃないか」と横からバキさんが声をかけてくる。
「いやいや、レイラさんがちゃんとしてるから、俺も引き締まったってだけですよ」
「ふーん、珍しく素直だな」とバキさんは意味深に笑う。
画面には貧民街の住民たちの表情や、子どもたちの遊ぶ姿、古びた集会所など、俺が撮影した映像が次々と流れる。その中には、住民たちの切実な言葉も含まれており、見るだけで胸が締め付けられるようだった。
夜7時。報道局のフロアに設置されたモニターで、「アルダNEWS」の放送が始まった。モリヒナさんがメインキャスターとして進行する中、いよいよ特集が放送される。
「本日は、王国内で深刻化している貧富の格差についてお伝えします。特に、王都の外れに位置する貧民街では、生活の困難が浮き彫りになっています」
モリヒナさんの言葉に続き、俺たちが取材した映像が流れ始めた。
映像には、集会所で住民たちが語る様子や、貧しい暮らしぶりが映し出される。住民の言葉が字幕で表示され、背景に流れる静かな音楽が映像の重みを引き立てていた。
「貧民街の住民たちは、物価の高騰や支援の不足に苦しんでいます。それでも、住民同士が支え合いながら生きている姿が印象的でした」とサラさんが解説を加える。
レイラさんが現地でインタビューをしている様子も映り、彼女の落ち着いた語り口が視聴者の心を引きつける。
放送が終わると、局内ではさっそく反響が話題になっていた。視聴者からの感想や反応が次々と届き、スタッフたちは忙しそうに対応している。
「今日の特集、結構反響ありますよ。『貧民街の実態を知れてよかった』とか、『もっと支援を増やすべきだ』とか、いろんな意見が来てます」とサラさんが教えてくれた。
「へえ、俺たちがやった仕事がそこまで注目されるなんてな」と俺が呟くと、後ろからレイラさんが近づいてきた。
「岩木くん、本当にお疲れ様。あなたの映像があったからこそ、こうして視聴者に伝えられたわ。ありがとう」
「い、いえ、こちらこそ。レイラさんのリポートがあってこその特集ですから」と、思わず頭をかきながら答える。
「でも、次もこういう取材があったら、ぜひ一緒にお願いね」とレイラさんが微笑む。その笑顔に、俺は少しだけ動揺した。
放送後、デスクに戻った俺は一息つきながら、今日の仕事を振り返っていた。
「真面目にやれば、こんなふうに評価されるのか…。でも、それってすごく疲れるんだよな」
サボりたい気持ちと、少しだけ湧き上がったやる気がせめぎ合う中、俺はそっと溜息をつく。
「まあ、次も頑張るかどうかは、その時の気分次第だな」
そんな曖昧な決意を抱えながら、俺はいつもののんびりとした日常に戻っていった。