ゆっくりする時間…?
忙しい報道の現場を離れ、今日は久しぶりに完全な休みを取った。
最近は討伐取材や森の巡回などで休む暇もなく、家に帰っても倒れるように眠るだけの日々だったが、今日は違う。
「自由な一日…何をしようかな」
ベッドで寝転がりながら、俺はまず何をするか考えていた。
普段は早朝から出勤だが、今日は目覚ましをかけずに、久しぶりにゆっくりとした朝を過ごすことができた。
「朝ご飯くらいはちゃんと作るか…」
とは言っても、手の込んだ料理をする気力はない。冷蔵庫の中に残っていたパンと果物を簡単に並べ、インスタントのスープを添えて軽く済ませた。
「これでも贅沢な方だな…最近は食堂の飯ばっかりだったし」
静かな朝食を終えた後、コーヒーを飲みながら新聞を広げる。これも久しぶりの感覚だ。
せっかくの休みなので、家にこもっているのももったいないと思い、街へ出かけることにした。
市場を歩きながら新鮮な食材や異世界特有の商品を眺めていると、ふと見覚えのある顔に出会った。
「おや、岩木じゃないか!」
声をかけてきたのは、王国軍班のマキさんだった。鳥人の彼は、普段は王国軍の動きを追っているため、あまり一緒に仕事をする機会はないが、報道局の同僚として顔を合わせることはある。
「マキさん、どうしたんですか?」
「ちょっと買い出しにな。最近忙しかっただろ? 休みか?」
「ええ、久しぶりの休みなんです。今日は何も考えずにぶらぶらしようかと」
「それなら良いリフレッシュになるな。俺も市場を回ってるが、一緒に行くか?」
誘いを受け、マキさんとしばらく市場を回ることにした。
市場を回った後、少し小腹が空いてきたので、いつもの店「カレンのキッチン」に寄ることにした。
「いらっしゃい、岩木さん!」
カレンさんは今日も笑顔で迎えてくれる。最近は忙しくてあまり来られなかったが、それでも顔を覚えてくれているのは嬉しい。
「久しぶりに来ました。最近、取材でバタバタしてて…」
「そうだったんですね。じゃあ今日はゆっくりしていってください!」
注文したのは、カレンさん特製のサンドイッチとハーブティー。異世界らしい食材を使った料理は、どこか懐かしさと新鮮さが同居していて、つい長居してしまう。
「岩木さんって、いつも忙しそうですよね。でも、こういう時間も大切ですよ?」
「カレンさんが言うと説得力ありますね。こうしてリラックスする時間があると、また頑張れる気がします」
そんな会話を交わしながら、ゆっくりとした時間を楽しんだ。
店を出た後、街をぶらぶらと散歩していると、夕焼けが街を染め始めていた。
「こうやって何も考えずに歩くのも悪くないな」
普段は取材や仕事で通るだけの街並みも、今日は違った表情を見せているように感じる。いつも忙しい日常から少し離れるだけで、こんなにも風景が違って見えるとは思わなかった。
家に戻り、久しぶりに自分の時間を満喫することにした。
「たまには贅沢してもいいか…」
冷蔵庫にしまってあったお酒を取り出し、軽いおつまみを作って一人で晩酌を始めた。テレビをつけると、仲間たちが出演している「アルダNEWS」が流れている。
「こうやって見ると、俺も頑張ってるんだな…」
少し酔いが回ってきた頃、ソファに身を沈めながら思った。
「明日からまた忙しくなるだろうけど、今日はこれで十分だ」
静かな夜が更けていく中、久しぶりに充実した休みを過ごした満足感を胸に、俺は眠りについた。