転生者の集会…?
エルドラ・ヴィジョン・テレビ(EVT)が報じた「転生者管理の真実」は、王国中に衝撃を与えた。
・ 王国はかつて、転生者を選別し、不要な者の記憶を消していた。
・ その実験施設こそが、この地下道の奥にあった「転生者収容所」だった。
・ 記憶を消された転生者が今も王国の中で普通に暮らしている可能性がある。
「……よし、これで一通り報道は終わったな」
報道局の編集室で、岩木はようやく椅子に深く腰掛けた。
だが――この報道は、まだ終わりではなかった。
報道が流れた翌朝、王国の街中ではこのニュースが話題になっていた。
王都の広場では、記者たちが市民の声を拾うために街頭インタビューを行っていた。
「王国がそんなことをしていたなんて、正直信じられない……」と、40代の商人の男が驚いた様子で語る。
一方で、「でも、転生者が危険な存在だとしたら、管理するのも仕方ないんじゃ?」と30代の職人の男は疑問を投げかける。
さらに、「記憶を消された人が今もいるかもしれないって話が一番怖い……」と、不安げに呟く20代の女性もいた。
賛否両論の声が飛び交う中、王国の方針に対する疑問も浮かび上がっていた。
王国の対応も早かった。
カイバ三世は、緊急会見を開き、この報道に対する王国の立場を表明した。
王宮の会見室。
国王の隣には、王国の高官たちが並び、緊張感が漂っていた。
「まず、王国として今回の報道の内容を重く受け止めています」
カイバ三世は、真剣な表情で語り始めた。
「転生者管理の政策が、先代国王の時代に行われていたことは事実です。しかし、私の即位以降、転生者に対する強制的な管理は行われていません」
・ 現在は「選別政策」は行われていないことを強調。
・ しかし、過去に「記憶消去」が行われていたことは認める。
・ 転生者の人権を保護するため、新たな対策を講じる方針を発表。
「今後、王国は転生者の権利をより明確にし、必要であれば過去に不当な扱いを受けた者への補償も検討する」
この発言により、王国の方針が大きく転換する可能性が出てきた。
王国の中で暮らす転生者たちは、この報道をどう受け止めたのか――。
軍事顧問のコマツは、岩木の取材に対し、眉をひそめながらこう答えた。
「俺は転生者として王国に仕えているが、これまで特に不満はなかった」
「だが、"記憶を消された者がいる"と聞くと、さすがに無視はできないな……」
辺境領主補佐のヤマダは、岩木の質問にしばらく考え込んだ後、少し硬い表情で言った。
「俺自身、転生してからの記憶が一部曖昧だった」
「この報道を聞いて、もしかすると俺も"何かを忘れさせられた"のかもしれないと思った……」
王宮侍女のなつみは、まだ信じられないといった様子で岩木を見つめながら、戸惑いがちに話した。
「私は転生したことを自覚していませんでした」
「でも、最近……夢で見る"知らないはずの景色"が、もしかしたら"前の世界の記憶"だったのかもしれない、と思うんです」
「私が何者だったのか……もう一度考えてみたい」
報道の翌日、EVTの会議室では「報道の影響」について話し合う反省会が行われた。
ミカサデスクが、腕を組みながら開口する。
「まず、今回の報道は王国全体に大きな影響を与えたわ」
「国民の間では賛否が分かれているし、王国の対応も早かった」
「だけど、このまま転生者管理の問題が"過去の話"として片付けられてしまう可能性もある」
サラが真剣な表情で発言する。
「転生者自身がもっと発言できる場が必要だと思います」
「今回の報道で"何が問題だったのか"を転生者自身が語る機会を作るべきじゃ?」
バキは険しい表情を崩さずに言う。
「王国が"改革"を進めると言っているが、本当にそれを実行するのかを監視する必要がある」
「もし"口だけ"の対応で終わるなら、俺たちはそれを追及しなければならない」
岩木は、二人の意見を聞きながら、静かに考え込んだ。
(……確かに、報道しただけじゃ終わらない)
「……確かに、これからどう"変わる"のかを見届けるのも、記者の役割だと思います」
そんな中、報道局に一通の知らせが入る。
ミカサデスクが資料を確認しながら告げた。
「転生者たちが、王国に対して意見を述べる場を設けたいと考えている」
「転生者の集会……?」と岩木が驚いた表情を浮かべる。
「そう。数名の転生者が主導して、王国と正式に対話する場を求めているそうよ」
「これは……新たな動きになりそうですね」