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裏切り裏切られ…?

灰翼の残党が口にした「10年前の事件」。

それが何を意味するのか、報道局内でも議論が巻き起こっていた。


「王国が灰翼から何かを奪ったって言ってましたよね?それが一体何なのか…」と俺が言うと、バキさんが腕を組みながら考え込む。


「10年前って、確か王国の内乱が終結した直後だよな。その時に色々と闇に葬られた話があるって聞いたことがある」


「闇に葬られた…?」


「王国軍の一部隊が解散させられたとか、反乱を支援していた勢力が粛清されたとか、噂話の域を出ないけどな」


この話を聞いた俺は、直接シラユ隊長に話を聞いてみるべきだと考えた。


翌日、王国軍を訪れた俺は、シラユ隊長に取材を申し込んだ。最初は渋っていた彼だったが、「10年前の事件を正しく伝えることが王国の未来に繋がる」と説得すると、重い口を開いてくれた。


「10年前、王国は内乱の真っただ中にあった。その混乱の中で、灰翼の部隊は王国軍の一部隊として、反乱軍の鎮圧に従事していた」


「じゃあ、彼らは元々王国に仕えていたんですか?」


「ああ。しかし、鎮圧が終わる頃、灰翼は任務を超えた行動を取り始めた。反乱軍だけでなく、その支援者と見なされた民間人までも処刑し、財産を奪うような行為を繰り返していたんだ」


俺はその言葉に息を呑んだ。


「その行為は当然、王国の名誉を傷つけるものだった。王国は灰翼の行動を制止しようとしたが、彼らは命令に従わず、逆に独立した勢力として動き始めた。最終的に、灰翼は反乱軍と変わらない存在とみなされ、壊滅させられることになった」


「それが、彼らが『奪われた』と言っていた理由なんですね…」


シラユ隊長は険しい表情で頷いた。「彼らは、王国が自分たちを裏切ったと考えている。だが、彼らの行いが正しかったとは到底言えない」


さらに真相を掘り下げるため、俺たちは王国の記録室に向かった。ここには、王国の歴史や内乱に関する記録が保管されているという。


「本当に見せてくれるのか?」とバキさんが半信半疑で尋ねると、シラユ隊長が小さく笑った。


「完全には無理だが、一部の記録なら許可が下りた。だが、これは特別な例だと思え」


記録室の中は、古びた本や文書が所狭しと並んでいた。俺たちは内乱に関する資料を必死に探し、その中に「灰翼」という名前が記された文書を見つけた。


「これだ!」と俺が声を上げる。


文書には、灰翼がどのように反乱軍鎮圧に貢献したか、そしてその後どのように堕落していったかが詳細に記されていた。


「これは…」


その中には、灰翼が民間人に行った虐殺や略奪の記録も含まれており、彼らの行為が王国軍によって断罪されるに至った理由が鮮明に描かれていた。


一方で、灰翼の残党から押収された文書も、王国軍の手によって提出されていた。


その内容は、王国軍が灰翼を利用し、反乱軍を制圧した後に切り捨てたという彼らの視点が記されていた。


「これを見ると、灰翼の言い分にも一理あるように思えるな」とバキさんが呟く。


「王国が完全に正しかったとは言えないんですね…」


俺たちはこの両方の記録を照らし合わせ、報道として伝えるべき真実を模索した。


夜の「アルダNEWS」で、俺たちは10年前の事件に関する特集を放送した。


モリヒナさんが冷静な声で進行する。「10年前の内乱で重要な役割を果たした灰翼という部隊が、最終的に王国軍によって解散させられた背景には、複雑な事情が存在していました」


サラさんが続ける。「王国の平和のために戦った彼らが、なぜ王国軍からも敵視される存在になったのか。その真相は、双方の記録から浮かび上がってきました」


両者の記録を公平に伝えることで、視聴者にもその複雑さを感じてもらう内容となった。


放送を終えた後、俺はシラユ隊長と最後の会話を交わした。


「灰翼の問題はこれで終わりではない。残党たちはまだ完全には捕らえられていないし、王国への復讐心も消えてはいないだろう」


「それでも、彼らの行動を正当化するのは難しいですね」と俺が言うと、シラユ隊長は深く頷いた。


「だが、報道としてこうして真実を伝えることが、少しでも王国の未来を良くするきっかけになるだろう。お前たちには感謝している」


彼の言葉に、俺は少しだけ報道記者としての自信を得た気がした。

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