三人でお出かけ…!
ギルドマスター選挙の特番も無事終わり、今日は待ちに待った休日だ。特番の準備でバタバタしていたから、こうやって少し気持ちを休められるのはありがたい。
今日はサラさんとモリヒナさんと一緒に、近くの公園でピクニックをすることになっている。いつもは職場での付き合いだから、こうして遊びに出かけるのは新鮮だ。
「そういえば、バキさんも誘ったんだけどさ、ちょうど旅行に行くんだってさ」
「へえ、バキさんも誘ってたんだ。旅好きだからね、きっとどこか冒険地帯でも回ってるのかもね」サラさんが笑いながら答える。
「確かに。でも、バキさんの話は後でにして、今日は三人で楽しもう!」と、モリヒナさんがにっこり微笑む。
公園に到着し、木陰にレジャーシートを広げて三人でお弁当を並べる。広々とした芝生に青空、のんびりとした時間が流れている。
「じゃーん!私、がんばってフィローナ巻きを作ってきたの!」とサラさんが明るく言いながら、きれいに巻かれた一口サイズの異世界風巻き寿司を披露する。フィローナ巻きには、この世界の特産であるフィローナ葉やスパイスの効いた焼き肉が巻かれていて、彩りも鮮やかだ。
「サラさん、これすごくおいしそうだね!巻き方もきれいだし、さすがだな」
俺が感心していると、モリヒナさんも自分の手作り料理を披露してくれた。
「私はガーラフルーツのピクルスと香草入りのマデュカのパイを作ってきたわ。軽くつまめるもののほうがピクニックにはぴったりでしょ?」
見ると、異世界の甘酸っぱい果物・ガーラフルーツを漬け込んだピクルスや、サクサクとしたパイが並んでいる。どちらも色鮮やかで、ちょっとしたごちそうのようだ。
「おお、モリヒナさんもさすがだな。パイもおいしそうだし、ピクニックにはぴったりだね!」
二人ともそれぞれの料理に自信を持っているようで、俺に食べてほしそうに見つめてくる。正直、どれもおいしそうで、最初にどちらから手をつけるべきか少し迷ってしまう。
「えっと…どっちも美味しそうで、迷うなあ…」
曖昧に誤魔化そうとしたその瞬間、二人の視線がじっと俺に向けられる。
「岩木くん、まずはどっちがいいか決めたほうがいいんじゃない?」と、サラさんが不満げに言う。
「そうよ。せっかく作ってきたんだから、はっきりしてくれた方が嬉しいわ」と、モリヒナさんも微笑みながら少し強めに促す。
二人とも、自分の料理を選んでほしいと期待している様子だ。さて、どうしたものか…。
「よし!じゃあ今日は二人の料理の良さをしっかり味わって、それぞれの魅力をちゃんと伝えることにするよ!」と、俺は思い付いて笑顔で答えた。
「どういうこと?」とサラさんが少し首を傾げる。
「サラさんのフィローナ巻きは、見た目がすごく華やかで、公園にぴったりの爽やかさがあるね。中の焼き肉のスパイスが効いてて、元気が出る感じがする!」
「ふふっ、そうでしょ?ありがとう!」サラさんが嬉しそうに微笑む。
「モリヒナさんのガーラフルーツピクルスとマデュカパイは、ピクニックにぴったりの軽さで、サクサクしてるから何個でも食べられるよ!香草の風味も上品で、後味がさっぱりしてるし」
「そう言ってもらえると作った甲斐があるわ。ありがとう、岩木くん」と、モリヒナさんも満足げに頷く。
二人ともそれぞれの料理の良さを伝えたことで、ようやく納得してくれたようだった。少しずつ食べ進めながら、他愛のない会話が弾む。
それからは、三人でのんびりと食事を楽しみながら、普段はあまり話さないような日常の話題で盛り上がった。サラさんの天然ボケが炸裂したり、モリヒナさんが意外な趣味を明かしたりと、笑いが絶えない時間が続く。
「まさかこうやって気楽に過ごせるなんて、普段の忙しさを忘れそうだよ」と俺がつぶやくと、サラさんがうなずきながら微笑む。
「うん、こうやってただの友達として過ごす時間も大事だよね。仕事から離れてのんびりするのもいいものだね!」
モリヒナさんも微笑みながら、「こうしていると、仕事仲間っていうよりも気の合う友人同士のような気がしてくるわね」と、のんびりした表情で話してくれた。
ゆっくりと食事を終え、三人で片づけを始める。最後にサラさんが一言。
「岩木くん、最初はどうなるかと思ったけど、ちゃんと褒めてくれてありがとう。なんだか嬉しかった!」
「そうね。料理のことをよく見てくれていたみたいで、私も満足だわ。次もまたこうやって楽しめたらいいわね」
二人がそう言ってくれて、俺もほっと一息つく。忙しい日々の中で、こんな風にのんびり過ごせるひとときがあるのもいいものだと感じた。
「うん、またみんなで集まろう!」
三人で笑顔を交わしながら、公園を後にする。こうしてギルドを忘れてのんびり過ごせた一日は、何気なくも心に残る楽しい時間になった。