森の新しい主…?
スライムが森から突然姿を消した理由。それを解明するため、俺とサラさんは再び森へ向かうことになった。
森の入口に着いた俺たちは、カメラを準備しながら周囲を見渡した。
「スライムが消えたことで、この森にどんな影響が出ているか、何かしらの手掛かりが見つかるといいけど…」と俺が呟く。
「少なくとも、スライムの痕跡や、他の魔物の異常な動きが見つかれば大きな進展ね」とサラさんが頷く。
森の奥へ進んでいくと、不意に「おい、そこのお二人」と声をかけられた。
振り返ると、そこにはレノンさんの姿があった。ギルドマスター選挙の際に取材した冒険者だ。
「レノンさん!どうしてここに?」
「スライムの異常について調べるために森に来てるんだよ。最近、この辺りの生態系がおかしいんだ。お前たちも同じ目的か?」
俺たちは頷き、これまでの取材内容を簡単に説明した。
「なるほど。なら、俺も手伝ってやるよ。こんな状況じゃ、記者が森を安全に歩けるとも限らないだろうしな」とレノンさんは頼もしい笑みを浮かべた。
レノンさんと共に森を探索する中で、彼は最近の異変について話してくれた。
「スライムが消えてから、森全体が静まり返ってるんだ。普通ならもっと小動物や魔物が活発に動いているはずなんだが、まるで何かに怯えてるような雰囲気だ」
「怯えてる…?」とサラさんが驚きの声を上げる。
「ああ。まるでこの森が生き物全体で『何か』を避けてるみたいなんだ。特に奥に行くほど、その感じが強い」
俺たちはその言葉に不安を覚えながらも、さらに奥へ進むことにした。
探索を続けていると、突然足元に奇妙な痕跡が見つかった。巨大な足跡。それはスライムどころか、これまで見たことのない生物のものだった。
「これは…何の足跡だ?」と俺がカメラを向けると、レノンさんが険しい顔で周囲を警戒し始めた。
「間違いない。この森にはとんでもない化け物がいる。しかも、スライムが消えた原因はそいつのせいかもしれないな」
その時、遠くから低いうなり声が聞こえた。地面がかすかに振動し、木々の間から巨大な影が見え隠れする。
「隠れろ!」とレノンさんが叫び、俺たちは近くの茂みに身を潜めた。
現れたのは、異常なまでに巨大な魔物だった。全身が黒い鱗に覆われ、目は赤く光り、口からは酸のような液体を滴らせている。
「これは…ただの魔物じゃない。森全体を支配している存在だ…」とレノンさんが呟く。
「倒せるんですか?」と俺が尋ねると、レノンさんは首を振った。
「いや、俺一人じゃ無理だし、今の装備じゃ話にならない。ギルドに報告して対策を立てるしかない」
俺たちは魔物に見つからないよう、慎重にその場を離れた。
「レノンさん、今回のこと、ギルドにすぐに伝えられるんですか?」
「ああ、急いで報告する。こういう魔物は一刻も早く対処しないと被害が広がるだけだからな」
「俺たちも報道局に戻って、現場の映像をまとめて伝えます」と俺が答えると、レノンさんは頷いた。
「いい連携が取れそうだな。お前たちも無事に戻れよ」
その夜のでは、俺たちが森で撮影した映像を元に、スライム消失の原因として考えられる未知の魔物について報じた。
モリヒナさんが冷静に進行する。「近隣の森でスライムが突然姿を消した原因として、未知の魔物の存在が確認されました。本日は魔物研究の第一人者であるリオ博士をお招きし、この現象について解説していただきます」
カメラが博士を映すと、彼は落ち着いた声で解説を始めた。
「まず、この魔物がどのように森に現れたのかはまだわかりません。しかし、森全体の生態系がその存在によって大きく変化しているのは間違いありません」
「具体的にはどういう影響が出ているのでしょうか?」とモリヒナさんが尋ねる。
「スライムのような下位の魔物が消えると、森の清掃機能が失われるだけでなく、その上位捕食者にも影響を与えます。そして今回のように、巨大な魔物が新たな頂点捕食者として君臨することで、森全体がその支配下に置かれる可能性があります」
さらに、サラさんが質問を続ける。「この魔物に対して、どのような対応が考えられるのでしょうか?」
「まずは、ギルドや王国軍による迅速な対応が必要でしょう。そして、可能であれば、この魔物の特徴や弱点をさらに調査する必要があります。生態を知ることで、対策が立てやすくなりますからね」
博士の言葉に、スタジオは一瞬静まり返った。その後、モリヒナさんが締めくくる。
「スライムの消失と新たな魔物の出現。この問題が森や王国全体にどのような影響を及ぼすのか、引き続き調査を進めていきます」
放送終了後、俺たちは取材内容を振り返りながら次のステップを考えていた。
「未知の魔物、あのまま放っておくわけにはいかないですね」と俺が呟く。
「ギルドがどう動くかが鍵ね。私たちも引き続き情報を追いかけないと」とサラさんが気を引き締める。
森の中に潜む脅威。それはスライム消失という現象を超え、王国全体に波紋を広げようとしていた。