突撃…!
灰翼の残党が王国北門を狙った攻撃を計画していることが明らかになった翌日。報道局内は緊張感に包まれていた。
「王国軍が近々北門周辺に部隊を派遣するらしい」と、デスクのミカサさんが情報を伝える。
「今回の件、俺たちも追わなきゃいけないんですか?」と、俺は正直な感想を漏らした。
「当然だろう。こういう時こそ報道局の出番なんだから」と、ミカサさんは断言する。
今回の取材は、灰翼の本拠地への潜入を再び試みる王国軍に同行する形となった。俺たち取材班としては、俺とサラさん、そして王国軍班のマキさんが加わることになった。
取材班は北門近くの広場に到着した。そこでは、王国軍の兵士たちが作戦の準備を進めていた。甲冑の音や指示を出す声が飛び交い、緊張感が肌を刺すようだった。
「岩木さん、緊張してる?」とサラさんが尋ねてくる。
「そりゃしますよ。こんな危険な現場にいるんですから」と俺が答えると、サラさんは笑った。
「でも、そういうところで冷静にカメラを回すのが記者の役目でしょ?」
その言葉に背中を押されるような気持ちで、俺はカメラを構えた。
シラユ隊長率いる部隊が、いよいよ灰翼の本拠地とされる地下水路への突入を開始した。俺たち取材班も、その様子を記録するため慎重に後を追った。
水路内は湿っぽく薄暗い。足元の水音が妙に大きく響き渡る中、兵士たちの動きが慎重になっていくのがわかる。
「聞こえるか?」と、マキさんが囁く。
耳を澄ますと、奥からかすかな声が聞こえてきた。
「奴らだ。前方にいる」
兵士たちが静かに進む中、突然「ここまでだ!」という怒声とともに灰翼の残党たちが姿を現した。
一瞬の静寂の後、戦いが始まった。矢と剣が交差し、甲冑がぶつかる音が水路内に響き渡る。
「岩木さん、カメラは回して!でも危険だから私の後ろに!」とサラさんが声を張り上げる。
俺は必死にカメラを回しながら、戦闘の様子を記録していたが、突然背後から灰翼の一人に捕まってしまった。
「お前ら報道局の人間が余計なことをするから…!」
彼の怒声と共に首元に刃が押し付けられる。その瞬間、シラユ隊長が振り向き、冷静に指示を出した。
「人質を取るとは見苦しいな。だが、お前たちの計画はここで終わりだ」
そして、灰翼の男が隙を見せた瞬間、マキさんが素早く剣を振り、俺を解放してくれた。
戦闘が終わり、灰翼の残党は次々と捕縛された。その中に、今回の計画を指揮していたリーダー格の男がいた。
「お前たちは王国を崩そうとしているのか?」と、シラユ隊長が詰問する。
男は嘲笑を浮かべながら答えた。「崩そうとしている?違うな。我々はただ取り戻そうとしているだけだ。王国が我々から奪った全てを」
「奪った…?」
「10年前のことを思い出せ。お前たちが我々に何をしたかをな」
シラユ隊長の表情が険しくなる。灰翼の復讐心は、10年前の王国の行動に起因しているらしいが、その詳細はまだ明らかになっていない。
取材を終え、報道局に戻った俺たちは、夜の「アルダNEWS」で今回の事件を報じた。戦闘の映像や灰翼のリーダーの言葉を交えながら、視聴者に事件の全容を伝える。
モリヒナさんが落ち着いた声でまとめる。「灰翼の残党は王国軍によって捕縛されましたが、彼らの背後にある10年前の事件について、まだ詳細は明らかになっていません。今後の調査が重要です」
放送後、局内では「迫力のある報道だった」と多くの反響が寄せられた。
「岩木さん、大丈夫だった?危なかったよね」とサラさんが心配そうに話しかけてくる。
「まぁ、マキさんに助けられましたけどね。これでまた危険な目に遭うのはごめんですよ」と俺は苦笑いした。
一方で、今回の取材で見えた「10年前の事件」という謎が頭から離れなかった。
「次はこれを掘り下げていくことになるんだろうな…」
そう思いながら、俺はノートに残ったメモをじっと見つめていた