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スライムの大量発生だと?!

今日は久々に取材だ。

しかも、今回は一人ではなくギルド班のサラさんと一緒に行くことになった。彼女は猫耳と尻尾を持つ獣人で、局内ではギルド関係の取材を専門にしている。俺はまだまだ新人だが、彼女の経験豊富なサポートがあれば何とかなるだろう。


「岩木さん、準備はできましたか?」サラさんが明るく声をかけてきた。彼女は今日も元気で、取材前でも全く緊張している様子はない。


「まあ、カメラもメモ帳も持ったし、大丈夫だと思うけど……」


今日は、スライムの大量発生が起こったという現場に向かう。スライムは異世界ではよく見かけるモンスターだが、今回は大量発生ということで町の住人たちが困っているらしい。俺たちはその様子を取材するために現場へ向かうことになった。


「よし、じゃあ行きましょう! 大量のスライムなんて、なかなか面白いニュースになりますよ!」サラさんは笑顔で先に立ち、俺もその後を追って局を出た。


現場に到着すると、予想以上にスライムが町外れの草原に広がっていた。遠くに見えるスライムはゆっくりと動き、数え切れないほどいる。近づきすぎると危険だが、遠目に見てもその数の異常さがわかる。


「わぁ……本当に大量発生してるんですね」サラさんも驚いたように周囲を見渡している。


俺はすぐにカメラを取り出し、スライムの様子を撮影し始めた。スライムそのものは脅威というほど強いモンスターではないが、これだけの数が一度に現れたとなると、町にとっては大問題だ。


その時、スライムと戦う冒険者たちの姿が目に入った。その中でも、特に目立つ一人の冒険者がいた。彼は鮮やかな剣さばきでスライムを次々と切り倒し、その速さと力強さは群を抜いていた。


「サラさん、あの冒険者、すごくないか?」俺はカメラを彼に向けて撮影を続けた。彼の動きは他の冒険者たちとはまるで違い、その場の状況を一変させるほどの存在感があった。


「本当ですね。あれだけのスライムを一人で相手にしてるなんて……彼、インタビューした方がいいかもしれません」サラさんの提案に、俺はうなずいた。その冒険者の戦いぶりは、スライムの大量発生というニュースをさらに引き立てる要素になるだろう。スライムの討伐が終わったところで、俺たちはその冒険者に声をかけてみることにした。


「お前たち、記者か?」彼は戦闘を終え、こちらに近づいてきた。冒険者の姿は長身で、鋭い目つきが印象的だったが、どこか親しみやすさも感じる男だった。


「エルドラ・ヴィジョン・テレビの記者です。俺は岩木レン、こちらはサラさんです」俺がそう自己紹介すると、彼は剣を背中にしまいながらニヤリと笑った。


「レノンだ。冒険者をやってる。お前ら、俺の戦いを見てたんだな?」


「ええ、とても見事な戦いでした。ぜひ、あなたの特集を組ませてもらえませんか?」サラさんが軽快にレノンに話しかける。


レノンはしばし考える素振りを見せたが、すぐに「いいぜ」と快諾してくれた。


「じゃあ、インタビューさせてもらってもいいですか?」と俺が尋ねると、レノンは肩をすくめながら言った。


「構わないさ。俺のことをテレビで流してくれりゃ、仕事が増えるかもしれないしな」こうして、スライム大量発生を取材するつもりが、冒険者レノンの特集を組むことになった。


俺とサラさんはカメラを回しながら、レノンにいくつか質問を投げかけた。


「スライムの討伐、かなり速かったですね。どうしてそんなにうまく戦えるんですか?」


「簡単さ。鍛え続けた結果だよ。冒険者になってから、毎日が戦いみたいなもんだ。スライムなんて、俺にとっちゃ軽い相手さ」


レノンは自信に満ちた表情で答える。彼の言葉には誇りと実力が伴っているのが、はっきりと伝わってきた。


「スライムの大量発生って、こんなに大規模なのは珍しいんですか?」サラさんが尋ねると、レノンは少し考えてから答えた。


「ああ、ここまでの規模はなかなかない。何か裏に原因があるのかもしれないが、それは俺の専門外だ。俺の仕事は倒すことだけだ」その言葉に、俺たちは彼のプロ意識を感じた。冒険者としての自信と覚悟が彼の言葉の端々に表れていた。


インタビューが終わり、レノンに礼を言った後、俺たちはスライムの様子をもう少しだけ撮影し、取材を終えることにした。


「思った以上にいい取材になりましたね、岩木さん」

サラさんがにっこりと微笑む。彼女の柔らかい表情に、俺も少し安堵した。

「ああ、レノンの特集もいい感じにできそうだし、良かったな」

局に戻ったら、早速レノンの特集をまとめて編集に回す予定だ。俺たちは満足感を抱きつつ、局に戻ることにした。


局に戻ると、ナベさんが早速映像を確認してくれた。彼は猿のような身のこなしで編集機材を操り、素早く映像を取り込んでいく。


「おお、いい映像撮ってきたな。これなら視聴率が期待できるぞ」ナベさんが笑顔で言う。俺はその言葉に少しほっとしつつ、原稿を書き始めた。


「スライムの大量発生は街に脅威をもたらしたが、冒険者レノンの活躍により、危機は迅速に鎮められた……」俺はレノンのインタビューを思い出しながら、彼の言葉を文章にまとめた。彼のプロフェッショナリズムと冷静な判断力が視聴者に伝わるよう、慎重に言葉を選びながら書き進める。


「原稿、できたか?」ナベさんが手を伸ばしてくる。


俺は完成した原稿を渡し、彼はすぐに編集作業に取りかかった。スライムの大量発生というニュースだけでなく、レノンの特集を加えることで、より視聴者の関心を引く内容になるはずだ。


その夜、ニュース番組でレノンの特集が放送された。モリヒナさんの落ち着いたナレーションに乗せて、スライム討伐のシーンとレノンのインタビューが次々と流れる。彼の剣さばきや自信に満ちた言葉が、画面を通じて視聴者に伝わったことだろう。


「……思ったより、うまくいったな」俺は椅子に座りながら、放送を見てホッと一息ついた。


サラさんと一緒に行った初めての取材は、どうやら成功だったようだ。これからもこんな風に取材が続くだろうが、少しずつ成長していかないと、サボってばかりじゃいられない。


「次も頑張るか……」そうつぶやきながら、俺は明日のために早めに休むことにした。


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