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裏切りの証拠…!

灰翼の残党が次に狙うのは、街の中心部に位置する「王国評議会」。この施設は王国の政策や法律を議論する場であり、重要な文書や記録が保管されている。もしそこが襲撃されれば、王国全体の基盤が揺るがされるだろう。


俺たち取材班は、この評議会を守るために動き出した王国軍に同行し、灰翼の動きを追うことになった。


評議会に到着すると、すでに王国軍が周囲を警備していた。シラユ隊長を中心に、兵士たちは緊張した様子で配置についている。


「この場所にいると、不思議な圧迫感がありますね」と俺が呟くと、サラさんが頷く。


「評議会は王国の頭脳みたいな場所だからね。ここが狙われるってことは、灰翼の連中、本気で王国を混乱させるつもりなんだろうね」


「お前たちはここで目立たないように取材しろ」とシラユ隊長が鋭い目で指示を出す。


「了解しました」と答え、俺はカメラを準備し、サラさんとともに兵士たちの動きを記録し始めた。


午後になると、評議会の周囲で妙な気配が漂い始めた。街路の影に隠れるようにして動く黒いフードの人物たち――灰翼の残党たちだ。


「隊長、あれを!」と兵士が声を上げる。


シラユ隊長が素早く状況を把握し、「全員配置につけ!奴らが動き始めた!」と指示を飛ばした。


一方で、俺とサラさんもその様子をカメラに収める。


「岩木さん、しっかり撮って!」


「任せて!」


その時、灰翼の一人が突然評議会の正門に向かって煙玉を投げつけた。煙が立ち込め、視界が悪くなる中、複数の影が建物内に侵入していく。


兵士たちがすぐに応戦し、建物内で戦闘が始まった。剣と盾がぶつかる音、怒声や叫び声が響き渡る中、俺たちは安全な位置を確保しながらその様子を撮影した。


「彼らの目的は何なのかしら?」とサラさんが呟く。


「きっと文書か、あるいは評議会の記録が狙いでしょうね」と俺は答える。


建物内では、灰翼のリーダー格と思われる男が叫び声を上げていた。「王国の裏切りの証拠を暴き、真実を知らしめるのだ!」


その言葉に、兵士たちも一瞬動揺を見せる。しかし、シラユ隊長の冷静な指揮が兵士たちを支え、灰翼の残党たちは次第に追い詰められていった。


戦闘が終わる頃、建物内から王国軍が一冊の古びた本を回収してきた。それは灰翼が狙っていた「王国の秘密」が記された文書だった。


「これが奴らの言う裏切りの証拠か…」とシラユ隊長が本を開き、その内容を確認する。


そこには、10年前の内乱時に王国軍が灰翼を切り捨てた過程や、王国上層部が一部の反乱勢力と裏取引を行っていた可能性が示唆されていた。


「こんなものが出てきたら、王国は持たないぞ…」と兵士の一人が呟く。


シラユ隊長は険しい表情で本を閉じ、「この内容が事実なら、王国の基盤が揺らぐ可能性がある」と語った。


報道局に戻った俺たちは、この件をどう伝えるべきか議論を重ねた。


「灰翼の残党が何を狙っていたか、それを正確に伝えるべきよ」とサラさんが主張する。


「でも、この本の内容が公に出たら、王国全体が混乱する可能性もある」とバキさんが懸念を示す。


俺は意を決して言った。「でも、それが真実なら、俺たちには伝える義務があると思います。報道って、そういうものじゃないですか?」


最終的に、モリヒナさんの判断で、この本に関する情報は慎重に取り扱いながら、灰翼が評議会を襲撃した事実を報じることになった。


夜の「アルダNEWS」では、評議会での襲撃と灰翼の狙いについて特集を放送した。


「今回の事件で、灰翼の残党が狙っていたのは、評議会に保管されている重要な文書でした。その内容については現在、王国軍が精査中です」とモリヒナさんが進行する。


視聴者には、灰翼が単なる反乱勢力ではなく、王国の裏側にある何かを暴こうとしている存在であることが伝わった。


放送が終わり、俺は報道局の屋上で夜空を眺めていた。


「真実って、本当に人を救うのかな…」と呟く俺に、いつの間にかサラさんが隣に来て笑った。


「救うこともあれば、傷つけることもある。でも、それでも知りたい人がいるから、私たちはそれを伝えるのよ」


その言葉に少しだけ肩の力が抜けた。


灰翼の残党たちはまだ完全に壊滅したわけではない。彼らの背後にある「裏切りの証拠」は、王国をどう変えていくのだろうか――物語は、さらに深い闇へと進んでいく予感がしていた。

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