帰還…!
国境での取材も数日が経ち、現場で収集した情報と映像は十分に揃った。
俺たちは現地での仕事を終え、局への報告をまとめるために馬車で王都へ戻る準備を整えた。
「岩木、これで国境の現実を十分伝えられるな」とカメラマンのセキさんが笑顔で言った。
「そうですね。でも、現場の緊張感をどこまで伝えられるか…編集部の腕にもかかってますね」と俺は苦笑いしながら答えた。
馬車での帰り道、俺たちは国境地帯での出来事を振り返りながら話をしていた。
「結局、不審な動きの正体はつかめなかったけど、兵士たちの努力や防衛体制の厳しさはよく分かったな」とセキさんが言う。
「ええ。映像やリポートで、現場の様子が視聴者に伝わればいいですね」と俺は頷いた。
「お前のリポートもいい感じだったよ。緊張感が伝わる内容だった」とセキさんが言葉を添えてくれる。
俺たちは少しだけ安心しながら、王都の街並みが見えてくるのを待った。
王都に戻ると、俺たちはすぐに報道局に向かい、素材の編集に取り掛かった。
「これが焚き火の跡の映像だ。ここで岩木のリポートを重ねれば、現場の緊張感が強調されるだろう」とセキさんが言いながら映像を並べる。
「じゃあ、この部分に兵士のインタビューを加えて流れを作りましょう」と俺も提案した。
編集作業は深夜まで続いたが、何とか夜の放送に間に合う形で特集を完成させることができた。
夜の放送では、国境取材の総まとめとなる特集が放送された。
モリヒナさんが進行する。「本日は、数日にわたって行われた国境地帯の現地取材をまとめ、その成果をお届けします」
映像には、防壁の様子や森の中の足跡、兵士たちの緊張した表情が映し出され、セキさんが撮影した焚き火の跡の映像も加えられた。
「現場では、国境を守る兵士たちの尽力が続いています。その一方で、不審な動きや隣国との関係悪化の可能性が懸念されており、今後も注視が必要です」とサラさんが解説を添える。
リポートには、俺の声が流れた。「国境地帯での防衛政策は、その現実と課題を浮き彫りにしています。この現場で働く人々の思いを、私たちはこれからも伝え続けます」
放送が終わり、俺たちは報道局で軽く打ち上げをした。
「岩木、お前のリポート、なかなか良かったぞ」とバキさんが笑いながら肩を叩いてくる。
「ありがとうございます。でも、現場の緊張感をどこまで伝えられたか…」と俺が言うと、マキさんが真剣な表情で答えた。
「伝わったさ。視聴者にとって必要な情報が詰まっていた。それが報道の本質だ」
「次はもっと大胆に現場の声を拾ってみてもいいかもしれないな」とセキさんも笑顔で言う。
俺は少しだけ肩の力を抜き、次に向けたエネルギーを感じていた。
国境での取材を終え、俺たちはまた王都での日常業務へ戻ることになった。だが、国境で見た現実は、これからの取材に大きな影響を与えるだろう。
「さて、次はどんな取材になるんでしょうね」と俺が呟くと、セキさんが軽く笑った。
「どこでも行けるように準備しとけ。記者の仕事に休みはないぞ」
俺はその言葉に笑いながらも、次の挑戦に向けて心を新たにした。