久しぶりの城外取材…?
今日は、ベテラン遊軍記者のサワさんと一緒に城外の事件を取材することになった。
城外に出るのは久しぶりだが、以前「影」に囚われた際の記憶が頭をよぎり、なんとも言えない緊張感を感じていた。
事件の内容は「最近、城外の村で頻発する物資の盗難」。原因はまだ特定されておらず、住民の間で不安が広がっているという。
「城外の取材は準備が命だ。何が起きても対応できるように備えておくんだぞ」と、サワさんが自分の荷物を背負いながら言う。その荷物には、メモ帳やカメラの他に、非常食や簡単な治療道具まで揃っている。
「そんなに準備するんですか?ただの盗難事件の取材ですよね?」と俺が尋ねると、サワさんは豪快に笑って答えた。
「城外じゃ、『ただの事件』なんてことはありえねぇ。それに、取材で帰れなくなるのはごめんだろ?」
その言葉に、かつて「影」に囚われた記憶がフラッシュバックし、背筋が寒くなる。それでも「今回はサワさんがいる」と自分に言い聞かせながら、荷物を詰め込んだ。
城外の村に到着すると、村の住民たちの顔には疲れと不安が浮かんでいた。盗難の被害は深刻で、村の物資が次々と狙われているという。村長に話を聞き、事件の詳細を掘り下げる。
「最近、夜になると物資がなくなるんです。主に食料や医薬品が狙われていて…。村の人間は怖くて夜は外に出られません」
「警備を強化したり、見張りを立てたりしていないんですか?」とサワさんが尋ねる。
「ええ、それでも被害は止まりません。何か力のある者が絡んでいるのかもしれません…。どうか原因を突き止めてください」
村長の切実な言葉に、俺たちは調査を進めることを決意する。
村人から聞いた目撃情報をもとに、俺たちは物資が盗まれる倉庫の近くで張り込みを始めた。サワさんのアドバイスで物音を立てないように注意しつつ、物陰に隠れて待機する。
深夜、足音と物音が聞こえ、倉庫の扉が開く音がした。そこには、顔を隠した数人の男たちが物資を運び出している姿があった。
「盗賊か…しかも、組織的な動きだな」とサワさんが小声で言いながら、カメラを構えた。俺も慌ててカメラを取り出し撮影を始めるが、緊張で手が震え、ピントがうまく合わない。
「深呼吸しろ」とサワさんが囁き、俺はなんとか平静を保って撮影を続ける。
しかし、盗賊の一人がこちらの気配に気づいたのか、「誰だ!」と叫びながら倉庫の方へ向かってきた。サワさんが即座に「逃げるぞ!」と指示し、俺たちは暗闇の中を全力で走り出す。
俺は途中で足を滑らせ、転びそうになるが、サワさんが力強く腕を掴んで引き起こしてくれた。
「しっかりしろ、倒れるな!」と彼の声に背中を押され、なんとか走り続ける。
やがて盗賊の追跡から逃れると、俺は息を切らしながら地面に倒れ込んだ。
「危なかった…。サワさんがいなければどうなっていたか…」
「取材ってのは時に命がけだ。だが、こういう現場でしか掴めない情報もある。だから逃げる時もメモ帳とカメラだけは絶対に離すな。それが俺たち記者の武器だ」
彼の言葉に胸を打たれ、自分の未熟さを改めて痛感する。
翌朝、撮影した映像と調査結果を村長に報告し、すぐに冒険者ギルドと王国軍に連絡を取ってもらう手配を進めた。盗賊の存在が明らかになったことで、村の安全確保に向けた動きがようやく始まった。
帰り道、サワさんがふと笑いながら言った。
「どうだ?久々の城外は楽しめたか?」
「楽しむ余裕なんてありませんでしたよ…。でも、サワさんがいてくれたから何とかやれました」
「最初はそれでいいさ。だが、そのうち自分の足で立つ時が来る。次はお前が誰かを助ける側になるかもしれんぞ」
その言葉に、「報道は単なる記録ではない」という重みを感じました。