貴族の妨害…!
転生者保護法を巡る王国の混乱は、ますます激しさを増していた。
・ 貴族派の切り札だった「召喚された異世界人」は、協力を拒否し、去っていった。
・ しかし、貴族派は諦めず、別の手段で法案を阻止しようとしている。
・ 岩木たちは、貴族派の陰謀を暴くため、決定的な証拠を掴むべく動き出す。
王国の未来を決める戦いが、ついに最終局面へ――!
王都の貴族街にあるガラン侯爵の屋敷では、重苦しい空気が漂っていた。
「……召喚された異世界人が我々の提案を拒否した、だと?」
ガラン侯爵は、報告を受けると机を拳で叩いた。
「ならば、次の手を考えねばならん。王国の未来は、このまま"転生者"に乗っ取られるわけにはいかんのだ」
「ですが、国王派の勢力は日に日に増しています。このままでは法案が成立するのも時間の問題かと……」
側近がため息交じりに言うと、ガラン侯爵は険しい表情を浮かべた。
「ならば、我々に不利な報道を"止める"しかない」
「止める……と?」
「そうだ。報道を操ることができれば、民衆の意識を変えることも可能だ。我々が"正義"であり、国王が"暴君"であると印象づければよい」
「しかし、エルドラ・ヴィジョン・テレビ(EVT)をはじめとする報道機関は、国王派の立場でニュースを伝えています。彼らを抑えられるのでしょうか?」
「……抑える方法は、ある」
ガラン侯爵はニヤリと笑い、机の引き出しから一本の書状を取り出した。
「"影"の残党が我々に接触してきた。彼らはまだ、この王国に影響力を持っている」
「つまり、"報道を潰す"ことも可能だということか……」
「そういうことだ。エルドラ・ヴィジョン・テレビを黙らせるのだ」
翌日。
エルドラ・ヴィジョン・テレビ(EVT)の報道フロアは、いつもとは違う緊迫した雰囲気に包まれていた。
岩木がデスクに戻ると、ミカサデスクが険しい表情で書類を見つめていた。
「ミカサデスク、何かありましたか?」
「……報道への圧力が来た」
「圧力?」
ミカサデスクは、手元の書類を岩木に見せる。
そこには、貴族派の名のもとに送られた通達が記されていた。
『転生者保護法に関する報道は、王国の安定を脅かす危険があるため、今後控えるよう要請する』
「要請……ですか?」
「いや、実質的な"脅し"だよ。貴族派は"影"の残党と繋がっている。もし我々がこの警告を無視すれば……」
「……報道局が襲撃される可能性がある、ということですね」
「そういうことだ」
ミカサデスクはため息をつき、椅子に深くもたれかかった。
「だが、俺たちは"報道"を諦めるつもりはない」
「はい、もちろんです」
岩木は強く頷いた。
「……この圧力の裏に、何があるのかを調べる必要がありますね」
「お前のことだ、どうせ"取材に行く"って言うんだろ?」
ミカサデスクがニヤリと笑うと、岩木も苦笑した。
「バレてましたか」
「当たり前だ。だからこそ、気をつけろよ。貴族派は何をしでかすかわからん」
「はい……でも、こうなったら徹底的にやるしかないですね」
岩木はカメラを手に取り、立ち上がった。
岩木とバキは、貴族派の動きを探るため、貴族街へと向かった。
「……情報屋によると、貴族派は"影"の残党と接触し、何らかの計画を進めているらしい」
「"影"か……以前俺が遭遇した連中ですね」
「そうだ。そして、彼らが今動き出している以上、王国にとっても危険な兆候だ」
岩木たちは貴族派の屋敷を探りながら、慎重に動いていた。
そして、その時――。
屋敷の奥で、密談の声が聞こえてきた。
「報道局への圧力は成功したか?」
「ああ。しかし、奴らがどこまで従うかはわからん」
「ならば、強硬手段に出るしかない」
「……強硬手段?」
「エルドラ・ヴィジョン・テレビを襲撃し、"転生者保護法"に関する報道を完全に止めるのだ」
岩木とバキは顔を見合わせた。
(やっぱり……報道局が狙われている!)
バキが小さく息をつき、岩木に囁く。
「……証拠を押さえろ」
岩木は素早くカメラを構え、密談の様子を撮影した。
(これがあれば、貴族派の陰謀を暴ける……!)
しかし、撮影が終わったその瞬間、背後から声が響いた。
「……誰だ?」
追われる岩木――報道局へ急げ!
「チッ、バレたか……!」
岩木とバキはすぐにその場を離れ、貴族街の路地を駆け抜けた。
「カメラは無事か!?」
「撮れてます! でも、奴らが追ってきます!」
後方から、貴族派の私兵たちが迫ってくる。
バキが剣を抜き、追っ手を牽制しながら走る。
「お前はとにかく報道局に戻れ! 俺が時間を稼ぐ!」
「バキさん……!」
「今は俺の言うことを聞け! その映像があれば、貴族派の陰謀を暴けるんだ!」
岩木は躊躇したが、すぐに頷き、必死に報道局へと走った。
報道局に戻った岩木は、すぐに映像を確認し、編集チームと共にニュースにまとめた。
「……これで、貴族派が"影"と手を組んでいた証拠は十分だ」
「今夜のニュースで流す」
ミカサデスクがそう決断すると、岩木は深く息をついた。
「これで、王国の未来が決まるかもしれませんね」
「いや……これが終わりじゃない。これは"最後の戦い"の始まりだ」