王国軍の取材…?
ギルドマスター選挙特番が終わり、今日は王国軍の軍隊基地を取材することに。
軍隊班の担当であるマキさんが同行してくれるが、王国軍の現場に初めて出向く俺は少し緊張している。
「軍の取材では、敬意を忘れずに。特に訓練中の兵士には絶対に邪魔にならないように」と、出発前にマキさんから念押しのアドバイスを受けた。
軍関連の取材は他とは違い、ルールや礼儀に気を配る場面が多い。緊張しつつも、マキさんの経験豊かなサポートを心強く感じながら、訓練基地へと向かう。
基地に着くと、兵士たちが整然と訓練に励む様子が広がっていた。大声で指示を飛ばす教官や、息を合わせて動く兵士たちの迫力に、俺は思わず圧倒される。
「見ているだけじゃなく、必要な場面でメモを取るんだ」と、冷静に指示を出すマキさんに促され、俺も必死でノートに目の前の光景を書き込む。軍の厳しさと、兵士たちの動きに圧倒されながらも、なんとか取材を進めていく。
訓練の見学を終えた後、俺たちは軍幹部へのインタビューへ向かう。幹部は「王国の平和を守るための新たな防衛計画」について説明してくれるが、話が込み入ってきて、少し戸惑ってしまう。
そんな中、マキさんが素早く質問を重ね、幹部から重要なポイントを引き出していく。幹部の言葉を丁寧に深掘りし、軍の取り組みの本質を引き出していく手際の良さに、俺もプロの仕事を目の当たりにし感心するばかりだった。
その後、俺たちは軍の最新装備の展示場に向かう。魔法を応用した防具や新型の戦闘道具など、異世界らしい装備に目を見張る。マキさんが鋭い質問で装備の特性や利便性を引き出し、俺もその言葉をメモしていく。
その時、マキさんがふと呟くように言った。
「お前、昔『影』に捕まって軍に助けられたんだろう?」
思いがけない言葉に、俺は驚きながらも頷いた。
「ええ、以前、影に囚われた時に助けてもらいました。王国軍がいなければ、今頃どうなっていたか…」
その時のことを思い出す。以前、影に囚われ、どれほどの時間が経ったのかも分からない状況で、薄れゆく意識の中で助け出してくれたのが王国軍だった。兵士たちが迷わずに俺を救出し、命の危険にさらされている中でも、迷わず行動してくれたことは今も鮮明に覚えている。
「王国軍がいてくれたおかげで、こうしてまた記者として働けてるんです。だからこそ、彼らの仕事の重さは、実感してます」
マキさんは静かに頷き、「あの時お前を助けたのは、こうした訓練を積み重ねた兵士たちだ。お前の命を救ったのは、彼らの日々の努力の成果だ」と、まっすぐな目で言った。その言葉に、俺も胸が熱くなる。
取材を終えようとしていたその時、不意に轟音が響き、衝撃で少しよろめく。訓練中の魔法が暴発してしまったらしく、混乱が広がる中で俺も避難を促されるが、焦りで出口の方向がわからなくなりかけてしまう。
「こっちだ!」と、マキさんが素早く肩を掴み、誘導してくれる。彼の判断力で無事に安全な場所に避難でき、俺は胸を撫でおろした。
「こういう場所では判断が遅れるな。迷えば命取りだ」
「す、すみません…助かりました!」
「あの時と同じだな。危ない時は、迷わず頼れ」とマキさんが軽く笑う。その姿に、以前軍に助けられた時の恩義が改めて蘇り、感謝の気持ちでいっぱいになる。
取材を終えて報道局に帰る道すがら、マキさんがふと問いかけてきた。
「今日の取材で見た兵士たちをどう思った?」
一瞬言葉に詰まりながらも、俺はゆっくり答えた。「軍人の使命感や団結力はすごいですね。自分ももっと、報道の使命に向き合うべきだと感じました。自分にできることは少ないかもしれないですが…」
「お前にできることをしろ。それが奴らを救う力になる」とマキさんが軽く肩を叩いてくれた。その言葉が、胸の奥にしっかりと響いた。