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灰翼の守護者…?

観光客誘拐事件の一件で、王国軍のシラユ隊長から「布切れ」にまつわる情報を得た俺たち。だが、その布切れが何を意味するのか、そして今回の事件にどのように関わっているのかは依然として謎のままだった。


報道局では、この事件の背後にある真相をさらに掘り下げるため、俺とバキさんの二人で王国内部の情報を追い、事件の組織的背景を探ることになった。


「これ以上の情報はないんですか?」


再び王国軍を訪れた俺たちは、シラユ隊長に直接尋ねた。布切れに描かれた模様は、10年以上前に使われていた旧王国軍の紋章であることが判明しているが、なぜそれが今回の誘拐事件と関わっているのか、明確な答えは出ていない。


「現役の部隊でこの紋章を使っている者はいない。だが、10年前に廃止された部隊の一つが、この紋章を象徴としていたのは確かだ」


「廃止された部隊?」と、バキさんが鋭く食い込む。


シラユ隊長は少し考えた後、重い口を開いた。


「その部隊は『灰翼の守護者』と呼ばれていた。表向きは王国を守る精鋭部隊だったが、内部で腐敗が進み、一部の者たちが独自の目的で動き始めたため解散を余儀なくされた」


「独自の目的、ですか?」と俺が尋ねる。


「詳細は知らされていない。だが、その解散に伴い、部隊の一部は失踪し、その後の行方は分からないままだ」


俺たちはその話を聞き、事件の背後にその失踪した者たちが関与している可能性を感じ始めた。


その日の午後、バキさんが街で情報屋と連絡を取る手配をしてくれた。彼は城下町で長年活動している人物で、王国内の裏事情にも精通しているらしい。


「やぁ、バキさん。久しぶりだな」と現れたのは、猫の獣人で、薄汚れたコートを羽織った細身の男だった。


「グレイ。今回の件について、何か知ってることはないか?」


グレイと呼ばれた情報屋は、じっと俺たちを見つめた後、静かに話し始めた。


「お前たちが追っているのは『灰翼』の残党だろう。実は最近、奴らが街の外れにある廃墟を拠点にしているという噂を聞いた」


「廃墟?」


「あぁ。10年前の事件以来、奴らは表舞台に出ることはなかったが、今回の件で動きが活発になり始めた。何かを計画しているのかもしれない」


この情報を聞き、俺たちはその廃墟を訪れることを決めた。


翌朝、俺とバキさんは問題の廃墟に向かった。城外にあるその場所は、かつて兵士たちの訓練場として使われていたというが、今は荒れ果て、侵入者を拒むかのように不気味な空気が漂っていた。


「ここだ。あまり目立つ行動はするなよ」とバキさんが小声で警告する。


「わかってます。でも、こんな場所で何が…」


廃墟の中に入ると、かすかな声と足音が聞こえてきた。誰かがこの場所を利用しているのは間違いない。


俺は慎重にカメラを回しながら進むと、薄暗い部屋の中で、誘拐された女性が椅子に縛り付けられているのを見つけた。


「岩木、あれだ!」とバキさんが叫ぶ。


「待ってください、ここで見つかるわけには…」


その瞬間、背後から低い声が響いた。


「貴様ら、何者だ?」


振り返ると、黒いフードを被った男たちが俺たちを取り囲んでいた。


「くっ…逃げ場がないか」


俺たちは男たちに拘束され、武器やカメラも没収されてしまった。しかし、その場で見聞きした情報が衝撃的だった。


男たちは、かつて王国軍の一員だった者たちであり、灰翼の残党だった。彼らはこの混乱を利用し、王国への復讐を計画しているらしい。


「報道局の人間か…。お前たちがこの計画を邪魔するなら、生かしてはおけない」


彼らのリーダーらしき男がそう告げた時、廃墟の外から突然大きな音が響いた。


「何だ…!?」


外を確認しに行った男たちの背後から、突然王国軍の兵士たちが突入してきた。


「シラユ隊長…!」


「全員確保しろ!逃がすな!」


俺たちを守るために出動した王国軍が、灰翼の残党たちを制圧し始めた。


事件後、俺たちは王国軍によって無事保護され、報道局に戻ることができた。そして、今回の事件の全容を夜の「アルダNEWS」で伝えた。


モリヒナさんが落ち着いた口調で進行し、俺が撮影した映像や取材内容が視聴者に届けられる。


「この事件は、かつて解散した王国軍の部隊が関与していた可能性が高いことが判明しました。しかし、王国軍の迅速な対応により、さらなる被害を防ぐことができました」とサラさんが締めくくった。


放送を終えた後、俺はシラユ隊長に再び礼を言いに行った。


「助けていただき、ありがとうございました。でも、まだ全てが解決したわけじゃないですよね?」


「ああ。灰翼の残党の全容を掴むには、これからも調査が必要だ。だが、お前たちの報道が役に立ったのは確かだ」


シラユ隊長のその言葉に、俺は少しだけ誇らしい気持ちになった。そして、これからも事件を追う覚悟を新たにするのだった。

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