新・森の主討伐戦…！
ギルドの討伐計画が本格的に始まった。
俺とサラさん、そして外部カメラマンのセキさんは、この計画の進行を取材するため、森の入口に向かっていた。
早朝、調査隊が森の奥深くへと進む準備を進めていた。若手冒険者たちが中心となり、ベテランの冒険者が後ろで指導を行う。
「いいか、慌てるな。敵の気配を感じたら、まずは周囲を確認しろ」とベテランがアドバイスを送る中、若手の冒険者たちは真剣な表情で頷いていた。
俺たちもカメラを回しながら、その様子を記録する。
「これがタロウさんの掲げた『次世代の育成』なんですね」と俺が呟くと、サラさんが微笑んだ。
「ええ。若手に経験を積ませる場を作ることで、ギルド全体の底力を上げる。こうして見ると、その意義がよくわかるわね」
その時、タロウさんが現れ、若手冒険者たちに声をかけた。
「お前たちはギルドの未来だ。恐れるな、自分たちの力を信じて進め」
その言葉に、若手冒険者たちの目が輝き、自信を持って森の中へと進んでいった。
森の周囲では、ユウキさん率いる監視隊が活動していた。彼らは警報装置や通信魔道具を活用し、魔物が森の外に出ないよう監視を強化している。
「ここから先、異変があればすぐに知らせろ」とユウキさんが指示を出すと、冒険者たちはそれぞれの持ち場に散っていった。
「万が一、森の主がこちらに向かってきたらどうするんですか？」とサラさんが尋ねる。
「その時は、見張り役が即座に連絡を入れる。それから、討伐隊に情報を共有して動く。街に被害が出ないよう、最優先で対応するつもりだ」とユウキさんが答える。
彼の徹底した安全対策が、冒険者たちの信頼を集めているのが感じられた。
討伐隊の中心となるのは、レノンさん率いる冒険者たちだった。彼らは森の奥へ進みながら、魔物の足跡や痕跡を確認していく。
「この先が危ない。全員、慎重に進め」とレノンさんが声をかけると、冒険者たちは息を合わせて動き始めた。
「これがレノンさんの掲げた『冒険者の団結』ですね」と俺がカメラを回しながら言うと、サラさんが頷いた。
「彼のリーダーシップが、こうして冒険者たちを一つにしてるのね。団結力が試される場面だわ」
その時、遠くから低いうなり声が響いてきた。地面が微かに揺れ、周囲の木々がざわつく。
「来たか…！」とレノンさんが剣を構える。
森の奥から現れたのは、全身を黒い鱗で覆われた巨大な魔物だった。目は赤く光り、口からは腐食性の液体が滴り落ちている。
「これが…新たな森の主！」
冒険者たちは一斉に武器を構え、戦闘態勢に入った。しかし、その巨大さと威圧感に圧倒され、動きを躊躇する者もいる。
「全員、落ち着け！連携を取れ！」とレノンさんが指示を飛ばし、冒険者たちを励ます。
冒険者たちが次々と魔物に攻撃を仕掛けるが、その鱗は予想以上に硬く、攻撃を弾き返してしまう。さらに、魔物が吐き出す酸が周囲の木々を溶かし、冒険者たちは後退を余儀なくされる。
俺はカメラを回し続けながら、息を呑んでその様子を見守っていた。
「どうするんですか、レノンさん！」と俺が叫ぶと、彼は冷静に答えた。
「一旦退く！このままじゃ被害が拡大するだけだ。全員、撤退だ！」
冒険者たちはレノンさんの指示に従い、慎重に後退を始める。その間も俺たちはカメラを回し続け、森の主の恐ろしさを記録に収めた。
その日の「アルダNEWS」では、討伐計画の第一報として森の主との戦闘の模様が放送された。
モリヒナさんが冷静に進行する。「本日、ギルドが進める『新たな森の主』討伐計画が開始されました。しかし、現場では予想以上の困難が冒険者たちを待ち受けていました」
映像には、森の主の恐ろしい姿や、冒険者たちが連携して戦う様子が映し出されている。
サラさんが解説を加える。「今回の計画には、ギルドマスター選挙で掲げられた政策が活かされています。次世代の育成、冒険者の団結、安全確保――その全てが、今回の戦いに試されている状況です」
放送の最後には、タロウさんのコメントも流れた。
「確かに今回の討伐は厳しい戦いだった。だが、若手冒険者たちは恐れずに挑み、ベテランたちがその背中を支えてくれた。そして、冒険者全員が団結して次に向けて動き出している。この経験が、ギルド全体の力をさらに強くすることを信じている」
その言葉に、視聴者からはギルドへの応援の声が寄せられた。
放送終了後、俺たちは討伐隊が次の作戦に備える様子を追いかける準備を進めていた。
「森の主がこれほど強敵だとは思わなかったわね」とサラさんが呟く。
「でも、ギルド全体がここまで結束しているのは頼もしいですね」と俺は答えた。
討伐計画はまだ始まったばかり。次の挑戦が、ギルドの未来をさらに切り拓くものとなるだろう。
