カレンさん特集…?!
カレンさんのお店での新メニュー試食をきっかけに、「アルダNEWS」の特集として彼女の料理を取り上げることになった。
街の特産品を活かした料理や、カレンさんの料理に込める思いを伝える内容だ。今日は取材チームとして、モリヒナさん、俺、そしてカメラマンとして外部から来たセキさんの三人でカレンさんのお店を訪れる。
取材に出発する前、報道局の入り口で待ち合わせていた俺とモリヒナさん。そこに、一人の男性が現れた。少し無造作な黒髪に、肩からぶら下げた大きなカメラバッグが目を引く。
「岩木さん、モリヒナさんですね?今日カメラ担当を任されたセキです。よろしくお願いします」
セキさんは、この世界では珍しい人間で、普段はフリーランスのカメラマンとして様々な撮影をしているらしい。報道局のロケ撮影の際にはたまに呼ばれることがあるそうだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします。撮影はお任せします!」と俺が言うと、セキさんは軽く頷いてカメラバッグを持ち上げた。
「報道の仕事は慣れてますから安心してください。それにしても、食べ物を撮るのって難しいんですよね。美味しさを伝えるのは挑戦だ」
その言葉に、俺も少し不安になったが、セキさんの落ち着いた態度に頼もしさも感じた。
「大丈夫ですよ、セキさんならうまく撮ってくれるはずです」と、モリヒナさんが微笑む。
カレンさんのお店に到着すると、彼女は嬉しそうに迎えてくれた。
「皆さん、本当に来てくれてありがとう!取材なんて初めてだから、ちょっと緊張してるけど…頑張るわね」
「大丈夫ですよ。カレンさんの魅力とお料理をしっかり伝えられるようにしますから」と、モリヒナさんが優しく励ます。
まずはカレンさんへのインタビューからスタートすることになり、彼女の紹介とお店の特徴を語ってもらう。
モリヒナさんがインタビュアーとして質問を進める。
「カレンさん、この新メニューはどういうきっかけで生まれたんですか?」
「地元の食材をもっと活かしたいと思って。それに、この街に来てくれる観光客にも、もっとこの土地の味を楽しんでもらえたら嬉しいなって」
カレンさんは少し恥ずかしそうにしながらも、料理に込めた思いを語ってくれた。
「料理は、誰かの心を温めるもの。だから、地元の人にも観光客にも笑顔になってもらえる料理を目指してるの」
その言葉に、俺もセキさんも頷いた。
インタビューが終わると、次はカレンさんが料理を作るシーンを撮影する。セキさんが素早く機材をセットし、カメラを構えた。
「湯気が上がるタイミングが勝負です。カレンさん、ここで手を少し止めてください…そう、いいですね!」
セキさんの指示にカレンさんが従い、調理の一つ一つが美しい映像に収められていく。カレンさんの手元や素材の鮮やかさ、そして湯気が立ち上る瞬間など、どれも丁寧に撮影されている。
「すごいな…プロの技って感じだ」と、俺が感心して呟くと、セキさんが振り返って少し笑った。
「映像は細かい工夫の積み重ねです。でも、料理の美味しさを伝えるのが一番難しいんですよね。後は編集に期待しましょう」
その謙虚な言葉に、俺も信頼を深めた。
次はカレンさんが新メニューを提供し、モリヒナさんが食リポを担当するシーンだ。
運ばれてきたのは、「ガーラフルーツのタルト」と「フィローナリーフの包み焼き」。どちらも、この街の特産品を活かした魅力的な料理だ。
モリヒナさんはまず、ガーラフルーツのタルトを一口食べる。
「ん…!まず口に入れた瞬間、ガーラフルーツの甘酸っぱさが広がります。そして、このタルト生地がサクサクしていて、一緒に食べると程よい酸味と生地の香ばしさが絶妙にマッチしてますね」
セキさんはそんなモリヒナさんのリポートをカメラで追いながら、「素晴らしい表情です。そのままもう一口どうぞ」と、軽く指示を出す。
「これ、紅茶やハーブティーと一緒に出せば、お茶の時間にぴったりですね!」とモリヒナさんが微笑むと、カレンさんも嬉しそうに頷いた。
次にフィローナリーフの包み焼きを口に運ぶ。
「わあ、フィローナリーフの香草の香りが広がりますね。中の肉と野菜もジューシーで、食材の旨味がしっかり感じられます。香ばしさと食べ応えのある味わいで、メインディッシュとしても最高です」
「私が撮ってても、お腹が空いてきますね」とセキさんが笑い、俺も思わず笑った。
取材の最後に、カレンさんの料理を食べたことがある地元の人々にも話を聞くことになった。街の広場で声をかけると、多くの人がカレンさんの料理について熱く語ってくれた。
「カレンさんの料理は、どれも愛情が詰まってる感じがするんですよね。特にあのタルトは最高です!」
「観光で来た時に初めて食べたんだけど、また絶対食べたいと思って戻ってきました!」
地元住民も観光客も口々に絶賛しており、カレンさんのお店がいかに愛されているかがよくわかった。
夜の「アルダNEWS」で今回の特集が放送されると、局内でも好評だった。
「料理の映像がすごく綺麗だったわね」とモリヒナさん。
「カレンさんの料理とお店の魅力がしっかり伝わってましたね」と俺も嬉しそうに答える。
セキさんにも報告すると、「それは良かったです。また呼ばれたらよろしくお願いします」と軽く手を振り、帰っていった。
こうして、カレンさんのお店を紹介した特集は大成功を収めた。