転生者としての役割…?
転生者保護法が可決され、王国は新たな時代へ突入した。
転生者たちは正式に王国の市民権を得た!
王国の未来が変わり、社会のあり方も大きく変化!
しかし、そんな中――岩木に"驚きの情報"が届く。
「岩木、お前……"元の世界に帰れるかもしれない"ぞ」
王国の研究機関が、異世界転生の仕組みを解明し始めたのだった――。
「岩木くん、急ぎの話がある」
王国魔法研究所の博士――リオ博士から、報道局に連絡が入ったのは、法案可決から数日後のことだった。
「王国の研究機関が、異世界転生の仕組みを解明しつつある。そこに、お前が帰れるかもしれない"可能性"が見えてきたんだ」
岩木は、その言葉を聞いて一瞬息をのんだ。
(……帰れる? 俺が?)
博士の研究室へ向かうと、そこには王国の魔法学者たちが集まり、古い書物や研究資料を広げていた。
「異世界転生の仕組み」
「異世界転生や召喚には、いくつかの法則があることがわかってきた」
博士は、岩木に研究の進展を説明した。
・ 転生者は、基本的に"死"を経由して異世界に来ている。
・ しかし、召喚の場合は"死"を経由せず、強制的に異世界へ呼ばれる。
・ 召喚された者は"帰還の可能性"があるが、転生者は原則として戻れない。
「つまり、"召喚された者"は元の世界に戻れる可能性があるが、"転生者"は難しい……」
「……俺は"転生者"だから、帰るのは不可能ってことですか?」
「いや、まだ完全にそうとは言えない」
博士は慎重に続けた。
「過去の文献によれば、特定の条件を満たせば"転生者"でも帰還できる可能性があるとされている」
「……特定の条件?」
「それは――"この世界との強い繋がりを断つこと"」
博士の言葉に、岩木は深く考え込んだ。
「"この世界との強い繋がりを断つ"……?」
「具体的には、"転生者としての役割を完全に終えること"が条件になる」
「役割を終える?」
博士は真剣な表情で言った。
「岩木くん……君がこの世界に来てから何をしてきた?」
「……記者として、この世界の出来事を伝えてきました」
「そうだ。君は"この世界にとって必要な記者"になってしまったんだ」
「だから、もし本当に帰るつもりなら……"この世界に自分はもう必要ない"と思えるくらい、役割を終える必要がある」
岩木は、拳を握りしめた。
(俺は……本当に帰るのか?)
その夜、岩木はモリヒナとサラにこの話を打ち明けた。
「……俺、もしかしたら元の世界に帰れるかもしれない」
二人は驚き、しばらく言葉を失った。
「……帰るの?」
モリヒナの声は、どこか寂しそうだった。
「まだ決めてない。でも、"帰れる可能性がある"と言われたら……考えちまうよな」
サラは腕を組みながら、真剣な目で岩木を見た。
「でもさ、岩木。お前、記者を辞めるのか?」
「……え?」
「お前、記者になってからずっと"この世界の出来事を伝える"ことに必死になってきたじゃん。もし帰ったら、その"仕事"はどうなるんだ?」
「それは……」
モリヒナも静かに言った。
「岩木くんがいなくなったら、誰が"この世界の真実"を伝えるの?」
岩木は二人の言葉を聞きながら、胸の奥が締めつけられるような感覚を覚えた。
「俺の役割は、終わったのか?」
岩木は一人で夜の王都を歩きながら考えた。
・ もし帰るなら、"この世界に自分はもう必要ない"と思うくらいの決断が必要。
・ でも、本当にこの世界は岩木を必要としていないのか?
・ 記者として、まだ伝えたいことはあるのではないか?
(俺は……どうするべきなんだ?)
その答えを見つけるため、岩木は最後の取材をすることを決めた。
(最終的に決めるのは、この取材を終えてからだ)