サボり記者の日常…!
国境での取材が終わり、久しぶりに報道局でデスクワークの日がやってきた。
俺にとっては取材よりもこういう日こそ重要――いや、正直に言えばサボれるチャンスだ。
「今日こそ、のんびり過ごしたいな」と呟きながら、俺は報道局のフロアへと足を踏み入れた。
報道局のフロアは相変わらず忙しそうだ。
各デスクには資料が山積みされ、どこかしらで電話が鳴り響いている。壁際に並ぶ複数台のテレビには、他局のニュースやバラエティ番組が映っていた。
「なんでこんなに忙しそうなんだよ…」と俺が小声で呟いていると、隣を通りかかったサラさんが耳ざとく聞きつけた。
「岩木、今日もサボるつもり?」
「いやいや、そんなことないですよ。ただ、少しリフレッシュしながら働こうかなって」
「それ、ただサボるって言ってるのと同じじゃない」
鋭いツッコミに言い返せず、俺は苦笑いを浮かべながら自分のデスクに座った。
「おい、これ見たか?」とバキさんが隣のデスクから声をかけてくる。彼が指差すテレビには、他局のニュースが映っていた。
「最近、隣国で起きてる事件らしいぞ。これ、さっきの国境取材と関連があるかもしれない」とバキさんが続ける。
「確かに、参考になりますね。後で詳しく調べてみます」と俺は頷きながらメモを取る。
報道局では常に他局のニュースを確認し、自分たちの報道に活かすことが求められる。
俺の机は相変わらず散らかっている。国境取材のメモ帳、王国の政策資料、ギルド関連の報告書、そして他局のニュース番組の資料まで、全部がごちゃ混ぜになって山積みだ。
「こんな机じゃやる気も出ないよな…」と呟きながら資料をパラパラとめくる。だが、片付ける気にはならない。
とりあえず適当に手に取った資料を広げたものの、目は壁際のテレビに映る他局の番組へと自然と向かっていた。
「グレイルテレビ」の「冒険者たちの足跡」が映っているのを見つけて、俺はつい画面に見入ってしまった。この番組はギルドや冒険者の活動を深掘りするドキュメンタリーで、映像がやたらとリアルで面白い。
「岩木、またそれ見てるの?」と背後からサラさんの声がする。
「いや、これは勉強ですって。ほら、ギルド取材の参考になるし…」
「嘘ばっかり。そんなにじっくり見てる時点で、サボってるだけでしょ」
俺が言い返す間もなく、彼女は隣のデスクに戻っていった。
机に戻って仕事をする気になれなかった俺は、局内をぶらぶらと歩き回ることにした。
壁際のテレビには、他局のニュース番組「王国エクスプレス」が流れている。隣国の新しい貿易政策について詳しく解説していて、つい足を止めた。
「へえ、これはアルダNEWSでも取り上げるべき内容かもな…」
一応、メモを取りつつも、あまり真剣に考える気にはなれない。こうやって他局のニュースを見ている時間も、俺にとってはサボりの一環だ。
「岩木、さっきからウロウロして何してるんだ?」
不意に背後からミカサデスクの声が響き、俺は思わず立ち止まる。
「いや、その…他局のニュースをチェックして、参考になりそうなものを探してまして」
「ほう、それで? どんなニュースが参考になりそうだ?」
「えっと…隣国の貿易政策とかですかね?」
「それ、今朝の会議で話題にしただろう。お前、聞いてなかったのか?」
「いえ、ちゃんと聞いてましたよ! でも、もっと掘り下げられるかなと思って…」
デスクの鋭い視線に冷や汗をかきつつ、その場を乗り切ろうと必死に言い訳をする。
「いいか、サボるのは勝手だが、ちゃんと仕事のフリくらいはしろよ」と呆れたように言い残してデスクに戻っていくミカサさんの背中を見送りながら、俺は小さくため息をついた。
結局、俺は自分の机に戻り、積み上がった資料を少しだけ片付けることにした。
「サボれる時にサボるのが俺の流儀だってのに、今日はちょっと厳しいな…」
他局の番組やニュースを参考にしつつ、次の取材に備える振りをしながら、なんとか今日一日をやり過ごす算段を立てる。
報道局の日常は、情報が飛び交う忙しい空間だ。だが、俺にとってはその中でいかにサボりつつ仕事をするかが重要だ。
「さて、明日は何をすることになるんだろうな」と呟きながら、今日の片付けを適当に終わらせる。