真実を報道…!
王国の地下道で明らかになった、転生者管理の闇。
・王国は「有益な転生者」だけを選別し、不要な転生者を記憶消去または処分していた。
・その実験施設こそが、この地下道の奥にあった「転生者収容所」だった。
・かつて転生者の権利を訴えたナルセは、王国にとって「都合の悪い存在」とされ、地下施設に閉じ込められていた。
そして――岩木は、記者としてこの事実を公表するかどうかの決断を迫られていた。
「本当に……このことを報道するのか?」
王国の地下道を出た後、シラユ隊長が険しい表情で岩木を見つめた。
「……もちろんです」
岩木の返答は迷いのないものだった。
「ナルセさんの話を聞いた今、俺たちは"知りすぎてしまった"んです。ここで何も報道しなければ、俺たちも"黙認する側"になってしまう」
「……だが、報道すればどうなる?」
「王国がこの事実をどう受け止めるのかは分かりません。でも、少なくとも"この事実を知る権利"は国民にある」
シラユ隊長は深く息を吐いた。
「……あまりにも大きな話だな」
「でも、やるしかない」
そう言い切る岩木の目には、かつてのナマケモノ記者の面影はなかった。
「俺たちは報道局に戻ります。隊長は?」
「俺は……一度、王宮に報告する。カイバ三世陛下がどう判断するかも重要だからな」
「分かりました」
こうして、岩木とナルセはエルドラ・ヴィジョン・テレビ(EVT)へと戻ることになった。
「……は?」
EVT報道局に戻り、報道デスクのミカサに地下道の調査結果を報告すると、彼女は一瞬言葉を失った。
「転生者の管理が、記憶消去を伴うものだった……?」
「はい。ナルセさんがその証拠です」
岩木は、地下道で撮影した映像とナルセの証言を提出する。
「これ……大スクープじゃないの?」
ギルド班のサラも目を丸くしていた。
「というか、こんなの放送したら、王国そのものがひっくり返るんじゃないか?」
軍事班のマキが腕を組みながら呟く。
「……だからこそ、慎重に報道する必要がある」
バキが険しい顔で言った。
「この報道が、王国全体にどんな影響を及ぼすのかを考えないといけない」
「……でも、これは放送しないわけにはいかない」
岩木は強く言った。
「もし、俺たちがこの真実を伝えなければ、転生者管理の闇は"なかったこと"にされてしまう」
「……ふぅん」
ミカサデスクはしばらく沈黙し、やがて決断を下した。
「よし、やるわよ」
「……!」
「でも、"王国を敵に回す報道"にはしない。"王国の過去の過ちを検証し、未来をどうするか"という視点で報道するわ」
「分かりました」
報道の方針が決まり、「転生者管理の真実」特集として番組が組まれることになった。
夜のニュース特集で報道。メインキャスターはモリヒナ。
第一部:「転生者の管理制度の歴史」
第二部:「地下道で見つかった施設の映像」
第三部:「記憶を消された転生者と、今も続く影響」
第四部:「王国の対応と今後の課題」
放送当日――王国が揺れる
夜19時、エルドラ・ヴィジョン・テレビ(EVT)のニュース番組「アルダNEWS」が始まった。
番組冒頭、モリヒナが落ち着いた口調で語る。
「本日、私たちは皆様に"転生者管理"の真相についてお伝えします。」
「この報道によって、王国の過去の政策がどのように行われていたのかを検証し、未来のあり方を考えるきっかけになればと思います。」
第一部:「転生者管理の歴史」
過去の王国の政策を振り返りながら、先代国王が転生者を「王国の秩序を乱す可能性のある存在」として見ていたことが説明された。
第二部:「地下道で見つかった施設」
岩木が撮影した王国地下道の映像が流される。
そこには、牢獄のような部屋や、壁に残された転生者のメッセージが映っていた。
「ここでは"記憶消去の実験"が行われていた可能性があります。」
「実際に、私たちはここで"10年以上行方不明だった転生者"と出会いました。」
映像が切り替わり、ナルセの証言が流れる。
「俺たちは"管理"されていたんじゃない。"選別"されていたんだ。」
第三部:「記憶を消された転生者」
次に、なつみのケースが紹介された。
彼女が「転生したことを自覚していなかった」こと、夢の中で異世界の記憶の断片を見ていたこと――。
「もしかすると、彼女も"記憶を消された転生者"の一人かもしれません。」
第四部:「王国の対応と今後の課題」
ここで、王宮からの声明が発表された。
「王国は過去に、転生者の管理を厳しく行っていたことを認めます。しかし、現在の国王カイバ三世のもとでは、その方針は見直されております。」
「今後、転生者の権利をより明確にし、王国として責任を持って対応していく方針です。」
放送終了後、EVTには賛否両論の声が寄せられた。
「ようやく真実が明らかになった! これは王国の責任だ!」
「過去のことを蒸し返すな。転生者管理は必要だったのでは?」
「王国はこの問題にもっと向き合うべきだ!」
王国民の間でも、大きな議論が巻き起こった。
放送後の岩木
「……終わった」
報道局のソファに腰を下ろし、岩木は長いため息をついた。
「岩木、よくやったな」
バキが隣に座り、肩を軽く叩く。
「お前の報道で、確実に世の中が動くぞ」
「……そうだといいですけどね」
(でも、これで終わりじゃない)
("転生者管理"の問題は、まだ続いている)