生きた証言…!
王国の地下道――かつての避難路にして、"消された転生者たち"が監禁されていた場所。
そこで岩木は、かつての先輩記者・ナルセと再会を果たした。
・ 王国は"管理できない転生者"を地下施設に閉じ込め、記憶を消す実験を行っていた。
・ ナルセはその事実を調査し、報道しようとしたが、王国によって"反逆者"として追われた。
・ かつて逃げ延びたものの、再び捕らえられ、地下施設に閉じ込められていた。
「岩木、お前……本当に記者のままだったんだな」
鉄鎖を外し、ようやく自由を得たナルセは、ゆっくりと立ち上がる。
「ええ……まあ、サボりながらですけど」
岩木が苦笑すると、ナルセはかすかに笑った。
「相変わらずだな……だが、こうしてまた"真実を追うお前"と再会できるとはな」
「……さて、そろそろ話してもらえますか?」
シラユ隊長が腕を組み、鋭い視線を向ける。
「王国が転生者を管理している理由と、記憶を消す実験について」
ナルセはゆっくりと頷いた。
「……そうだな。お前たちがここまで辿り着いたなら、もう知るべき時だろう」
ナルセは深く息をつき、語り始めた。
「まず、"転生者管理"が始まったのは、先代国王の時代だ」
「カイバ三世の父……」
「そうだ。彼は、"転生者は王国にとって脅威になり得る"と考えていた」
「確かに、それは今の国王からも聞きました」
ナルセは頷き、続ける。
「転生者は、異世界の知識や技術を持ち、この世界の常識にとらわれない。時には、王国の体制を揺るがしかねない存在だった」
「つまり、"転生者をコントロールする必要があった"と」
「その通り。そして、先代国王は"転生者を選別する"ことを決めた」
「王国が転生者を選別する基準は、大きく分けて3つだった」
1. 王国にとって"有益"な転生者は、軍・行政・研究機関へ誘導する。
2. 王国の支配体制を揺るがす可能性がある者は、監視対象とする。
3. "制御不能"と判断された者は、記憶を消去するか、処分する。
「処分……?」
岩木は喉を鳴らした。
「まさか……」
「ああ。かつて、"王国の転生者管理に異を唱えた者たち"は、消された」
「それが、あなたが追っていた"転生者の権利を訴えた集団"ですか?」
「そうだ。彼らは、"転生者は王国に管理されるべきではない"と主張し、自由を求めた。しかし――」
ナルセの表情が暗くなる。
「王国は彼らを"反乱分子"と見なし、弾圧した。そして、生き残った者は"この地下施設"に収容された」
「そして、ここでは"ある実験"が行われていた」
「……記憶の消去?」
「その通り」
ナルセは壁に残された古い文字を指さした。
「俺たちは、異世界から来た――だが、ここは牢獄だった」
「ここに閉じ込められた転生者たちは、"転生した記憶"を消されていったんだ」
「記憶を……?」
「王国は"転生者を無害化"するため、"転生の記憶を消す術"を探していた」
岩木は思い出した。
なつみ――転生したことを自覚していなかった転生者。
「……もしかして、なつみさんも?」
「ああ。おそらく、"ここ"で記憶を消された一人だ」
「そんな……!」
(王国は、転生者を"管理"しているのではなく……"制御"しようとしていたのか?)
「では、今も王国は転生者を監視し、記憶を消しているんですか?」
「今の国王になってからは、転生者への管理は緩和された」
「……じゃあ、なぜあなたはここに?」
「俺は、"転生者管理の証拠"を暴こうとしたからだ」
ナルセは苦笑しながら続ける。
「今の王国は、"過去のやり方"を完全には否定していない。もしこの真実が表に出れば、王国の信用は大きく揺らぐ」
「だから、あなたは"消される"側に回った……」
「そういうことだ」
(つまり、今も"転生者管理の名残"は続いている?)
岩木は、ナルセの証言を整理した。
・ 王国の転生者管理は、先代国王によって始まった。
・ 転生者は「選別」され、有益な者だけが生き残る仕組みだった。
・ 記憶を消された転生者も存在し、なつみはその一例。
・ 現在の王国は「過去の管理方法」を否定していない。
(この事実を公表すれば、王国はどう反応する?)
「……ナルセさん、このことを報道してもいいですか?」
「……フッ」
ナルセは少し笑い、岩木の肩を軽く叩いた。
「お前も、ようやく"記者"になったな」
「昔、ナルセさんが教えてくれたことです」
「真実を追え。だが、それをどう伝えるかが記者の価値を決める」
「……だったら、お前のやり方で伝えろ」
「はい……!」