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報道の責任について…!

灰翼の襲撃事件が収束してから数日、街はようやく平穏を取り戻し始めた。報道局でも、灰翼に関する特集を終え、日常のニュースを取り上げる通常業務に戻っていた。


この日は、局内の会議室で灰翼関連の報道について振り返る討論会が開かれることになった。局員全員が集まり、それぞれの意見を交わしながら、報道の在り方を再確認する目的だ。


会議室には報道局のメンバー全員が揃い、緊張感が漂っていた。デスクのミカサさんが議長を務め、まずはこれまでの報道内容を振り返る。


「先日の灰翼関連の報道だが、視聴者からは多くの反響があった。一方で、内容がセンシティブすぎるという意見も少なからず寄せられた」とミカサさんが話を切り出す。


ミカサさんの話が終わると、王国班のバキさんがまず意見を述べた。


「正直、今回の報道は王国側にも緊張を生んだよ。灰翼が主張した“裏切りの証拠”なんて話が公に出たら、王国全体が揺らぐ危険がある。実際、王国軍内でも対応に追われたって話だ」


「でも、それは王国が隠してきた事実が原因じゃないですか?」と、ギルド班のサラさんが反論する。「私たち記者は真実を伝えるべきであって、それを隠すのは王国の責任じゃないですか?」


「言いたいことはわかるよ。でも、記者には記者なりの責任があるだろう。真実を伝えるだけで終わりじゃなく、その後の影響も考えなきゃいけない。それが記者としての使命なんじゃないか?」


バキさんの言葉に、会議室の空気が一瞬緊張感を帯びた。


「岩木、お前はどう思う?」とミカサさんが俺に問いかけてきた。


全員の視線が集まり、俺は少し考え込んだ後、口を開いた。


「正直に言うと、僕はどっちが正しいのかわかりません。でも、あの現場にいたからこそ、灰翼の言い分も聞くべきだと思ったし、それを視聴者に伝えることが重要だと思いました」


「でも、その結果、王国の一部の人たちに不安を与えたのも事実だよな?」とマキさんが追及する。


「はい。でも、だからこそ報道は必要なんです。真実を知ることで初めて、人は問題に向き合えるんじゃないかと思います」


その言葉に、会議室が一瞬静まり返った。


その後も議論は続き、それぞれが自分の立場から意見を交わした。


モリヒナさんは、アナウンサーとして視聴者と向き合う立場から話をした。


「私たちが伝える言葉一つで、視聴者の心が動く。それを忘れちゃいけないと思う。報道は事実を伝えるだけじゃなく、それがどんな影響を与えるかも考えなくちゃ」


レイラさんも静かに言葉を挟む。「でも、何を伝えるかを選ぶのも、報道の自由の一部よね。真実を隠すことで得られる平穏が、本当に正しいとは限らない」


「自由か、責任か…難しい問題ですね」とナベさんがボソリと呟き、みんなが頷く。


議論が一段落したところで、ミカサさんが全員を見渡しながら口を開いた。


「報道というのは、常に責任と自由の狭間で揺れるものだ。だが、私たちは視聴者に代わって真実を追い求める立場にいる。だからこそ、どんな時でも誠実であるべきだ」


その言葉に、全員が静かに頷いた。


「今回の報道で課題が見えたのも事実だ。次に同じような状況があった時、どうするべきかを今から考えておくのも、我々の仕事だろう」


討論会が終わり、俺たちはそれぞれの持ち場に戻った。


「岩木くん、今日は意外としっかり意見を言えてたじゃない?」とサラさんがからかうように笑う。


「いや、あれでも結構緊張してたんですよ」と苦笑いしながら答える俺。


報道局内は日常を取り戻しつつあるが、いつまた新たな事件が起きるかわからない。俺たちはその時に備え、日々の業務に励むしかない。


次の大きなニュースは、きっとすぐそこまで来ている。

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