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“サボり記者たち”の取材日常…?

今日は久しぶりに一人でのんびりと現場取材に出かけることになった。


現場は王都の郊外にある小さな村。特に大きな事件が起きたわけではなく、「最近の村の様子や生活の変化をリポートしてくれ」という、いかにも軽い内容の依頼だ。


「こんな取材なら、適当に流してもバレないよな…」と馬車の中でひとり呟く。俺はのんびりと空を眺めながら、どうやって効率よくサボれるかを考えていた。


村に着いて最初に目に入ったのは、目立つオレンジのベストを着た虎の獣人――ハラだった。


彼はエルダリア放送の記者で、俺が現場でよく出会う記者仲間だ。


「おーい、岩木!」と大きな声で手を振りながら近づいてくるハラ。


「あれ、ハラさんもここ取材ですか?」と俺が聞くと、ハラは笑いながら肩をすくめた。


「そうそう、『村の暮らしの変化』だってさ。お前と全く同じ内容だろ?」


「ですよね。いや、これってそんなに取材することあります?」


「まあ、だいたい適当にやって帰ればいいんだよ」とハラが大きな牙を見せて笑う。


そんなハラは、俺と同じ「サボれるならサボりたい」タイプの記者だ。現場で何度も顔を合わせるうちに、自然と気が合うようになった。


「さて、どうします? とりあえず村を一周してお茶を濁しますか」と俺が提案すると、ハラは嬉しそうに頷いた。


「いいね。適当に住民に話聞いて、あとは村の風景でも撮って終わりにしようぜ」


俺たちは村をゆっくり歩きながら、村人に簡単な質問を投げかける。


「最近、村に変わったことはありますか?」


「ええ、特に変わったことはないですね。平和ですよ」と、村人はのんびりと答える。


「そっか、平和が一番だよね!」とハラが適当な相槌を打ちながらメモを取るふりをしている。俺もメモ帳を広げつつ、実際にはほとんど何も書いていない。


「いやー、この取材、楽勝ですね」と俺が言うと、ハラが低い声で笑った。


「俺たちみたいな記者にぴったりの仕事だよな」


そんな調子でのんびり取材を進めていた時、村の中心から突然大きな叫び声が聞こえた。


「なんだ?」と俺たちは顔を見合わせ、声のした方へ駆けつけた。


そこでは、村人たちが一箇所に集まり、慌てた様子で何かを話していた。


「どうしたんですか?」と俺が聞くと、村人のひとりが息を切らしながら答えた。


「森から大きな魔物が出たらしいんです! 畑を荒らして、村の近くまで来てるって!」


「魔物…? そんな話、さっきは全然聞いてないけど」と俺が戸惑うと、ハラが肩を叩いてきた。


「おいおい、こういうのは掘り下げると面倒だぞ。でも、一応見に行くか?」


「そうですね…。放っておくわけにもいかないし」


俺たちは村人たちと共に、問題が起きたという畑に向かった。そこでは、大きな足跡が地面にくっきりと残されていた。


「これ…魔物にしてはデカくないか?」とハラが低い声で呟く。


「ええ、間違いなく大型ですね。でも、もう畑からはいなくなったみたいですね」と俺が言うと、村人たちは少しホッとした様子を見せた。


「これで戻らないといいんだけどな」とハラが言いながら、足跡を写真に収めている。


「念のため、今夜は村に兵士を呼んで警戒した方がいいかもしれませんね」と俺が村長に提案すると、彼は何度も頷いていた。


騒ぎがひと段落した後、俺たちは村の広場に戻り、取材を再開した。


「いやー、面倒なことになるかと思ったけど、意外とすぐ終わったな」とハラが笑う。


「ですね。これで素材も揃いましたし、あとは簡単にまとめて帰るだけです」と俺も頷く。


「お前、取材で出会うたびにサボりたそうな顔してるけど、今日の俺も負けてないぞ」とハラが冗談交じりに言う。


「いやいや、ハラさんには敵いませんよ。俺なんてまだまだです」


そんな軽口を叩きながら、俺たちはのんびりと取材を終えた。


今回の取材は、普段の忙しさから解放され、のんびりした時間を過ごせる珍しい機会だった。とはいえ、最後に少しだけ事件が絡むのも記者の宿命かもしれない。


「次に現場で会う時も、こんな楽な仕事だといいですね」と俺が言うと、ハラは大きく笑った。


「だな! じゃあ、またな、岩木!」


こうして俺たちはそれぞれの局へ戻ることになった。報道の現場は厳しいことが多いが、たまにはこんな緩い一日も悪くない。

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