潜入報道…?
灰翼の残党による誘拐事件を報道した翌日、俺たち報道局には多くの視聴者から感想や質問が寄せられていた。王国の安全に対する懸念が広がる中で、報道局の使命はさらに重要なものになっている。
そんな中、シラユ隊長から連絡が入り、王国軍が灰翼の残党について新たな情報を掴んだという。俺とバキさんは、さらなる取材のため王宮へ向かうことになった。
王宮の軍事会議室に通された俺たちは、シラユ隊長の説明を聞いた。
「先日の件で逮捕した灰翼の残党たちから、新たな情報を得た。どうやら、奴らの本拠地は街の地下水路に隠されているらしい」
「地下水路ですか?」と俺が驚きの声を上げる。
「そうだ。元々は王宮と外界を繋ぐ緊急用の逃走経路として作られたものだが、今では使われていない。その場所を奴らが利用している可能性が高い」
さらに、シラユ隊長は今回の事件が王国全体に及ぼす危険性について語った。
「灰翼はただの誘拐犯ではない。奴らは王国への復讐を目的とし、各地で不穏な動きを見せている。街の平和を守るためにも、彼らの計画を暴く必要がある」
俺とバキさんはその話を聞き、すぐに現地取材の準備を整えた。
夜になり、俺たちは王国軍の案内で街の地下水路へと向かった。水路の入り口は草木に覆われ、ひっそりと隠れるように存在していた。
「ここが入り口だ。気をつけろ、いつ襲われるかわからない」と、シラユ隊長が小声で警告する。
俺はカメラを抱えながら、慎重に足を進めた。水路の中は薄暗く、ひんやりとした空気が肌を刺すようだった。
「おい、岩木。音を立てるなよ」とバキさんが後ろから注意してくる。
「わかってますよ…でも、こんな場所に本当に奴らが…」
その時、遠くから小さな光が見えた。誰かが灯りを持って移動しているようだ。
「見つかったら終わりだぞ。隠れるんだ」と、シラユ隊長が手を振る。
俺たちは壁に身を寄せながら、様子を伺った。
その場で見た光景は衝撃的だった。灰翼の残党たちは、大きな地図を囲んで何かを議論しているようだった。
「次の作戦は、王宮北門を狙う。それで奴らに打撃を与えられるはずだ」
「それだけじゃ足りない。王国の重要な拠点を一気に叩く必要がある」
その言葉を聞き、俺は思わず息を呑んだ。彼らは単なる犯罪者ではなく、王国そのものを揺るがそうとしているのだ。
「これ以上は危険だ。引き上げるぞ」と、シラユ隊長が小声で指示を出す。
王国軍の護衛を受けながら、俺たちは無事に水路を脱出した。そして、報道局に戻り、今回の取材で得た映像と情報をまとめた。
「灰翼の残党が地下水路を拠点に、王国への大規模な攻撃を計画していることが判明しました。この脅威に対し、王国はどのように対応するのか――今後の動きが注目されます」と、モリヒナさんが夜の「アルダNEWS」で伝えた。
視聴者からは不安の声が多く寄せられ、王国の平和が脅かされている現実が浮き彫りになった。
放送終了後、シラユ隊長から連絡が入った。
「今回の件で王国軍は動き出す。だが、奴らを完全に壊滅させるには時間がかかるだろう。報道局としても、引き続き情報収集を頼みたい」
俺はその言葉に頷きつつも、内心では不安が拭えなかった。灰翼の動きはこれで終わらないだろう――むしろ、これからが本当の戦いなのかもしれない。
「また危険な取材になりそうですね」と呟く俺に、バキさんが笑って言った。
「危険なのが嫌なら、記者なんて辞めるんだな。でも、お前は辞めないだろ?」
その言葉に俺は苦笑しながら答えた。
「そうですね。どうせなら最後まで付き合いますよ」
こうして、俺たちは次なる取材に備え、新たな局面を迎えることとなった。