消えるスライムの行方…?
近隣の森で発生していたスライムが、突然姿を消したという報告が王国の各地から寄せられ始めた。
スライムはこの世界では比較的安全な魔物で、冒険者や街の人々にも馴染み深い存在だった。それが突然いなくなったことで、森の生態系や街の人々の生活にどのような影響があるのかを調査するため、報道局はこの件を取り上げることになった。
俺はサラさんと共に現地取材に向かいました。
サラさんと一緒に近隣の森に到着すると、辺りには不自然な静けさが漂っていた。
「スライムが消えたって言うけど、どれくらいの規模なんだろう?」と俺がカメラを回しながら尋ねる。
「地元の冒険者の話だと、森全体からいなくなったみたい。こんなこと、普通じゃ考えられないわね」とサラさんが答える。
森の中を歩きながら、スライムがいた痕跡を探す。地面に散らばるスライムの粘液の跡や、彼らが好むとされる湿地帯も、完全に乾ききっていた。
「これは本当にいなくなってるな…」
さらに地元の冒険者にも話を聞くことができた。
「最近、森でスライムを全然見かけなくなったんだよ。いつもならこの辺りに大量にいるはずなんだけどな」
「何か原因に心当たりはありますか?」とサラさんが尋ねると、冒険者は首を横に振った。
「いや、全く。ただ、森の奥で妙な気配を感じることが増えた。何かが起きてるのは間違いないと思うよ」
報道局に戻ると、俺たちは撮影した映像を整理し、夜の「アルダNEWS」で使うための原稿を準備した。
「現地の映像を見る限り、ただの自然現象ではなさそうね」とサラさんが呟く。
「そうですね…。でも、魔物の研究なんて俺たちだけじゃ手に負えないし、やっぱり博士に頼るしかないです」と俺が答えると、サラさんは笑って頷いた。
その夜、スタジオにはリオ博士が招かれていた。白髪混じりの髪に分厚い眼鏡をかけた彼は、魔物研究の第一人者として知られており、過去にもスライムの生態について多くの論文を発表していた。
「リオ博士、今日はお越しいただきありがとうございます」とモリヒナさんが挨拶する。
「いえいえ、こういう現象は私にとっても興味深いものですから」と博士は微笑んだ。
スタジオでは、まず現地取材の映像が流された。森の中の静けさや、スライムの消えた痕跡が映し出され、視聴者にもその異様さが伝わるようになっている。
「リオ博士、この現象についてどうお考えですか?」とモリヒナさんが尋ねると、博士は頷きながら解説を始めた。
「スライムは非常にシンプルな構造を持つ魔物ですが、生態系の一部として重要な役割を果たしています。彼らが突然いなくなるのは、何らかの外的要因が関与している可能性が高いですね」
「外的要因、例えばどのようなものですか?」とサラさんが続ける。
「考えられるのは三つ。第一に、環境の急激な変化。第二に、他の強力な魔物が現れ、スライムが捕食されている可能性。第三に、誰かが意図的にスライムを駆除している、というものです」
博士の言葉に、スタジオがざわつく。
「スライムがいなくなることで、森や街にはどんな影響がありますか?」とモリヒナさんが尋ねると、博士は少し深刻な表情になった。
「スライムは森の掃除屋のような存在です。彼らがいなくなると、腐敗した植物や動物の残骸が増え、結果的に害虫や病原菌が繁殖しやすくなる可能性があります。さらに、スライムを餌とする他の魔物にも影響が及び、連鎖的に生態系全体が変化するかもしれません」
博士の解説を聞きながら、俺はこの現象の深刻さを改めて感じた。
放送の最後に、博士は視聴者に向けてメッセージを送った。
「スライムは小さな存在ですが、生態系にとって重要な歯車の一部です。この現象を軽視せず、早急に原因を突き止め、対策を講じることが必要だと考えます」
モリヒナさんがまとめる。「スライムが消えた理由はまだわかりませんが、この現象が王国や街に与える影響について、今後も引き続き調査を行います」
放送後、俺たちはリオ博士と軽く挨拶を交わし、スタジオを後にした。
「博士、今日はありがとうございました!」
「いえいえ、こちらこそ面白い現象に関わることができて光栄です。また何かわかったら教えてくださいね」と博士は微笑みながら帰っていった。
「結局、原因はまだ謎のままですね」と俺が呟くと、サラさんが不安そうに頷いた。
「何か大きな異変の前触れじゃないといいけど…」
消えたスライム。その謎は、俺たちに新たな取材の道筋を示しているようだった。