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アンチ魔法装置…?

防衛政策の最前線を追う国境取材は、さらに深い緊張感を増していた。


俺とセキさんは、国境の奥地へと足を進めていたが、そこには予期していなかった制約が待ち受けていた。


「アンチ魔法装置が設置されているため、このエリアでは魔法通信が使えない」。現場の兵士からその事実を告げられた時、俺たちは驚きながらも納得するしかなかった。


「安全を優先するためとはいえ、不便ですね」と俺が呟くと、セキさんはカメラを調整しながら軽く笑った。


「これも現場のリアルだ。こういう状況を伝えるのも俺たちの仕事だろう」


日が傾きかけた頃、俺たちはパトロールの兵士と共にさらに奥へと進んだ。このエリアでは隣国との境界線がより近く、不審な動きが頻繁に報告されているという。


「ここが最近最も問題になっているエリアだ。隣国からの偵察者らしき影が幾度となく目撃されている」と兵士が地図を指しながら説明する。


周囲を見渡すと、森の中にはところどころに奇妙な痕跡が残されていた。折れた枝や、地面に深く刻まれた足跡――それは人間のものに見えたが、詳細は分からない。


「何かいるかもしれませんね」と俺が呟くと、セキさんがカメラを向けながら冷静に言った。


「こういう時こそ、俺たちの役割だろう。映像に残せるだけ残す」


取材が終わった後、俺たちは防壁近くの指揮所で一夜を過ごすことになった。夜になると、森の奥から聞こえる奇妙な音が静寂を切り裂く。


「風の音とは思えないですね」と俺が言うと、近くにいた兵士が答えた。


「獣か、それとも何か別のものか…。この付近では正体不明の動きが続いている」


夜が更ける中、俺たちは不安を抱えながらも翌日の取材に備えた。


翌朝、俺たちはパトロールに同行しながら、さらに森の奥へと進んだ。


そこで見つかったのは、隣国側に向かって伸びる小道と、その周辺に散らばる荷物のようなものだった。


「これ、誰かが急いで捨てていったんでしょうか?」と俺が尋ねると、兵士が頷いた。


「隣国からの密輸や、不法な移動が疑われる物品だな。この地域ではよく見つかるが、正体を突き止めるのは難しい」


セキさんは無言でカメラを回しながら、地面に散らばる荷物やその周辺の風景を撮影していた。


取材を終えた後、俺たちは最初に立ち寄った村へ戻り、魔法通信を使って局に素材を送る準備を始めた。


「いやぁ、やっと送れるな」とセキさんが素材をまとめながら息をつく。


「アンチ魔法装置の範囲がこんなに広いなんて思いませんでしたね」と俺が苦笑いすると、彼は軽く肩をすくめた。


「安全のためだろうが、不便には違いない。だが、それを超えて届けるのが俺たちの仕事だ」


魔法通信端末に映像データを送り込むと、転送魔法が発動し、素材が局へと送られていった。


「これで、夜の放送には間に合いますね」と俺が安堵の息をつくと、セキさんが笑った。


「これからが本番だ。ちゃんと伝えられるといいな」


夜の放送では、国境地帯の取材が放送された。


モリヒナさんが進行する。「今回、王国の防衛政策が進む中、国境地帯での現場取材を行いました。その中で明らかになったのは、不審な動きとその裏に潜む緊張感です」


映像には、防壁の様子や森の奥で見つかった荷物、パトロールの兵士たちの姿が映し出された。


「現場では、防衛体制の強化が進む一方で、隣国との摩擦が高まる兆候も見られています。この緊張がどのように解消されるのか、今後の動向が注目されます」とサラさんが解説を加えた。


放送が無事に終わった後も、俺たちは村に滞在しながら取材を続ける予定だ。不審な動きの背景にある真相を追い、隣国との緊張をどのように伝えるべきかを考えながら、新たな一歩を踏み出す覚悟を固めた。

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