ギルドの動きも…?
討伐計画が成功したものの、森の生態系に生じた混乱が新たな課題を生み出していた。中でも、森の北側に出没するゴブリンが大きな問題となり、近隣の村では被害が続出しているという。
そのため、ギルドは急遽小規模な討伐隊を編成し、ゴブリンの巣を探索することに。
俺とサラさんも取材のため、ギルドの若手冒険者たちに同行することとなった。
出発前のギルド会館では、タロウさんの指導の下、若手冒険者たちが討伐隊としての準備を進めていた。
「今回の任務は、ゴブリンの巣を見つけ出し、可能な限りその数を減らすことだ。気を抜かず、慎重に行動するように」とタロウさんが厳しい表情で指示を出す。
若手冒険者たちは緊張しながらも、装備を整え、互いに声を掛け合いながら士気を高めている。
「今回の任務は初めての本格的な討伐になりますが、全力を尽くします!」と一人の若手が意気込みを語る。
その様子をカメラで撮影していた俺は、サラさんに小声で言った。「若手がどれだけ成長しているかを見る良い機会ですね」
「ええ。タロウさんが掲げた『次世代の育成』がどこまで進んでいるか、注目ね」とサラさんも真剣な表情だった。
俺たちは討伐隊と共に森の北側に到着し、ゴブリンの痕跡を探し始めた。足跡や、何かを引きずったような跡があちこちに残っている。
「この方向に巣がある可能性が高いな」とリーダー役の若手冒険者が地図を確認しながら言う。
「足音に気をつけて。ゴブリンに気づかれないように進むぞ」ともう一人が慎重に進むよう促す。
俺はカメラを回しながら、若手たちの行動を記録していた。
「これ、意外とまともに動いてますね」と俺が言うと、サラさんが少し笑って答えた。「まあ、タロウさんの厳しい指導のおかげじゃない?」
やがて討伐隊は、ゴブリンの巣らしき洞窟を発見した。中からはゴブリンたちの低いうなり声や、石を叩く音が聞こえてくる。
「中に入るのか?」と俺が尋ねると、リーダー役の若手が頷いた。「でも、慎重に動きます。サポートがあれば全員で対応できるはずです」
洞窟の中へ進むと、そこには十数体のゴブリンが武器を磨いている光景が広がっていた。
「ここが巣だな…全員、準備はいいか!」と若手リーダーが小声で確認する。
「お前たちは外周を回れ。俺たちは中央を抑える!」と的確に指示を飛ばし、若手たちは素早く動き出した。
ゴブリンたちに気づかれると同時に、若手冒険者たちは一斉に攻撃を開始した。剣や槍が激しくぶつかり合い、洞窟内は一瞬で戦場と化す。
「うわぁ…これ、撮ってて大丈夫かな」と俺がカメラを構えながら呟くと、サラさんが笑いながら言った。「まあ、後ろに隠れてれば平気よ」
若手冒険者たちはこれまでの訓練の成果を発揮し、次々とゴブリンを倒していく。リーダー役の冒険者は、他の仲間たちの動きにも目を配りながら指示を出していた。
「全員、連携を取れ!一体ずつ確実に仕留めるんだ!」
その声に応えるように、冒険者たちは見事な連携を見せた。
戦闘が終わると、洞窟内には倒されたゴブリンたちの姿が残されていた。若手冒険者たちは息を切らしながらも、誇らしげな表情を浮かべている。
「これでゴブリンの被害も減るはずだ」とリーダーが呟く。
その姿を見て、俺はカメラを回しながら言った。「これ、次世代の成長を象徴する瞬間じゃないですかね」
「ええ、ギルドの未来が少しずつ育ってるのを感じるわ」とサラさんも感慨深げだった。
夜では、若手冒険者たちの活躍を報じた。
モリヒナさんが進行する。「本日、ギルドの若手冒険者たちが森の北側でゴブリンの巣を制圧しました。この成功は、タロウギルドマスターが掲げた『次世代の育成』の成果といえるでしょう」
映像では、若手冒険者たちがゴブリンの巣を発見し、戦闘を繰り広げる様子が流れる。
サラさんが解説を加える。「今回の任務は、若手冒険者たちにとって初めての本格的な討伐でした。しかし、彼らは見事に作戦を遂行し、ギルドの力を示してくれました」
放送終了後、俺たちは取材内容を振り返りながら次の準備を進めていた。
「若手冒険者たち、本当に成長しましたね」と俺が言うと、サラさんが微笑みながら答えた。
「ええ。でも、これで終わりじゃない。森の他の場所にも課題はたくさんあるからね」
若手の成長と、新たな課題。それがギルドと街の未来を支える力となる――俺たちはその行方を追い続ける覚悟を新たにした。