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久しぶりの休日…!

影の者たちとの事件が一段落し、俺はようやく長めの休暇をもらえることになった。報道局での慌ただしい取材の日々が続いていたせいで、心も体もすっかり疲れ切っていたが、今日はそんなことを忘れてのんびり過ごそうと決めた。


昼までぐっすり眠り、ようやくベッドから体を起こすと、ふと街に出て、ゆっくりと買い物でも楽しみたい気分になった。慌ただしい取材を続ける日々の中で、街を気ままに歩くなんて、いつ以来だろうか。


昼過ぎ、いつもの馴染みの食事処、カレンさんの店へと向かう。局の食堂での食事が多くて味気ない日々だったから、今日は外でゆったり食事を楽しみたかった。


「いらっしゃいませ!」


店に入ると、カレンさんが明るい笑顔で出迎えてくれた。カレンさんはこの店の看板娘で、王国中から取り寄せた食材を使った料理を振る舞ってくれる。いつも元気いっぱいで、気さくな彼女の笑顔にほっと心が和む。


「岩木さん、お久しぶりです!最近ずっと忙しそうでしたね」


「まぁね。影の者たちの取材でしばらくバタバタしててさ。でもようやく休みをもらえたんだ」


「そうだったんですね。お疲れさまです!今日はゆっくりしていってくださいね」


カレンさんが心配そうに声をかけてくれ、俺も少し照れくさくなりながら微笑んだ。


「じゃあ、今日は何か特別な料理でも頼もうかな。カレンさんがオススメってやつで」


「かしこまりました!岩木さんには特別なハーブ料理をご用意しますね」


カレンさんは楽しげに微笑むと、香り高いハーブを使った魚料理と異国風のお茶を用意してくれた。柔らかな魚と豊かな香りが口いっぱいに広がり、局の食堂では味わえない至福のひとときを満喫した。


「カレンさんの料理、やっぱり最高だね。こういう贅沢、久しぶりかも」


「ありがとうございます!岩木さんが喜んでくれると、私も嬉しいです」


カレンさんの優しい言葉に、俺もすっかりリラックスした気分になり、久しぶりに仕事から解放された喜びを感じていた。


店を出て、街の市場や雑貨店をぶらぶらと歩いていると、ふと後ろから声が聞こえた。


「岩木さん、奇遇ね」


振り返ると、そこにはレイラさんが立っていた。彼女は報道局の同僚で、どこかクールで近寄りがたい雰囲気を持つ先輩だ。だが、影の者たちの取材を通じて、少しずつ距離が縮まった気がしていた。


「レイラさん、こんなところで会うなんて。買い物?」


「ええ、たまにはね。それにしても、あなたが街でぶらぶらしているのは珍しいじゃない」


「まぁ、たまにはお土産でも買おうかなと思ってさ。局のみんなにも、少しは感謝を伝えたいし」


そう言うと、レイラさんは俺が持っていたクッキーやお茶葉の袋を見て、微笑んだ。


「意外ね、あなたがそんなことを考えるなんて」


「それ、褒めてるのかな?」


俺が苦笑いすると、レイラさんも小さく笑った。今日は気分がいいのか、彼女も穏やかな顔をしている。


「まぁ、せっかくだし、少し付き合ってくれないか?お土産選びとか、あんまり得意じゃなくてさ」


「仕方ないわね。今日は私もゆっくりするつもりだったし、少しなら付き合ってあげるわ」


そうして、俺とレイラさんは一緒に買い物を楽しむことになった。彼女の助言のおかげで、ミカサさんには上品なお茶葉、バキさんには渋い味の菓子を選ぶことができた。さらに、サラさんには少し洒落たカップをプレゼントすることに。


「サラにはこのデザインが合うんじゃないかしら。ちょっと派手すぎるくらいが好きでしょ、彼女は」


「なるほど、さすがよく知ってるね」


レイラさんのアドバイスに従って選んだおかげで、どれもぴったりな品物ばかりだ。俺も満足のいく買い物ができ、心が軽くなった。


買い物を終えた後、レイラさんに誘われて、彼女がよく通っているという静かな食事処に行くことにした。そこは街の隠れ家のような店で、店内は少し暗くて落ち着いた雰囲気が漂っている。


「こんなお店があったんだな」


「ええ。人が少なくて静かだから、私がよく来るお店なの」


彼女はカウンターの席に座ると、軽い食事とお酒を注文した。普段、局で会う時とは違う、リラックスした雰囲気がなんとなく新鮮だ。杯を重ねるうちに、俺も少しずつ酔いが回り、いつもは口にできない本音が少しずつ出始める。


「レイラさんって、ずっと冷たい感じがして近寄りがたかったんだけど……最近はちょっと距離が縮まった気がするよ」


「そう思ってたの?確かに昔は、あなたを『使えない記者』だと思ってたわね」


俺が軽い冗談を言うと、レイラさんは笑みを浮かべながら酒を口に運ぶ。その表情が、普段よりも柔らかく見えた。


「でも、最近は少し見直したのよ。影の者たちの取材であなたが撮った映像、あれは誰にでもできることじゃない」


「そう言ってもらえると、なんか照れるな」


照れ隠しに酒を飲むと、顔が少し熱くなる。レイラさんのような先輩にそんな風に言われるなんて、これまで考えもしなかったことだった。


「私もね、あの取材で少し考え直したの。あなたはただの気まぐれな記者だと思っていたけれど、少しずつ認められるようになってきた気がするわ」


レイラさんが、いつもより素直な表情で微笑みながら話す姿に、俺も不思議と胸が温かくなるのを感じた。いつもはクールで少し距離があると思っていた彼女が、今はとても身近に感じられる。


「レイラさん、俺もこうして話せるようになって嬉しいよ」


お互いに酔いが回り、言葉も自然と素直になっていく。いつもは少し距離を感じていたレイラさんが、今夜は本音をさらけ出してくれる姿に、何か特別な感情が芽生えるのを感じた。


そして、静かな空気が漂う中、俺の意識もだんだんとぼやけ始めていった――。


目が覚めると、俺は自宅のベッドで横たわっていた。昨日のことをぼんやりと振り返ろうとするが、酒が回りすぎたせいか、どうも記憶がはっきりしない。


「確か……レイラさんと飲んでて……」


だが、それ以上のことはどうしても思い出せない。微かに残るのは、穏やかな空気と温かい感情だけだ。


「まぁ、何があったかはともかく、いい夜だったんだろうな」


胸の奥に残った不思議な温もりを感じながら、俺は深いため息をついて、また新しい気持ちで休暇を満喫することにした。

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